『MY HEART WILL GO ON』
 Celine Dion

 
1997年(平成9年)

私はきっと永遠に
彼のことを想って、
彼が幸せであることを
願えます。
  (月子)

You're here, there's nothing I fear,
And I know that my heart will go on

ニュージーランドの高校に留学して、今年で3年。
来年は、日本の大学に行きます。
はじめはまるでわからなかった英語も、
前から好きだったこの歌の意味がわかる程度には
上手くなりました。

ずっとひどいホームシックで、
家に帰りたくてたまらなかったのに、
今ではもう少しここにいたいと願っている
自分がいます。

私はこれまで恋愛事に興味が薄く、
くっついては別れを繰り返す同世代の子達を、
少し馬鹿にしていました。

高校生の恋愛なんて、
遊びみたいなものだと思っていたんです。

そんな私は、好きな人が出来ても
誰にも何も言わずに自分の中で消化してしまうことに、
慣れきっていました。
男の子からも特にモテない、自分でも行動しない。
恋愛は完全に、私とは無関係の何かでした。
昨年の頭に会ってから、
薄い恋心を抱いていた同級生の彼が突然、
私を学校主催のダンスパーティーの
相手に誘ってくれるまで。

それはもう、焦った。

だってきみ、私を好きなそぶりなんて、
1年以上ちっとも見せなかったじゃない。

クラスでとなりに座ることがあったのも、
日本語の勉強のためでしょう?

それに最近は、すれ違っても
挨拶するかしないかくらいだったのに。

そんな思いが脳内を駆け巡ったけれど、
ついて出た言葉は“OK”。
その日は他のことがなにも手につかず、
一体何が起こっているのか考えるのに必死でした。

後日、逃げるようにしながら
メールアドレスを書いた紙を渡して。
パーティーまでの2ヶ月間、
少しずつ彼を知っていきました。

といっても、全部メール。
面と向かうと、一言も話せなくなるから。

それから、人生で一番の勇気をだして
映画に誘いました。
人生ではじめて、男の子と二人で外出。
お互い、ほとんど無言。
これはデートなの?
それとも別の何か?
悶々と考えていました。

そんなこんなでやってきたパーティー。
結局私達は照れてしまって一度も踊らなかったけれど、
周囲にひやかされながらも、
彼はずっと私といてくれました。

別れるときに、一度だけハグをして。
結局その場では、何も言えなかった。
その2日後から、私は日本に
一時帰国をすることになっていまし た。

次の日に、私は彼にメールを書きました。
「昨日はありがとう、最高の一日だった」
それだけ書いて、送るつもりでした。

でも、パーティーが終わって、
私たちのこの曖昧な関係は終わるのかもしれない、
そう思うとひどく悲しくなって、
私はやけになって一文を付け足しました。
「それから、答えたくなかったら良いんだけど‥‥
 私たちって結局、何?」

それから数週間後に私が日本から戻ってきて、
正式にお付き合いをはじめました。

たぶん今が、人生で一番幸せなときです。
まだ、顔を合わせると照れてしまうけれど、
少しずつ、話せるようにもなって。
誰かをきちんと好きになるということが
どういうことなのか、教えてくれたのは彼でした。

私が完全帰国してしまえば、
その後いつ会えるのかもわからない。
彼に他の好きな人ができてしまうかもしれない。
十代の恋愛って、もしかしたら
そういうものなのかもしれない。

それでも、未来の見えない恋だけれども、
私はちゃんと本気で、彼もちゃんと本気で。
遊びなんかじゃないと、自信を持って言えます。

たとえば、いつか私たちの道が
完全に違ってしまうとしても、
私はきっと永遠に彼のことを想っていて、
彼が幸せであることを、願える。

だからきっと、私たちは大丈夫だろうと思います。

(月子)

10代で、高校生で、
それまでの自分をふりかえりながら、
大きな恋を前にした気持ちを
これほどまでの文章にするなんてすごいと思います。
投稿してくださって、ありがとうございます。

別れようとも、なにがあろうとも、
ずっと思っていて幸せを願える。
MY HEART WILL GO ONを
自分で確信できていることは、
おっしゃるとおり、いちばんの強さです。
自分もそうありたいと思います。

そんで、あらためて、
セリーヌ・ディオンはすごい!
拍手喝采で歌を聴き終えたわたくしでございます。

ダンスパーティーって、
映画や歌のエピソードではよく聞きますが、
ほんとうにあるんですね。
日本でもやればいいのに。もっともっと。

外国ということをのぞけば、
それは(とても良い意味で)ありふれた恋のお話。
こんなにしっかりと、読みやすく、
素直に届けてくださったことに感謝です。

いいなぁ‥‥すばらしいと思いました。
(月子)さんの、
巡らせた考えやその行動の筋道に。

「高校生がつきあうって、何?」
「何のために?」
「どういう意味やゴールがあるんだろう?」

そういう疑問にしっかりと向き合って、
つかまえた結果が‥‥

 未来の見えない恋だけれども、
 私はちゃんと本気で、彼もちゃんと本気で。
 遊びなんかじゃないと、自信を持って言えます。

ブラボーです。
「幸せです」と言える強さ、すばらしい。
いいぞいいぞ! と知り合いならば
肩を叩いて言いたい気分。
ぼくからすればかなり年下の女性だと思いますが、
尊敬さえも感じます。
いやぁ‥‥ねぇ!
胸を張って生きている人って魅力的だなぁ。

スカッとする投稿、サンキューです!

ニュージーランドの高校生の恋愛事情が
どんな感じなのかまったく知らなくて。
だって外国、それも英語圏って、
アメリカのドラマの影響でしょうか
「すごく進んでる」イメージがあって!

でも。

映画に行っても「ほとんど無言」のふたり。
肝心のパーティでも、
「一度も踊らなかった」ふたり。
でもでも、
「周囲にひやかされながらも」
ずっと(月子)さんといてくれた、彼。

ぽわんとあたたかい気持ちになりました。
こんなふたりだったら、
(月子)さんが日本の大学に通うために
帰国してしまったあとも、
大丈夫なんだと思う!

ながい人生のなかの、
短い4年間(かな?)の、
ふたりのそれぞれの大学生活。
ほかのひとには経験できないような
すばらしいものになりますように!

十代の方からの現在進行形の恋の投稿。
世間一般のコンテンツなら
たくさん寄せられるのかもしれませんが、
この「恋歌くちずさみ委員会」では
なかなかめずらしいのです。

若い頃の進行中の恋は、
ひどく舞い上がっていたり、
必要以上に不安だったりで、
文字にすると安定感を欠くものですが、
山下も言っているように
この投稿には足腰があるなぁ。

しかも、挙げた恋歌が
セリーヌ・ディオン!
マイのハートがゴーオンするよ、という
これまた足腰のあるものです。
ぐるっと話が回りますけれど、
ニュージーランドに留学しているという
その決断もまた、
ふわふわとはできないものですよね。

なんというか、自分の十代を顧みると
すごいなぁと尊敬してしまいます。

ただし、最後の
「だからきっと、私たちは
 大丈夫だろうと思います。」
という一文には、強さの裏側に、
十代特有の不安な気持ちも、
ちょっと、のぞいているような気がします。

その恋がよくありますように。
みなさまからの投稿、
お待ちしています。

2012-12-15-SAT

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