前川清の歌を聴きたい。~4人が集まる、九州鉄道の旅~ 前川清・髙田明・唐池恒二・糸井重里

歌手の前川清さんがデビュー50周年となるこの年、
ほぼ日刊イトイ新聞は創刊20周年を迎えます。
お互いの「50」と「20」を祝い、
6月10日に記念コンサートを開くことにしました。
前川清さんは、ステージでまっすぐ立ち、
卓越した表現力で歌唱する方です。
ご本人は「歌は好きではない、うまくない」と
おっしゃるのですが、
50年間ずっと歌の世界を走ってこられたこと、
また、前川さんを尊敬する音楽家が多いことには
理由があると思います。
前川さんの地元である九州を列車で旅しながら、
糸井重里と、髙田明さん、唐池恒二さんが話します。
この連載を読んで前川さんの歌を生で聴いてみたくなったら、
ぜひ6月のコンサートにお越しください

この旅のルートを組んでくださったのは、
九州旅客鉄道株式会社(JR九州)さんです。

第3回 歌のうまい人。

本日4月16日より「はじめての前川清」の
コンサートのチケットが販売開始となりました。

e+の申し込みページに進む

糸井
「ほぼ日」は6月に
「はじめての前川清」というコンサートを
主催します。
場所は恵比寿。
同じ場所でぼくらがやってる、
「生活のたのしみ展」がありますので、
その敷地内のホールで開催します。
ですからおそらく、
前川さんのコンサートにはじめて来る人が
たくさんいらっしゃることになるのでは
ないでしょうか。
髙田
新しい世代の方々に、
前川さんの歌を聴いていただくのは、
いいことですね。
糸井
前川さんは、聴かせる歌を歌ってきたはずなので、
ここでちゃんと歌を聴ける場を
作りたいと思ってるんです。
唐池
今回、糸井さんの作詞で、新曲が出るんでしたよね。
糸井
はい。久しぶりに歌謡曲の詞を書きました。
髙田
いつ完成ですか。
糸井
5月中旬に発売です。
それはもちろん、前川さんの
50周年のための新曲です。
6月10日、もしお時間があえば、
「生活のたのしみ展」もおもしろいですし、
ぜひいらしてください。
唐池
わかりました、日曜日ですね。
糸井
そのコンサートでは、第1部として
トークも行います。
昼の部は「いきものがかり」の
水野良樹さんがゲストで、
夜の部が徳光和夫さんです。
唐池
徳光さんって、あの徳光さんですか?
糸井
そうです、あの徳光さんが
「前川清」について語ってくれます。
コンサートに導入があることで、はじめての方にも
「こういうふうに聴いたらいいんだな」
ということが見えてくるかもしれない、
と思いまして。
唐池
ステージでトークするんですか?
糸井
はい。前座がわりにやります。
「いきものがかり」の水野くんは、
歌謡曲にかなり興味がある人なんです。
前川さんの話で、と申し入れたら、
よろこんで引き受けてくれました。
髙田
「ほぼ日」も20周年のときですし、
日が合えばぜひ行かせていただきます。
前川さん、
徳光さんとは、ずっとおつきあいが?
前川
歌謡界に長くいると、業界が狭くなりましてね、
司会、特に「曲紹介」といえば、
演歌の場合には玉置宏さんか徳光和夫さんです。
玉置さんはもちろんすばらしいです。
そして徳光さんの、あのあたたかいアナウンスは、
ほんとうにうれしいものです。
ユーモアがあって。
髙田
泣きの徳光さん、という印象がありますね。
前川
そうです、そうです。
(目を細める)
糸井
ぼくはずいぶん昔に前川さんとお仕事をしましたが、
それから何十年も経って、ふと
「前川さんの歌はいまどこで聴けるのかなぁ」
と思いたって調べたことが、
再度おつきあいがはじまるきっかけになりました。
その経験があるものですから、
今回、コンサートを開くのは
かなり大切なことだと思っています。
前川
中野サンプラザのコンサートに、
娘さんと来られてましたね。
ぼくもスタッフも知らなくて、驚きました。
糸井
はい。そのときしみじみと
「前川さんは、いまもうまいんだなぁ」
と思いました。
特にびっくりしたのは、
前川さんが客席に下りて、屈みながら
お客さんと握手して歌ったことです。
前川さんは握手しながら、
ステージ上と同じうまさで歌うんです。
前川
最終的にはもう、
みなさんに写真なんか撮ってもらったりして、
ピースしながら歌います。
髙田
最高ですね。
糸井
なんで、あれをやって
歌がダメにならなんでしょうか。
唐池
口パクじゃないんでしょ? 
前川
ちがいます。
髙田
でもその
「客席で握手をする」という姿勢、大事ですね。
糸井
しかも、声がちゃんと出てるんですよ。
前川
うちのマネージャーが
「客席に下りて歌ってるときがいちばんいいですね」
なんて言うんですよ。
唐池
それはちょっとすごいですね。
前川
ぼくは、客席では握手ばっかりして、
「歌ってる」という感覚がないんです。
握手し終えてステージにあがると、
「あ、歌わないといけないんだ」
ということに気づいて、その途端、
歌がダメになるんです。
一同
(笑)
前川
あれ、不思議です。
糸井
なぜだろう? ステージでは
「よくしよう」とするからでしょうか。
前川
おそらく「100パーセント」と
思ってしまうんでしょうね。
でもぼくは自分がうまいと思ったことは
一度もありません。
髙田
一貫してうまいと思わないというのも、
前川さんの特長というか、すごさですね。
糸井
人の歌はどうですか?
「あいつはうまいな」と思うことは?
前川
そうですね、たとえば五木ひろしくんです。
どんな状況でもCDのようなクオリティで
生で歌うことのできる人です。
だけど、ぼくなんて、
CDのままには、決して歌えないです。
だいいち、日によって歌い方が違います。
五木くんはすごい。
ほかにもそういった人が何人かいて、
うまいなぁと思って、いつも聴いています。
糸井
玉置浩二さんはどうでしょう。
あの人はわりと、その日によって歌い方が
バラバラだと思いますが‥‥。
前川
いやぁ、もしかしたら、
日本でいちばんうまいのは、
玉置浩二じゃないかなと思います。
唐池
ほほぅ。
前川
もちろん歌はうまいんだけど、
彼の歌は、ぼくのような人間でも、
「ここ(心臓)」にくるんです。

彼は、なんだかいろいろな魅力が
飛んでる人だと思います。
いろんなものが飛んでれば飛んでる人ほど、
こころに迫るものがあると思います。
ただのまともな人はやっぱり、
それなりの歌になります。
糸井
玉置くんは、魅力が飛んでて、
しかも、ものすごくやさしいんですよ。
前川
たぶんそうでしょうねぇ。
糸井
ものすごく、めちゃくちゃに、
やさしい人なんですよ。ほんとに。
前川
そういう方はもう、絶対にうまいですね。
髙田
玉置さんのそういうキャラクターが
歌に存分に出てるんですね。
(明日につづきます)
2018-04-16-MON