木村くんは、そういうとこあるよね。 木村くんは、そういうとこあるよね。
木村拓哉さんと糸井重里は、
かなり以前から、もう、25年くらい前から
おつき合いがあるのです。
じつは創刊当初のほぼ日のオフィスにも
ときどきこっそり遊びに来ていたり。
そんなふたりが、久しぶりに会いました。

木村拓哉さんがMCを務める
ラジオ番組「Flow」のマンスリーゲストに
糸井が呼ばれたのです。
久々に会っても自然体なふたりが
たっぷり話した約2時間。
放送されなかったトークも含めて、
だいたいぜんぶを文字にしました。
第13回 あなたは友だちがいるよ。
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木村
っていうか、もう気づいたら、
そろそろ終わりの時間になってるんですけど。
糸井
あ、そうですか。けっこうですよ。
木村
で、ここに来ていただいたゲストの方、
みなさんにうかがってることがありまして。
糸井
はい、唯一の宿題でしたね。
木村
はい。
けっこう、たいへんだったとお聞きしました。
糸井さんの「人生の1曲」というのを
教えていただきたいんですけど。
糸井
あのね、うーんと、
あれこれ言い訳しないで言うと、
キャロル・キングの
「You've Got A Friend」という名曲があって。
木村
ああ、はい、はい。
糸井
いま、ふいに、やっぱりこれにしよう、
って決めることができたから、これにします。
木村
それは、ご本人ひとりのバージョンですか。
それとも、ライブで、
男性ボーカリストと歌った‥‥。
糸井
ああ、ジェームズ・テイラーと
歌ってるのがありますよね。
両方いいですけど、
「TAPESTRY」っていう
アルバムに入ってるやつでいいかな。
木村
ご本人おひとりの。
糸井
うん。オリジナルのやつで。
木村
わかりました。
なんでこの曲になったんですか。
糸井
あのね、ほんとは、
ビートルズを挙げたいんですよ、
やっぱり生き方として
いちばん影響を受けたのはビートルズなので。
木村
はい。
糸井
でも、キャロル・キングの
「You've Got A Friend」と
「TAPESTRY」っていうアルバムは、
なんだろうなぁ、じぶんの世界を
広げてくれたような気がするんですよね。
それは、大人になってから。
木村
ふーん。
糸井
「You've Got A Friend」っていうのは、
あなた友だちいるじゃん、ってことでしょ?
そのコンセプトであんなふうに歌ってもらうと、
いろんなことが、増える気がするんですよ。
「友だちがいるんだよ」
「なんだったらわたしがいつでも駆けつけるから」
っていう、それで歌ができるんだ、っていうこと。
いいことばだなぁって思うし、
それから、曲も、なんというか、
わたしがつくった歌なんだけど、という感じと、
ぜんぶが、あの歌の中にあってね。
なにかにつけて「友だちがいる」っていうのを、
考えるきっかけになったのは、あの歌かなぁ。
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木村
そう考えると、おもしろいですね。
「あなたはひとりじゃない」
っていう言い方じゃないですもんね。
糸井
そうですね。
木村
「あなたはひとりじゃない」って、
ちょっと宗教的な感じで言いがちじゃないですか。
でも、そうじゃなくて、「友だちがいる」。
「You've Got A Friend」という、
なんか、頭の考え方、伝え方の回路。
糸井
そう。「友だち」っていうのは、
大きいものに見せる必要もなくて、
「わたしは駆けつけるよ」
っていうだけでいいんだよね。
別に医者じゃないから、
治してくれるわけじゃないんだけど、
それでいいんだ。
木村
うん、うん。
糸井
あの歌は「あなたには友だちがいるよ」と
歌っている「わたし」という立場と、
そう言われてる「あなた」という立場と、
両方をじぶんが味わえるじゃないですか。
で、「あなた」のときには、
落ち込んだときにこの歌が聞こえてきたら、
もう、泣いちゃうなぁ、みたいな。
木村
うん(笑)。
糸井
で、同時に「わたし」であるときには、
友だちのところに行く以上は、
なんか力になってあげたいなぁという
「わたし」になりたいじゃないですか。
木村
うん、うん。
糸井
わたしも一緒に泣いてあげるわよ、
っていうのもあるかもしれないけど、
それよりは、もうちょっと、
「まず、ちょっと窓開けようか?」みたいな、
そういう、友だちのやることを
気持ちよく見せてくれるっていうか。
だから、すごくいいなぁと思うんですよね。
木村
なるほど‥‥。
あの、ぼく、この歌を
キャロル・キングさんと
一緒にやったことがあります。
糸井
え! あ、「スマスマ」?
木村
はい。
糸井
いやぁー‥‥それは、すごいなぁ。
木村
すっげー、いま自慢しちゃった(笑)。
糸井
いや、してもいいよ、それは。
木村
すげー、うれしかった。
糸井
ああ、そう。いいねぇ。
木村
はい(笑)。
写真
糸井
歌は、すごいよね。歌ってものはね。
木村
すごいですね。
糸井
うん。木村くんも、
なんか、匿名で歌でも出せば?
木村
匿名で(笑)?
糸井
木村拓哉のままだとさ、
やっぱりかならず買う人がいるから。
「売れないんですよー、これが」
みたいな感じではじまって、
徐々にみんなが歌うようになったら、
素敵じゃない?
木村
なるほど(笑)。
糸井
もう、ぜんぜん違うバンド組んだりしてさ。
それでぜんぜん売れないっていうのも、
それはそれで、おもしろいよね。
木村
そうですね(笑)。
糸井
いま、歌が売れない時代だからさ、
逆にそういう遊びできるんじゃない?
木村
そこを遊ぶんすか(笑)。
糸井
どうやったら売れるんだ?
ってほんとに考えはじめたら、
つまんなくなるに決まってるじゃない。
それよりは、どうせ売れない時代なんだからさ、
売れないんだったら、
一番なにがたのしいだろう
って言ってやったら、少なくとも、
きみの友だちの範囲では、すごくウケるよね。
木村
そうですね(笑)。
糸井
いい歌! あたしは大好き!
みたいな人が現れるよね。家族とかね。
木村
あー、なるほど。
糸井
だって、いちばんやりたいのって、
そういうホームパーティーだからさ。
木村
そうですね。
糸井
そういうところで
どれだけタダ働きできるかが、
やっぱり、その人の価値なんだと思うよ。
木村
そうっすね(笑)。
ちょっとビクターの人と話します。
糸井
(笑)
木村
ということで。
糸井
はい。
木村
木村拓哉「Flow」、
7月のゲストは糸井重里さんでした。
ほんとに、ありがとうございました。
糸井
はい。
ありがとうございました。
写真
(木村拓哉さんと糸井重里の話はこれで終わりです。
最後までお読みいただき、
どうもありがとうございました)
2019-09-13-FRI