ほぼ日刊イトイ新聞

感染症のプロ・岩田健太郎先生に聞いた 頭がすっきりする風邪の話。

ご報告が遅くなり、すみません。
2018年2月におこなった
「ほぼ日の風邪アンケート」では、
8503名のかたにご参加いただきました。
本当にありがとうございました。
さまざまな風邪の疑問が集まったので、
今回、その結果を持って、
神戸大学病院感染症内科の
岩田健太郎先生のもとを訪ねてきました。
岩田先生のお話は、とにかく明快。
「正しい」「間違っている。理由はこう」
「そういう説もあるが証明されていない」
など、わかりやすい説明で、
たくさんの疑問に答えてくださいました。
読むと、頭がちょっとすっきりしますよ。
これからはじまる風邪のシーズン、
参考にしていただけたら嬉しいです。

5 お医者さんには行くべきか。

ほぼ日
続いて、お医者さんとの付き合い方の質問を。
「風邪のとき、お医者さんには
どのタイミングで行けばいいのでしょうか?
それとも行く必要自体ないのでしょうか?」。
岩田
風邪であれば、たいていの場合は
行かなくていいと思います。
ほぼ日
ほぉー。
岩田
お医者さんに行っても、さきほど言ったように
薬局で買えるのと同じ薬しか出てこないし、
待ち時間も長いし、
待合室で他の病気をもらう可能性までありますから。

特に、風邪が流行っている冬は、
できるだけ病院に行かないほうがいいです。
ほぼ日
できるだけ行かない方がいい(笑)。
岩田
ただ、何も考えずに
「行くほうがいい」「行かないほうがいい」
と決めつけるのではなく、
「自分を知る」のが大事です。
やっぱり、その人がどういう人かによって
違うんですね。

極端な話をすると、僕が診ている人の中には
エイズの方もいます。
そしてエイズの患者さんって、
めちゃくちゃ免疫が弱っているので、
ちょっとした風邪みたいな症状だと思っていても、
生死にかかわる問題だったりするわけです。
もう油断も隙もない。

だから僕の場合、そういう人は、
ちょっとした症状でもかならず
メールか電話をしてもらうようにしています。
「こんな症状ですが、病院に行くべきでしょうか?」
とかって。
で、場合によっては、夜間でも週末でも
「すぐ来てください」と来てもらうことはあります。
ほぼ日
はい、はい。
岩田
ただ、ほとんどの人にそんな免疫抑制はないし、
鼻水とか、咳とか、喉の痛みだけなら、
たいてい勝手に治るので、
わざわざ時間とお金をかけて
病院に行くのは無駄だと思います。
僕ならほっときます。

ただ、繰り返しますが、
大切なのは
「自分の生命活動によく注意して、
それで判断するべき」ということですね。

糖尿病があるとか、腎臓が悪いとか、
持病がある人は特別なので、
そういう人はさきほどの一般論での
「病院に行かないほうがいい」は
そのまま当てはまらないと思います。
ほぼ日
そうですね、いろいろな場合がありますね。
岩田
ただ、そういう特別な事情がない人であれば、
判断基準は
「食事がとれるか」、
「水が飲めるか」、
「睡眠がとれるか」。
そして「日常生活ができるか」
──つまり、歩いたり着替えたりができるか。
それから「排便が正常かどうか」
──つまり、尿が出るか、ウンチが出るか。

もしこういったことが阻害されていて
「眠れない」「息が苦しい」「水が飲めない」
「意識が朦朧(もうろう)として、
歩いたり着替えができない」とか。

そんなふうに意識、呼吸、食事、排泄などの、
いわゆる日常を生きるための基本が
阻害されそうになったときは、
かならず病院に行くべきですね。
そのときは風邪じゃない可能性が高いし、
別な何かが起きているリスクがあるので。

でも、そうじゃないとき。
つまり「食事は頑張ればとれる」
「水も飲める」
「おしっこも出る、ウンチも出る」
「眠れる」
「ちゃんと歩いたり立ったり着替えたり、
料理したりできる」。
‥‥だけど「しんどい」。
そういうときは、たいてい勝手に治ります。
ほぼ日
もし病院に行くとしたら、風邪のときは
どの科にかかればいいのでしょうか?
岩田
大人は内科でいいと思います。
子どもさんは小児科でいいと思います。
あと「家庭医」といって両方診る先生もいるので、
そんな先生でもいいと思います。
ほぼ日
「やはり総合病院に行った方が
いいのでしょうか?」
という質問もありました。
岩田
ケースバイケースだと思いますね。
実際、病院の大きさより
「かかるお医者さんが誰か」のほうが
重要なんですよ。

総合病院の先生と開業医の先生の
どちらが優秀かって
一概には言えないんです。

総合病院でも勉強不足の先生はいますし、
開業医の先生でも同じ。
その人がちゃんと勉強して、
能力が担保されているかどうかは、
働いている場所では決められないです。

まぁ、あくまで一般論ですが、
風邪に限って言えば、
大学病院はあまり得意じゃないと思いますけど。
ほぼ日
あ、そうなんですか?
岩田
どちらかといえば、ではありますが、
大学病院は患者さんを診ることより
研究が得意な人が多いはずですから。
開業していて患者さんを診るのが
苦手という人は、さすがにいないと思います。
それは適性を間違えている。
ほぼ日
(笑)
岩田
だからどっちかというと、
風邪とかインフルエンザであれば、
開業医の先生のほうがいいかもしれないですね。
もちろん、大学病院にそういうのを診るのが
得意な先生もいますけど。

そういえば、うちのおばさんとか、
四ツ谷に住んでいたんですけど、
風邪をひくとかならず
慶應大学病院に行っていたんです。
「病気のときは、やっぱり慶應に行かなきゃ」
とか言って。
それは勘違いだと思います(笑)。

(続きます)

2018-09-22-SAT

岩田健太郎(いわた けんたろう)

島根県生まれ。島根医科大学卒業。
沖縄県立中部病院、ニューヨーク市
セントルークス・ルーズベルト病院、
同市ベスイスラエル・メディカルセンター、
北京インターナショナルSOSクリニック、
亀田総合病院を経て、2008年より神戸大学。
神戸大学都市安全研究センター
感染症リスクコミュニケーション分野および
医学研究科微生物感染症学講座
感染治療学分野教授。
神戸大学病院感染症内科診療科長、
国際診療部長。

所有資格は、日本内科学会総合内科専門医、
日本感染症学会専門医・指導医、
米国内科専門医、米国感染症専門医、
日本東洋医学会漢方専門医、
修士(感染症学)、博士(医学)、
国際旅行学会認定(CTH),感染管理認定(CIC)、
米国内科学会フェロー(FACP)、
米国感染症学会フェロー(FIDSA)、
PHPビジネスコーチ、FP2級。
日本ソムリエ協会シニアワインエキスパートなど。