北野武×糸井重里 たけし、コノヤロー。 新作『アキレスと亀』をとっかかりに。

第13回 じゃ、夫婦愛。

糸井 さて、時間も過ぎたみたいなんで
あからさまにまとめますけれども。
たけし ハハハハ。
糸井 最後にもう一度、
『アキレスと亀』っていう映画ですけど、
ぼくはね、おもしろい、つまんないって
簡単に片づけるまえのところで、
何回も自分で考える機会が
ある映画だと思ってるんですね。
だから、その意味では、
「お得な映画だよ」って言いたいです。
たけし ああ、ウン。
糸井 たとえば、ドストエフスキーを読んだらね、
「あー、おもしろかった!」って
すぐに結論が出て終わりになるんじゃなくて、
歳とってから思い出したり、
時間が経ってから意味がわかってきたり
するじゃないですか。
教訓になったり、トラウマになったりね。
そういうふうに、何度も思い出せるタイプの
映画なんじゃないかなって思うんです。
たけし ウン。けっこう、
考えていろんな方向に振ってあるからね。
ひとつのラインじゃなくて、
つねに、裏があったり、反対側があったり。
糸井 ああ、そうですね。
たけし まっすぐだったり、反対だったり、
ねじくれてるからね。
なかなか、「これだよ」っていうのは
言いづらい映画なんですよ。
結論が、あるところに落ち着いたとしても、
そこまでの道のりが、
こっちのコースか、あっちのコースか、
それによってぜんぜん違っちゃってるんで。
糸井 うん。その意味では、あんまり一気に
ほめられちゃってもかなわないですね。
たけし ウン。だからね、宣伝の人はね、
「お願いしますよ、夫婦愛でやってくださいよ」
って、そこだけでほめられようとしてるんだけど。
糸井 ああ(笑)。
たけし オレ、言われれば言われるほど、
どうしても、違うこと言いたくなっちゃうんだ。
だから、夫婦愛、夫婦愛って言われると、
「もっと残酷だよ」って言っちゃうんだよ。
糸井 じゃ、最後にぼくが「夫婦愛」って言って
終わりにすればいいんじゃないですかね。
たけし ハハハハハ。
糸井 あ、じゃあ、ふたりで言いましょうか。
たけし
糸井
「夫婦愛」!
一同 (笑)
糸井 これで、宣伝の人もホッとしたことでしょう。
たけし 台湾女優、フー・フアイ。
糸井 ということで、お時間です。
たけし ありがとうございました。
夫婦愛!
糸井 夫婦愛!
たけし 台湾女優、フー・フアイ。
糸井 じゃあ、また、会いましょう。
ありがとうございました。
あ、そうそう、このたびは
かみさんがお世話になりまして、どうも‥‥。
たけし あ、どうも‥‥。
一同 (笑)
(おわりだ、コノヤロー)

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2008-10-07-TUE


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