木村くんは、そういうとこあるよね。 木村くんは、そういうとこあるよね。
木村拓哉さんと糸井重里は、
かなり以前から、もう、25年くらい前から
おつき合いがあるのです。
じつは創刊当初のほぼ日のオフィスにも
ときどきこっそり遊びに来ていたり。
そんなふたりが、久しぶりに会いました。

木村拓哉さんがMCを務める
ラジオ番組「Flow」のマンスリーゲストに
糸井が呼ばれたのです。
久々に会っても自然体なふたりが
たっぷり話した約2時間。
放送されなかったトークも含めて、
だいたいぜんぶを文字にしました。
第7回 かっこいいを集めて。
木村
糸井さんの仕事でいうと、
ゲームもつくってましたよね。
糸井
うん。『MOTHER2』は、ほぼ日をはじめる前だね。
あ、そうだ、『MOTHER2』のコマーシャルは
木村くんにお願いしたんだもんね。
木村
はい。
糸井
マーザーツーー♪
木村
やってましたね(笑)。
糸井
あったねぇ。
木村
スカジャンつくってくれましたよね、
『MOTHER2』の。
糸井
あ、そうそうそう。
木村
で、俺、それがうれしくて、
その『MOTHER2』のスカジャン着て、
横浜の元町に買い物行ったら、
地元の子たちに、
おめー横浜にそんなスカジャン着て、
いい度胸してんな、って絡まれて。
糸井
おお(笑)。
写真
木村
なんだこの絡まれ方、って思いながらも、
まぁ、それに対して、なんていうか、
当時のじぶんのリアクションをして、
一通りその時間を過ごして、帰ったんですけど、
次の週の週刊誌に、そのときのすべての会話が、
こと細かく載ってたんですよ。
糸井
へーー。
木村
っていうことは、まぁ、
そういうことだったんだ、と思って。
糸井
あー、ちょっとヤだねー。
木村
なんかいろんな形があるんだなぁ、
って、思いましたけどね。
糸井
ああ、そうか。
いや、木村くんは、
ときどきちゃんと腹立ててたよね。
木村
ははははは。
いや、腹立つときは立ちますよ。
糸井
ね。
木村
人ですから。
糸井
腹立ててたよね。
やっぱり悔しかったんだろうね。
悔しいよねー、そういうの。
木村
はははは。腹立つときは立ちます。
糸井
そうですよね。
いや、でも、大したもんだなぁと思った。
そういう子がちょっとずつ大人になって。
木村
ちょっとずつというか、
まだなりきれてないと思いますけど。
糸井
でも、お嬢さんができたりすると、
やっぱり、この子に言えることをしよう、
みたいな気持ちになるでしょ、きっと。
木村
うーん、そうっすね。
糸井
お父さん、あれ、なんだったの?
って言われたときに、
こうだったんだよ、って言えれば、
世間がなんて言おうが平気だと思うけど、
娘にこれは言えないなぁっていうことは
しないほうがいいですよね。
木村
そうですね。
糸井
子どもがいるって、
そういうところが大きいんだろうなと思った。
木村
でかいっす、はい。
写真
糸井
だんだん、
かっこよさが変わってくるんだよね。
俺、木村くん本人に言ったかどうかわかんないけど、
木村くんっていうのは、
「かっこいい収集家」だと思うんだよ。
木村
収集家(笑)?
糸井
「かっこいいコレクション」を
ものすごく持ってるやつだと思うんだよ。
木村
ああ。
糸井
だから、たとえば、永ちゃんなんかも
すごくかっこいい人なんだけど、
彼は無意識でやってることが、
「矢沢がやってることだったら、
人はかっこいいと思うようになる」
っていう信念があるんだよ、たぶん。
木村
うん。
糸井
だから、下着として着るような
真っ白いTシャツ1枚で、
そのへんふらふらしてても、
矢沢がやってたらかっこいいんだよ、みたいな。
そういうことをナチュラルで
やれる人なんだよ、永ちゃんは。
木村
うん、うん。
糸井
でも、木村くんは、
そういうことぜんぶをちゃん意識して、
「それもかっこいいな」ということを
いちいち知ってるわけで。
木村
あー。
糸井
だから、誰かがやってるのを見て、
かっこいいなぁ、とか、あるいは、
本人はかっこ悪いと思ってるんだけど、
あれはかっこいいな、とか、
かっこいいをものすごく見つけて、
それ、俺もそっちがいいな、っていうことを、
いっぱい足し算して、
「キムタク」ができてきたと思うんだよ。
木村
はい、はい、はい。
糸井
で、なおかつ、
これはやめた、っていうのも言えるし、
かっこよさが「着脱可能」なんだよ。
木村
着脱可能(笑)。
糸井
意識的なんだよね。
だから、きっと本人にしてみると、
ある意味、「かっこ悪さの塊」に見えるような
かっこいい人には、たぶん、もうなれない。
木村
うん。
糸井
だって、木村くんの職業って、
いわば「かっこいい業」だからさ。
木村
「かっこいい業」。
糸井
うん。女優さんは「きれい業」じゃない?
木村
ま、そうですね。
糸井
そうじゃなかったら仕事にならないわけだから。
ふつうはかっこよくないことも、
こうやったらかっこよくなるな、
っていうようなことを、
編集も含めて収集してきてる人だから。
木村
はい。
糸井
そういう意味では、これからがたのしみだね。
どうなるんだろうね、木村くんは。
たとえば、おじいさんになったら、
おじいさんなりのかっこよさを
見つけるんだろうな‥‥とか思うんだよ。
木村
でも、いますからね。
糸井
いますよね、かっこいいおじいさんは。
木村
実在してますからね。
糸井
それをつくっていくというよりは、
ああなりたいな、という憧れが
「かっこいい業」をつくってると思うんだよね。
写真
木村
うん、うん。
糸井
あんがい、木村くんが
謙虚に、偉そうにしないでいられるのは、
憧れが原点だからだと思うんだよ。
少年のときの憧れみたいな。
それは若いときに、木村くんに、
言ったような気もするんだよね。
たぶん、そのときには、
まだわかんなかったのかもしれないけど。
木村
でも、いま、すごいわかります。
糸井
そう(笑)。
(つづきます!)
2019-09-07-SAT