教えて木原さん!今日はじめる備え。

日本テレビ「news every.」の
お天気コーナーでおなじみの木原実さんは、
防災士としても活動をされています。
震災はいつ、どこで起きるかわかりません。
いつかではなく、今日からできる備えを
木原さんに教えていただきました。
2011年3月11日から8年が経ったいま、
改めて、防災について見直してみませんか。
担当は、ほぼ日の平野です。

食べ物はローリングストック。

ーー
震災から3日間をしのぐ備えについて、
具体的に教えていただけますか。
生きていくために必要になるのは、
まず食べ物でしょうか。
木原
食べ物の基本は、ご飯です。
では、このお店で売られているものから
クイズを出してみましょうか。
非常用の持ち出し袋に入れるとしたら
「乾燥わかめゴハン」と「梅しらす雑炊」、
どっちがいいでしょうか。
ーー
ぼくは「梅しらす雑炊」のほうが好きです。
そのまま食べれて手軽そうだし。
木原
えっ、「梅しらす雑炊」でいいんですかー?
1日に3パック分を食べて、
これを9つバッグに入れて持っていく。
すっごく重たいですよー?
ーー
たしかに「梅しらす雑炊」は
水分を含んでいるから重いですね‥‥。
しかも、9パックでようやく
1人分の備えということですもんね。
木原
もしあなたが4人家族だとしたら、
この4倍の数をバッグに入れるということ。
雑炊を入れただけで
他に何も入らなくなっちゃいませんか?
ーー
ひとり9個で4人分だと36個、
たしかに持てないですね。
いまはご飯から選びましたが、
防災コーナーを見ていると
いろんなご飯やおかずが並んでいて、
目移りしてしまいます。
木原
はいはい、おかずも欲しいよとね。
「緊急時なんで、いいんじゃない?」
ということなんです。
食べられるだけでもいいんですよ。
昔のものに比べたら味は改善されていますが、
お母ちゃんの握ってくれるおにぎりには敵わない。
あんまりおいしくない、でも食べられます。
ーー
フリーズドライのご飯で、
いくつか味を変えてみるぐらいなら
いいかもしれませんね。
木原
味を変えるぐらいなら軽いままでいいですね。
贅沢をすればおいしいものも選べるけれど、
今探しているのは非常用です。
生きていくためには、何が必要ですか。
お腹が空いて死にそうってことに
ならなきゃいいんだから、
とりあえず食べておきましょう。
自分がどんなスタイルで震災に遭って、
どんなスタイルで生き延びるかのイメージを
最低限でいいと思えば用意するものは減らせます。
ーー
すでに家に備蓄している防災用の食品も、
賞味期限が切れていたりするから、
見直しておいたほうがいいですよね?
木原
フリーズドライのごはんって、
炊いたゴハンとは違いますから、
正直、おいしくはないんですよね。
たとえば賞味期限がきたときに、
「今日は防災グッズ一掃の日だ!」とか言っても、
家族はあんまり喜んでくれません。
では賞味期限がきたときに、どう処理するか。
捨てるのはもったいないですよね。
ーー
そうですね。
木原
この間、ペットボトルで備蓄していた
無洗米を炊いてみたんです。
平成24年なんで6年前のお米でしたが
おいしく食べられましたよ。
今日もおにぎりを持っています。
ーー
ホントですか?
木原
見た目は全然変わっていませんでした。
6年も経った米が食べられるのかなと思って
炊きましたけど、全然平気でした。
お米はおいしくて、保存もできていいですよ。
無洗米と水、あとは火が沸かせれば、
おいしくご飯が炊けます。
研がなくてもおいしい無洗米は非常用にも最適です。
水が止まっているときには、
ポリ袋を使ってご飯を炊くといいですよ。
ーー
ポリ袋でご飯を炊くというのは、
どういうふうにやったらいいのでしょう。
木原
ポリ袋はスーパーでもらえるような
生鮮食品を入れる透明の袋です。
ポリ袋にお米を入れて、
炊くのに必要な分量の水を入れます。
袋の空気を抜いたら、
ちょっと余裕を見て上のほうをキュッと縛る。
これをお湯の中に入れて、
お米だったら15分から20分ぐらい加熱します。
少し時間が経ったら火を止めて、蒸らします。
袋を開ければ、ご飯がホカホカに炊けています。
あとは、缶詰の焼き鳥も入れて一緒に炊けば、
炊き込みごはんもできちゃうでしょ?
ーー
ガスや電気が止まっていても
カセットコンロがあれば簡単にできますね。
アレンジもおいしそうです。
木原
他にも、缶詰のカレーを温めておいて、
ラップを敷いた紙皿に
ご飯を載せてカレーをかければ、
家族みんなでカレーを食べられます。
ラップをお皿に敷けば、
お皿はずっと洗わずに使い回せていいですよ。
ちなみにお湯も替えずにずっと使えます。
ーー
そうか、ポリ袋に入れて
調理をしていますもんね。
木原
そう、ポリ袋に入れていることで、
飲める水を使わなくてもいいんです。
プールから汲んできた水でも、雨水でも、
お風呂やトイレのタンクの水でもいいです。
くり返し加熱をすれば細菌も死にますし、
ポリ袋の中まで入ってこれないんで。
ポリ袋とお米と水があれば、
何度でもご飯を炊けます。
家にゴマ塩だけ残っていれば、
おいしいゴマ塩にぎりができますよ。
それはフリーズドライのわかめご飯より
