第1回 VAN99ホール
小林
すごくいい職場ですね。
糸井
ここ、はじめてだっけ?
小林
そう。ずっと前に来たときは、
東麻布(鼠穴)だったんだけど、
いまスタッフの人と話してたら、
東麻布時代を知らない人だった(笑)。
糸井
そう、もう、知らない人が多いよ。
小林
そうなんだね。
そのあと、「明るいビル」に行って。
糸井
そう、魚籃坂の「明るいビル」に行って、
そのあとが表参道なんだ。
小林
ここ?
糸井
ここの前に骨董通りにいたことがある。
小林
へぇ。
糸井
骨董通りのつぎが、ここ。
小林
じゃあ、もう、
引っ越すたびに大きくなってるわけですね。
糸井
引っ越すたびに小さくなったら困るだろう。
一同
(笑)
糸井
夜逃げだろう、それは(笑)。
小林
大きくなればいいってもんでもないけどね。
でも、すごいなぁ。
入ってきて、大きいんでびっくりしましたよ。
糸井
この建物ってね、
つかこうへいさんがデビューしたところなんだよ。
小林
どういうこと?
糸井
VAN356ビルって呼ばれてたところなんだよ。
で、1階にホールがあってね。
小林
VAN99ホール?
糸井
VAN99ホール、VAN99ホール。
小林
はいはいはい。
糸井
それは、ここなんだよ、
VAN
(アイビーブームを巻き起こした
 1960年代を代表する
 日本のファッションブランド)
があったの、ここに。
小林
あ、そうなんだ。
糸井
だから、ぼくは『熱海殺人事件』を
ここに観に来た覚えがあるんだよ。
小林
へぇ。あ、そう、
VAN99ホールって、ここのことなんですか。
糸井
そうなんだよ。
たしか、99人入ればいいって考えて、
値段も99円だったんだよね。
小林
ふぅん。
糸井
それもすごいコンセプトだよね。
状況劇場
(1960年代に唐十郎さんが旗揚げした劇団。
 小林薫さんは1971年から9年間在籍)
では、もっと入ったでしょ?
小林
状況劇場は、もう、テントからはみ出すくらい
お客さんが入ってましたから。
3000円くらいとって、不忍池とか、
1000人超えたこともあります。
糸井
それ考えるとさ、VAN99ホールって、
その小ささがすごいよね。
たぶん、VANの人の考えだと思うんだけど。
小林
いいスペースなんですよね、
100人とか、200人くらいって。
いま、下北辺りでそういうのありますけど、
駅前劇場とか、スズナリとか。
糸井
昔もいまも、ちょうどいいスペースなんだね。
そのくらいのお客さんが入るくらいが。
小林
そうですねぇ。
いわゆる「小劇場」っていう規模の。
ぼくらの時代は、
「アングラ」って言われてたんですが(笑)。
糸井
「アングラ」と「小劇場」、
規模はいっしょかもしれないけど、違うよね。
小林
違うんですよね。
思えば、つかさんがやってたようなことが
小劇場のはしりなのかもしれない。
糸井
そうかも。
『熱海殺人事件』って、テーブルが1つあって、
取調室が1つ成立すればいいわけだから、
そういうサイズの芝居ですよね。
小林
そうそう。だから、つかさんの芝居って、
大きいものもあったと思うけど、
基本的には、スペースのいらないお芝居ですよね。
糸井
そのあとは人気が出て、
紀伊國屋ホールで観たなあ。
小林
ぼくも『熱海』を紀伊國屋で観ましたけど、
やっぱり机1個の舞台だった。
糸井
でも、紀伊國屋ホールも、
じつはそんなに大きな劇場じゃないよね。
300人くらいでしょう?
小林
そうですね。パルコ劇場が400ちょっとくらい。
糸井
ということは、芝居で人をたくさん入れるて、
やっぱり、たいへんなことなんだね。
小林
うん。
でも、アイドルがひとり出ると、お客は入りますよ。
糸井
ああ、そうか(笑)。
小林
そういう人がひとり出てると、
「どこからこんなに集まるんだろうな」
って思えるくらい入る。
糸井
数字、一貫してるんだ。
小林
うん。だから、700とか800とか入るホールで
1ヵ月くらいやる公演って、
だいたいそういう人が出てる。
それはやっぱり大きいんじゃないですかね。
糸井
数字が計算できるのは、大きいね。
ちゃんとお芝居できる人も多いし、
プロデューサーは使いたくなるね。
小林
そうでしょうね。
ぼくなんかは、自分のコアなお客さんって、
どうだろう、1ヵ月やって、
のべで500人くらいじゃないかなぁ。
糸井
ふふふふ。
小林
‥‥で、今日は、どういうあれなんですか?
糸井
いや、それが、オレも(笑)。


(つづきます)
2015-01-29-THU
小林薫さんの最新作はこちら

映画 深夜食堂

2015年1月31日公開
映画『深夜食堂』公式ページ:
http://meshiya-movie.com/

繁華街にある小さな食堂を舞台にした
さまざまな心温まる物語、『深夜食堂』。
漫画からはじまり、テレビドラマとしても
たくさんのファンに愛されている
『深夜食堂』が映画になりました。
主演はもちろん、小林薫さん。
寡黙なマスターとお客さんたちの
素敵なストーリーをスクリーンでどうぞ。

監督:松岡錠司
原作:安倍夜郎
出演:小林薫、高岡早紀、柄本時生、
   多部未華子、余貴美子、ほか

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