教えて木原さん!今日はじめる備え。

日本テレビ「news every.」の
お天気コーナーでおなじみの木原実さんは、
防災士としても活動をされています。
震災はいつ、どこで起きるかわかりません。
いつかではなく、今日からできる備えを
木原さんに教えていただきました。
2011年3月11日から8年が経ったいま、
改めて、防災について見直してみませんか。
担当は、ほぼ日の平野です。

「防災士」の木原さん。

ーー
今日は木原さんに、防災士として
お話をしていただけたらと思います。
まずは8年前の3月11日、
東日本大震災が起きたタイミングは、
どこで何をされていたか覚えていますか。
木原
汐留の日本テレビで「news every.」の
本番前の打ち合わせが終わって、
そろそろ動きだそうかなっていうときでしたね。
携帯の緊急地震速報が鳴ったあと、
グラーーッと大きく揺れたんです。
そのときに驚いたことがありましてね、
ぼくが「隠れろ!!」と叫んで、
テーブルの下に隠れたのはぼくが一番先。
他のスタッフはね、
なかなか隠れないんですよ。
どうしてすぐに動かなかったのか
理由を訊いてみたら、
「いや、たいしたことないだろうと思った」とか
「ホントに揺れるのかなと思って」だって。
ぼくらは東京にいて震源地から遠かったんで、
ゆっくりした大きな揺れでしたけど、
もっと震源地が近くだったらガタガタッて揺れて、
ケガをする危険性もあったはずです。
それなのに、なぜだか人は動かない。
ーー
報道に携わるスタッフなのに意外です。
2011年当時のことを思うと、
みんなの意識がまだ甘かったんですね。
木原
ぼくはすでに防災士として活動していて、
「揺れたときは逃げろ」と常々言っていたから、
机の下に隠れることができました。
でも、普通の人は動けないですよね。
それがね、すごく勉強になりました。
ぼくだって、防災士じゃなかったら
逃げなかったかもしれません。
ーー
訓練とはまた違う、
実際の光景が見られたわけですね。
木原さんは、もともとお天気キャスターや
気象予報士として活動されていて、
その後に防災士の資格を取得されていますよね。
木原
防災士の資格ができた2003年より前から、
お天気コーナーは担当していました。
地震について学ぼうと思ったきっかけは、
1995年の阪神・淡路大震災ですね。
阪神・淡路大震災が起きたのは、
ちょうど『ズームイン!! 朝!』の生放送中でした。
地震の解説をスタッフから頼まれるのですが、
地震については基礎的なことしか知りません。
地震というのは地面の地象であって、
気象は大気現象なので、地象と気象は違うんです。
こういった説明をスタッフにするとね、
「地象と気象が違う? コンチキショウ!」
なんて言われちゃって。
あっ、これはネタですけどね(笑)。
ーー
あはは。
お天気と地震って、
理科の「地学」でくくられているせいか
近いものに感じていました。
木原
専門知識として説明できるところまでは、
ぼくも理解できていなかったんです。
それまでにも平日の生放送で
気象情報や災害情報を伝えていましたが、
その中に地震の情報まで入ってきちゃったんです。
放送中に地震速報が鳴ると、
番組に出ている人間が話せなきゃいけないのに、
ぼくは何も知らなかったんです。
これは困ったなあと思っていたら、
しばらくして「防災士」という
資格ができることを知りました。
ーー
防災士はどのような資格なのでしょうか。
木原
防災士の資格は、地震に関する
総合的な知識と技能を検定するものです。
自分で地震について調べようとしても、
何をどう学べばいいのか見当がつかないんですよ。
地震学、救助訓練、救急医療、備蓄‥‥、
どれもよくわからなかったので、
総合的に学べていいなと思って受験し、
無事に合格して防災士になれました。
ーー
おめでとうございます。
そこから防災士の活動が
はじまったんですね。
木原
防災士の試験に合格した後に、
理事の人たちから声を掛けられたんです。
「防災士という資格は与えるけども、
 実はまだ組織として横の網の目がない。
 これから防災士ネットワークを作りたいんだが、
 その会を作るための準備会をやりたいので、
 木原くん、発起人をやってくれないか?」
ということで日本防災士会設立に向けた
発起人のひとりになってしまいました。
まだ何もできていないところから、
消防のOBだとかお天気キャスターだとか