断然おいしいはずです。
賞味期限が近くなったら、
普通に炊いちゃえばいいだけですから。
ムダがない、安い、長くもつ。
ーー
無洗米、非常食にぴったりですね。
木原
お米屋さんに訊いてみると
「賞味期限は冷蔵庫で2ヶ月」と言うんですよ。
お米も生鮮食品です、野菜ですとね。
でもそれは、味にこだわればの話かな。
風味や安全性については自己責任ですが、
実際、ぼくは6年経ったお米を
おいしく食べられました。
ーー
おいしく食べられる期間と、
食べても問題のない期間は別だと。
こまめに保存状態を確認して、
早めに新しくしたほうがよさそうですね。
木原
備蓄として保存している缶詰だって、
賞味期限以上に保存できますが、
気づいたときに食べるのがいいでしょう。
ただし、ひとつだけ注意するのが、
食べてから買うのではダメ。
買ってきてから食べてください。
缶詰を食べた瞬間に地震がきたら困りますから。
食べる分は足す、これが「ローリングストック」。
ーー
ローリングストック。
木原
ローリングストックを実践できれば、
おそうめんとかパスタとか、
お家にある乾麺も役に立ちます。
乾麺はずっと火にかけたらガスがもったいないんで、
お湯に入れた瞬間に火を止めてフタしておけばね、
やがて柔らかくなって食べられます。
家族4人で3食を食べていくのに、
ガスボンベ1本で1日。
3本用意しておけばなんとかなるでしょう。
ーー
食について準備すべきものが、
だいぶ見えてきました。
木原
3日間をしのいでいくために必要なものを
シンプルに考えていくと、
米と水と、簡単なおかずとして味噌でもあれば。
非常事態のことを考えると、
最低限なら割と少ないものでなんとかなります。
もっと上の生活を目指したら果てしないです。
ーー
最初に食事から選びましたが、
水はどのぐらい用意したらいいでしょう。
木原
もちろん水は必要です。
ですが、最も基本的なものなので、
最優先で水が避難所に届けられます。
ーー
ああ、なるほど。
避難所に行けば大丈夫。
木原
水道が止まっても、なんとかすることはできます。
たとえば小学校にはプールがありますよね。
プールの水はそのまま飲めないけれど、
携帯浄水器があれば濾過できます。
プールや池の水を濾過すれば、飲み水になるんです。
1日3リットルあれば生活できるので、
携帯浄水器を1本持ってさえいれば、
池とかプールを見つけたらラッキー!
ーー
これだけあればいいんですね、へえー!
木原
携帯浄水器の説明書きを読んでみると、
200リットルの水を濾過できると書いてあります。
ただね、浄水器でも化学物質は濾過できません。
たとえば、入浴剤もダメ。
お風呂の水が、いいニオイのまま濾過されちゃう。
魚やミジンコが生きているけれど汚なくて飲めない、
という水を濾過するのがいいですよ。
プールの水を濾過すれば、
フリーズドライのご飯も食べられます。
ーー
ご飯は常温の水だけでも
食べられていいですね。
木原
160ミリリットルの水を注げばご飯を食べられます。
携帯する水については、
浄水器があればなんとかなりますね。
水ってけっこう重いんです。
ひとり1日3リットル必要で、3日分で9リットル。
家族4人分で36リットルとなると、
背負って歩くなんて大変ですよね。
ーー
我が家にも2リットルのペットボトルを
いくつか備蓄しているんですが、
持ち歩くとなると無理がありますよね。
木原
家にいれば平気なんです。
家を城にしておける状況であれば、
1週間ぐらいはなんとかなりますから。
ペットボトルを何本か用意していても、
家族分を4人となると、
3日間や1週間をもたせるには量が必要です。
ウチでは手っ取り早く、
ウォーターサーバーの水を備蓄しています。
1リットル単位で考えると、
ペットボトルより安いんですよ。
500ミリあたりだと、80円から90円ぐらい。
タンクが12リットル入っているから、
3つあれば36リットルになります。
家族4人が飲み食いするための水なら、
3日分はもつ計算になりますね。
ウチではいつも6個置いておいて、
3つ減ったら次の3つを注文するように
水を回していくんです。
これもまた、ローリングストック。
ーー
古いものから使っていって、
補充したものは備蓄用になるんですね。
<つづきます>

2019-03-13-WED
※掲載している商品の取扱・価格は店舗により異なる場合がございます。
撮影協力=スーパービバホーム豊洲店

木原実(きはら・みのる)

気象予報士・防災士。
1986年から日本テレビでお天気キャスターをつとめる。
現在は日本テレビ「news every.」で、
キャラクターのそらジローとお天気コーナーを担当。
わかりやすい気象解説と軽妙洒脱な語り口には定評があり、
ナレーターや声優、舞台俳優としての顔も持つ。
2004年には防災士としての資格を取得。
翌年には日本防災士会常任幹事に就任。
2010年度の内閣府
「災害被害を軽減する国民運動サポーター」に就任し、
ジュニア防災検定(防災検定協会)理事もつとめる。
『おかあさんと子どものための防災&非常時ごはんブック』
(草野かおる著)の監修をつとめたほか、自著も多数。

防災に特化したオフィシャルブログも開設。