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| ── |
おもに上品なミセスのかたが読まれる
『婦人画報』という雑誌の６月号に‥‥。
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| 勝村 |
はい。
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| ── |
こういう記事を発見いたしました。 |
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| 勝村 |
あはははは、「全部」っていうね。
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| ── |
はい、驚異の「全部」です。
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| 勝村 |
われながら、ふつうじゃないですね。
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| ── |
読者のみなさんに
何が「ふつうじゃないか」を説明しますと、
「おすすめの本を４冊、紹介する」
というコーナーで、
勝村さん、４冊とも「新宿鮫」を
おすすめしてるんです。
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| 勝村 |
ははははは。
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| ── |
ただごとではないです、これは。
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| 勝村 |
しかも、こんなご婦人の読む雑誌に。
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| ── |
ふつうは「４冊のバランスをどう取ろう」とか
悩むと思うのですが‥‥。
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| 勝村 |
むしろ、計９作出ている「新宿鮫」シリーズから
４冊を選び出すのが、忍びなかったです。
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| ── |
ふだん「新宿鮫」しか読んでないってわけじゃ
ないんですよね、もちろん。
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| 勝村 |
ええ、本を読むのは好きですから。
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| ── |
ちなみに、蔵書の数は‥‥？
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| 勝村 |
何千冊かは、あると思うんですけど。
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| ── |
その何千冊のなかから「新宿鮫」ばかり、４冊。
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| 勝村 |
はい。
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| ── |
これはもう、単なる書評の枠を越えて
大沢さんと「新宿鮫」への「ラブレター」ではないかと。
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| 勝村 |
‥‥ホントにもう、そうかもしれない。
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| ── |
文中の単語をちょっと抜き出してみましょう。
「至極の作品」「脱帽」「風格ある古典」
「最高の恐怖」「偉大な歴史」‥‥。
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| 勝村 |
ええ。
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| ── |
最後、「国の宝」とまで。
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| 勝村 |
はい。
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| ── |
この一件からも、勝村さんは
「新宿鮫」シリーズが大好きということが
よくわかるのですが、
きっかけなどを、お教えいただけますか？
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| 勝村 |
そうですね、なんだったんだろうなぁ････。
とにかく、
なんか、なんとなく読んだんだと思います。
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| ── |
なんか、なんとなく。
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| 勝村 |
ふっと、本屋さんで手にとったんですよね。
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| ── |
それって第１作目ですか？
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| 勝村 |
ええ。だから、もう20年くらい前かな？
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| ── |
そうですね、第１作の刊行が1990年ですから、
たしかに
「元気が出るテレビ」のころと重なりますね。
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| 勝村 |
今回、この『婦人画報』の原稿を書くために、
何冊か読み直したんですが、
やっぱり、めちゃくちゃおもしろかったです。
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| ── |
具体的に言いますと‥‥？
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| 勝村 |
やっぱり、小説の世界と
現実の社会情勢がリンクしてるところですね。
フィクションとノンフィクションが
絡みあってる感じ、というか。
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| ── |
ファンの間では有名な話ですが、
「新宿鮫」に描かれたテーマやエピソードと
そっくりな事件や社会問題が
作品発表後に、いろいろ起こっていますよね。
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| 勝村 |
なんか、そうみたいですね。
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| ── |
なかでも極めつけは、
第５作の『炎蛹』だと言われています。
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| 勝村 |
ああ、鮫島さんが
南米原産の「恐怖の害虫」の「さなぎ」の
ゆくえを追う話だ。
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| ── |
その、炎のように真っ赤な「さなぎ」が
羽化してしまうと、
稲作をはじめとする日本の農業が