いろんな人が集まって、何が必要かを考えました。
まずは、防災士としての技能が失われないように
定期的に勉強会を開かなきゃいけません、
ということで学習班が必要だと。
それから「こういう会議があるよ」と知らせて、
大勢の人に活動を伝えていかなきゃいけないから
広報部ができたりして。
こうして日本防災士会という会ができました。
設立できたはいいものの、
他に活動を知っている人もいないので、
「木原さん、理事をやってください」と言われて、
2年間理事をやっていました。
ーー
地震を総合的に学びたくて受けたら、
あれよあれよと防災士会の理事になっちゃった。
木原
防災士会が発足してから
だんだんと会員の数も増えていって、
積極性のある人もいっぱい入ってくれました。
ということで、今は参与をしています。
参与って何をするかよくわかりませんよね?
「防災士会のためになることをする人です」
ということらしいので、
防災の大切さを伝える活動をしています。
ーー
木原さんはまさに今、
「日本防災士会の参与」として
取材に応じていただいていると。
木原
そういうことですね。
この記事を読んでくれたみなさん、
ぜひ防災士会に入ってください(笑)。
ーー
防災士の試験では、
どんな内容が問われるのでしょうか。
木原
防災にまつわる本を読むだけでは、
「これはなんだ?」で終わることが多いので、
より踏み込んだ内容の講習と試験を受けます。
たとえば、災害に遭った人が
どんなふうに亡くなったのか。
被災者の遺体の写真を見ることで
災害の脅威が身に迫ってくるわけですね。
2日間の講習を受けて、
最終的にチェックをする試験がありますけど、
別に落とすことが目的ではなく、
モチベーション上げる試験だと思ってください。
ーー
実際の怖さを知らないでいると、
震災が起きたときに対応できないわけですね。
木原
そういうことですね。
ただ、資格のあるなしに関わらず、
基礎となる知識を持っていないと、
いざというときに困っちゃいますよ。
たとえば、自分が仕事で外に出ているときに
大きな地震がきたと想定してください。
家にいるはずの奥さんとは連絡がとれません。
「ああ、もしかしたら、
 家の中で下敷きになっているんじゃないか」
でもすぐには助けに行けません。
さあ、どうしますか?
ーー
わわっ、どうしましょう。
木原
家にいる奥さんが
地震に対する知識を知っていれば、
自分の身を守ることもできますよ。
その上で、必ず災害伝言ダイヤルを残しましょう。
「私は大丈夫よ、安心してね。
 パパ、気をつけて帰ってきてね」
というメモが入っていれば安心できますから。
でも「災害用伝言ダイヤルって何?」という人、
いっぱいいますから覚えてください。
では、何番かわかりますか? はいどうぞ!
ーー
「災害用伝言ダイヤル」の
名前は耳にしたことがありますが、
使ったことはないんですよね。
えーっとなんだろう‥‥、157?
木原
ブーーーーッ!
じゃあ今日、覚えてください。
ーー
すいません、絶対に覚えます。
木原
「大事な人が『い・な・い』、電話かけよう」。
ーー
あっ、171(いない)?
木原
そう、171が正解です。
「あっ、大事な人がい・な・い」
ということで、171です。
大事な人がいないときにかける番号が
伝言ダイヤルと覚えればいいですね。
ーー
はいっ! 171、覚えました。
勉強不足で恥ずかしいです。
(※157は通信各社のサポート窓口でした)
<つづきます>

2019-03-11-MON
※掲載している商品の取扱・価格は店舗により異なる場合がございます。
撮影協力=スーパービバホーム豊洲店

木原実(きはら・みのる)

気象予報士・防災士。
1986年から日本テレビでお天気キャスターをつとめる。
現在は日本テレビ「news every.」で、
キャラクターのそらジローとお天気コーナーを担当。
わかりやすい気象解説と軽妙洒脱な語り口には定評があり、
ナレーターや声優、舞台俳優としての顔も持つ。
2004年には防災士としての資格を取得。
翌年には日本防災士会常任幹事に就任。
2010年度の内閣府
「災害被害を軽減する国民運動サポーター」に就任し、
ジュニア防災検定(防災検定協会)理事もつとめる。
『おかあさんと子どものための防災&非常時ごはんブック』
(草野かおる著)の監修をつとめたほか、自著も多数。

防災に特化したオフィシャルブログも開設。