不正解、食べられません!
イヌセンボンタケ食不適

森へ行ったときに、何が楽しいって、

今まで気づかなかった「何か」を見つけることです。

ぼくとあなたと、二人で森を歩いているとします。
ぼくは常に「きのこ目」の鍛錬をしているので(笑)、
ここに、そこに、と頻繁にきのこを見つけます。

ぼくと一緒にいるあなたは、
もちろんきのこに興味を持っているに違いないから、
ぼくが見つけたきのこを見るだけでも満足しているはず。

そして、ついに、その時が訪れます。
大きなシダに隠れていた枯木の基部に生えている、
無数の小さなきのこを、あなたは見つけます。
やったあ!

灰色のものや、やや褐色がかったもの。
傘が開いたもの、開かずにまんまるのもの。
数え切れないくらいたくさん生えている、
きのこの一本一本が別の生きもののようでもあり、
見れば見るほど魅了されてしまいそうです。
(こういう群落が苦手な方もいらっしゃいますよね)

このきのこの名前は、イヌセンボンタケ。
夏から秋にかけて、主に広葉樹に枯木や倒木から、
ぶわ〜っとたくさん発生します。
同じ木から、ちょっと時期をずらして、
年に数回発生する場合がほとんどです。

写真を撮るもよし。
ただ、ぼ〜っと眺めるもよし。
一本手にとってみて、匂いを嗅ぐもよし。
(少し湿ったような木や土の香りがします)

傘も、柄も、とても脆くて、
ちょっと力を入れただけで、
ボロボロと簡単に崩れてしまいます。

これを食べるのは無理かも……。
食べても絶対に美味しくなさそう……。
深く考えずに決めつけちゃいそうですが、
あなたのその判断は間違いありません。
食不適、のきのこです。

きのこを見つけたときの、
どきどき、わくわく、うきうき、が積み重なると、
知らずのうちにきのこの菌糸に絡め取られ、かつ、
じわじわ胞子を植え付けられてしまうんです(笑)。
帰る頃には、あなたも、立派な、きのこファンに!

百聞は一見にしかず。
とにかく、万難を排して野外へと繰り出し、
本物のきのこを探しましょう。

そして、できるなら、
きのこと一緒にその周りの自然とも、
じっくりじっくり対峙してみてください。

例えば、この写真をじっくり見てみると、
イヌセンボンタケは、基部だけでなく、
枯木の上の方からも発生しています。

そして、視線を別の角度に向けると、
庇のように張り出しているシダの裏側には、
びっしり胞子がついているじゃありませんか!
ね、気づくと、いろいろなものが面白いでしょ!

そして、そして、
ちょっとだけ、宣伝させてください。

ぼくの5冊目の著書となる、
『森のきのこ、きのこの森(玄光社)』
が、2016年10月24日に発売されました。
(144ページ、税別定価2000円)

写真評論家の飯沢耕太郎さんが、
帯に書いてくださったのですが、
森でのきのこ探しの歓びが、
びっしり詰まった本だと自負しております。
(今回のイヌセンボンタケの写真も掲載!)

森へ出かける前のイメージトレーニングに、
あるいは、きのこ目の修練に、ピッタリ(笑)。

本屋さんで見かけたら、ぜひご覧ください。

このコンテンツでは、
				きのこの食毒に触れてますが、
				実際に食べられるかどうかを判断する場合には、
				必ず専門家にご相談ください。