『夏の終わり』
 森山直太朗

 
2003年(平成15年)

彼が息切れしたら
終ってしまうんだな、
と思った。
(ざわわ ざわわ ざわわー)

夏の終わりには
ただ貴方に会いたくなるの

曲がちょっと新しくて申し訳ないのですが、
私の年齢は恋歌くちずさみ世代ど真ん中ですので
許してくださいませ。

今から9年前、この曲が流行ったころ、
私は2人の小学生を抱えるシングルマザーで、
そして付き合って1年の恋人がいました。

「多感な子供に、
 母親に恋人がいるなんて
 とてもじゃないけど言えない。
 結婚とか、少なくとも10年は考えられないよ」
と可愛くないことを言ってのけた私に
「いいんでない、それで」
と答えてくれる人でした。

いつも彼のほうが
時間に追われている私に合わせてくれて、
片道1時間の距離を、
しかも短い時間しか会えないのに、
来てくれていました。

夏休み、子供が
元旦那の家に泊りがけで行くことになり、
初めて私のほうが彼の家に行きました。

すっごく楽しくて、
時間が飛ぶように過ぎて、
そして帰り道。

緑がかぶさるような山道を、
1人車を運転しながら、
「いつもここを通ってきてくれているんだ」
と思いました。
そしてかなりの距離を来てくれていたのだとも、
この時初めて気がつきました。
ふと、この関係は彼が息切れしたら
終ってしまうんだな、と
実感したのです。

「でもまぁーその時は縋りつかず、
 笑って納得せんとなぁー。
 結婚をしてくれると言う人ができたら
 祝福のひとつもするべきかぁ」
などとつらつら考えているとき、
カーラジオからこの曲が
流れ始めました。
すごく好きな曲だったので、
しみじみ聞き入っていると
ちょうどサビのところでトンネルが!
電波が途絶え、聞こえなくなり、
「んもぉー」
とぼやきつつ、自分が声を張り上げました。

なぁつのおわりぃにはぁー
ただあなたにあいたくなぁるぅのぉー

ところが、自分でも思ってもいなかったのに、
突然涙があふれ出てきたのです。
「えっ、うそ、どうして」
と言いながら、それでも涙は止まらず、
結局泣き通しで家までたどり着きました。

あの時どうしてあれほど
泣けてしょうがなかったのか
子供達が大学生になった今でもよく分かりません。

ただ、今のところ、
彼は息切れしないでいてくれています。

(ざわわ ざわわ ざわわー)

いやぁ、わたしもこの話を読んで
なぜか泣けてしょうがないのでした。
悲しい話ではないし、
すごく感動するタイプの話でもないのですが、
この投稿のなかに、
恋の大切なところが
たくさん入っているようで‥‥特に、
「すっごく楽しくて、
 時間が飛ぶように過ぎて、
 そして帰り道」
のあと、
「いつもここを通ってきてくれているんだ」
と帰るところは、いいなぁ、と思います。

息切れしない彼氏は
いまと、ずっと先と、両方をちゃんと見られる
すばらしい人なんですね。

はぁぁぁ、いいものを読ませていただきました。
ありがとうございました。

うん。
ぼくもこれ、読んで泣きましたよ。
しみじみと。

泣ける投稿って、たくさん来たけど、
こういう泣き方ははじめてかなぁ。
別れとか、終わりとかではなく、
それが「刹那」だと痛感する一瞬が
見事に表されていて、泣けるんですよね。

別の話になりますが、
車のなかって、いいですよね。
好きな人とふたりでドライブしていると
いつもとちょっと違ったモードで
たのしく、素直に話せたりしませんか。

たぶん、ふたりがふたりきりなのに、
互いに見つめ合うことなく
横に座ったまま、
それでも同じ方向を見つめ
同じ場所へ向かっていくという状況が
ふだん、互いが少し無理をして
ふんばっている何かを
ふっと軽くするのではないかと
思うのだけれど。

最後までおぼえておきたいな、
というか、
きっと忘れることはないだろうな、
という風景や空気、においってありますよね。
じょうずな例がみつからないけど、
それがふたりだけの風景だったりすると、なおさら。
(ざわわ ざわわ ざわわー)さんの場合、
それはたぶん「緑がかぶさるような山道の景色」。
想像するだけですけれど、
きっと、とてもきれいな風景なんだろうな。

その景色と、なぜか想像してしまった悲しい未来。
そしてやけに物分かりのよい(はずの)自分。
止まるカーラジオ、続くトンネル。
そしていちばんのトリガーが、歌声。

そういうときの涙って
「待ってました!」といわんばかりに出ますよね。
いわゆる「感動のひとすじの涙」ではなく、
どうしたって言葉にならない思いを
それで昇華させるかのように出る涙。
僕らの体や心が、
そういうふうにできているんでしょうね。

彼がそのとき何を思ったか、
じっさいにどう行動に出たかがわからないままで、
最後の2行。
はぁ〜〜〜〜〜〜っ!(ため息)
よかったよかった!

スガノさんがね、会社の机で、
おろろんおろろん泣いているから、
いったいどうしたのかと思ったんです。

なるほど、これを読んで‥‥。
ほんとだ。
これは‥‥。

なんでだろう、
なんでこんなに目頭があつくなるんだろう。

一所懸命さを感じたからなのかなぁ。
そうなのかもしれない。
ぼくはそこにこころを揺さぶられたのかもしれない。
きっと、いろいろなことを
無意識に抑えながらの恋愛なのでしょう。
抑えながら、一所懸命。
ふたりのお子さんを育てて。
育てながら、まっすぐな恋をして。
彼のやさしさに、思いやりに、
「距離」という実際的なもので気がついて。
声を張り上げて歌を歌って。
その彼は、いまもしんぼう強くやさしくて。

‥‥うわぁ、なんだこれ?
書いてて涙が出てきたよ?
自分で説明しようとしていたことにおさまらない、
もっとすごいものに包まれた感覚です。

このコンテンツは、ほんとにすごい。
みなさんの思い出もお待ちしています。
まだまだ、まだまだあるんだろうなぁ‥‥。

2012-11-17-SAT

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