『Yes-No』
 オフコース

 
1980年(昭和55年)

君を抱いていいの
好きになってもいいの
       (けい)

君を抱いていいの
好きになってもいいの

昨日恋が始まりました。

梅雨の頃からよくご飯に誘われていた人から告白され、
付き合うことになりました。
以来、この歌のこのフレーズが
ずっと頭のなかをぐるぐるリフレインしてます。

心を預けちゃって大丈夫なのかな。
久しぶりの恋なので、
傷つかないかすっかり臆病になってる自分に気づきます。

「好きなんです。付き合ってほしい」
と告白されたとき、彼の真剣な目に落ちました。

先輩、好きになって本当にいいんですか?
私結構めんどくさいやつですよ。

いま心のなかで彼に呼びかけるだけで、
すでに泣きそうです。
始まっちゃったなあ。走り出すしかないか。

(けい)

「いま心のなかで彼に呼びかけるだけで、
 すでに泣きそうです。」

恋って、そういうものだよなあ‥‥。
ほんとに、忘れかけてます。
忘れちゃってる。
けど、こうして、(けい)さんのおたよりで、
そうだったよな、と、思い出すことができました。
そうそう、臆病だった自分が
恋をすると、さらけだされちゃう。
強気にもなったり、うんと弱気になったり、
いろんな感情がおしよせてくる。
ああ、忘れちゃってた。

告白されたときの彼の目。
きっと一生のたからものですね!

この投稿からは、湯気がでています。
ほっかほかの湯気が。
もうもうとたちのぼる白い水蒸気の向こうに、
不安といっしょに舞い上がるようなうれしさが見えます。
いいなぁ、この感じ。
懐かしくて甘ずっぱい思い出でおなじみの
「恋歌くちずさみ委員会」ですが、
うまれたてほやほやの恋の話も、やっぱりいいなぁ。
時を経て、熟成が加わり、
やがてはこれが甘ずっぱくなっていくわけで。
武井さんの言うように、
忘れちゃってた感覚を思い出させてもらった気がします。

ところでそうだ、「YES-NO」。
これは、CD「恋歌くちずさみ委員会」に
収録されているナンバー。
そのCDは、本といっしょに本日発売です。

「始まっちゃったなあ」ですよね。
恋って。
「あ〜あ」ですよね。
「やれやれ」ですよね。
恋って。

恋はいつでも受動態。
落ちざるをえなくて
落ちるものなんですよね。
だからこそ、恋と縁がないときに、
恋に落ちようとしても
本質的には、意味がない。

走り出すしかないか、と
うれしくあきらめつつ、
すでに両足はその人に向かって
地面を踏みしめだしている。
ひとまずは、恋のはじまり特有の、
なにもかもが独特の輝きと
血の沸くような高鳴りをもたらす
例の魔法の期間を、
どうぞおたのしみあれ。

それにしても『Yes-No 』の歌詞ってば、
追えば逃げる素敵な不思議ですよね。

「今、なんて言ったの?」と。うん。
「ほかのこと考えて、
 きみのことぼんやり見てた」と。
はい、なるほど。
「好きな人はいるの?
 答えたくないなら、
 聞こえないふりをすればいい」と。
突然距離を詰められた感はあるけど、
好きな人がいるかどうか聞かれたわけですよね。
で、つぎの瞬間どうなるかというと、
「君を抱いていいの?」ですよ!?
「好きになってもいいの?」ですよ!?
どういうこっちゃねん、と。
どっちがどっちにどういう気持ちやねん、と。

と、このように、
ただ歌詞をふつうになぞるだけで
上質のミステリーへ導かれるような
素敵な迷宮へ足を踏み入れてしまうかのような
名曲『Yes-No』。
この「恋歌くちずさみ委員会」に
2回目の登場です。

ヤダ、もう11月14日なんですね。
本の『恋歌、くちずさみながら。』と
CDの『恋歌くちずさみ委員会』の発売日。
どちらも名作です。
ご希望の方、ぜひお申し込みを。
(本とCD、セットで買うと先着限定で
 「木綿のハンカチーフ」がついてきます)

でもねー、こういう名作投稿は
いつまでも尽きない。
なぜ、尽きないのか。
委員のあとがきで、それについて私は
本の『恋歌、くちずさみながら。』に書きました。
まぁそれは、置いといて。

この連載がはじまる直前、みんなで話したのは
「恋に落ちたとき、頭に
 どんな鐘の音が響くのか」
について、でした。
ついには「音」を募集しよう!
ということにもなったのですが、
そのアイデアはボツになりました。

恋に落ちたときの音‥‥委員のみんなは
なんて言ってたかな?
覚えていないのですが、
自分のことでいえば
「ザーーーーーン」という感じでした。
つまり、あんまりハッピーな音ではありません。
(その後、おつきあいがはじまったりすれば
 毎日がバラ色だったんですけどもね)

覚悟、というか、
いまのぬくぬくとした状況から
一転した毎日がやってくるんだ、という
畏れのようなものが
断崖絶壁で耳にする波音のように聞こえたのだと
自分では思っています。
だって、目の前にいるのは
まだまだ、未知な人なんですものね〜。

走りだすしかないか。
グッドラック!
答えは自分の行動だけが知っているぜ。

てなわけで。また土曜に。

2012-11-14-WED

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