大打撃を受けてしまうという設定ですが‥‥。
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| 勝村 |
はい、はい。
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| ── |
どぎついピンク色のタマゴを産みつけ、
イネに深刻な被害もたらす「ジャンボタニシ」が
日本で大きな問題となったのが、
この『炎蛹』の刊行直後のことだった‥‥と。
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| 勝村 |
だからぼく、いまだに鮫島さんが
新宿のどこかにいるって信じてるんですよ。
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| ── |
歌舞伎町のゲイバーかどこかに（笑）。
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| 勝村 |
そう、ジェイムスンかなんか飲（や）りながら。
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| ── |
ジェイムスンというのは
鮫島がよく飲んでる
アイリッシュ・ウィスキーのことですね。
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| 勝村 |
二作目の『毒猿』にしても‥‥。
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| ── |
台湾から来たスゴ腕の暗殺者（毒猿）と
そいつを追う刑事・郭が対決する物語。
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| 勝村 |
どこかでナゾの死体が上がったとかいう
ニュースを見たら
「なんか、毒猿みたいなやつが
やったんじゃねぇか」とか思っちゃう。
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| ── |
毒猿の必殺ネリチャギ（かかと落とし）で。
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| 勝村 |
そうそう、だからもはや、
鮫島さんには
会ったことあるような気すらしてます、オレ。
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| ── |
勝村さんのイメージのなかでは、
どんな人なんでしょうか、鮫島警部って。
背が高いとか、顔の感じとか‥‥。
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| 勝村 |
この小説を読んで、
もう、いちばん最初から思い浮かべてたのが
「原田芳雄さん」です。
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| ── |
うわ、すごい具体的ですね！
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| 勝村 |
若いころの芳雄さん。
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| ── |
ははー‥‥。
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| 勝村 |
鮫島さんには、ああいうカッコいい刑事で
いてほしいんですよね。
で、桃井課長が‥‥。
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| ── |
感情を押し殺し、たんたんと仕事をこなすことから
「マンジュウ（死体）」と呼ばれている、
「新宿鮫」に欠かせないバイプレイヤー、桃井課長。
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| 勝村 |
‥‥エド山口さん。
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| ── |
おおおおっ、たしかに中間管理職っぽい！
モト冬樹さんのお兄さんですよね？
へぇ、人によってぜんぜんちがうなぁ。
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| 勝村 |
ちなみに、誰とかあります？
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| ── |
そうですね‥‥桃井課長については、
笹野高史さんみたいに
小柄で、
ちょっと仏様っぽい感じを想像してました。
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| 勝村 |
ああー、なるほどねぇ。
でも、ぼくのなかの桃井課長は
痩身で背が高くて、
頭はごま塩で、メガネをかけてるんですよ。
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| ── |
おもしろいですね。
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| 勝村 |
で、晶
（鮫島の恋人・青木晶。ロックバンド
「フーズハニイ」のボーカル）は‥‥。
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| ── |
はい。
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| 勝村 |
川村カオリ。
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| ── |
それはもう、ピッタリですよね。
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| 勝村 |
以前、カオリから聞いたんですけど、
大沢在昌さんに
「あなたをモデルにして書いたんだ」って
言われたことがあるみたい。
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| ── |
やっぱり、そうでしたか。
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| 勝村 |
あいつ、最初に「新宿鮫」が映画化されたときも
オファーがあったらしいんだけど、
そのときは
「ミュージシャンなんで、芝居はできません」って
ていねいに断ったんだって。
でも、次にＮＨＫでドラマ化されたときに
また声がかったんです。
で、「そんなに呼んでくれるのなら」ということで
晶の役を、引き受けたらしいんですよ。
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| ── |
そんないきさつが。
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| 勝村 |
ＮＨＫのドラマには
鮫島さんの役じゃないけど、芳雄さんも出てた。
で、カオリも芳雄さんも‥‥
ぼくら、みんな家族みたいなもんなんで。
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| ── |
勝村さんの大好きな「新宿鮫」のドラマに
勝村さんの大切な仲間が、出てたんですね。
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| 勝村 |
そういう意味でも、なんか特別なんです。
ぼくにとって、「新宿鮫」という作品は。 |
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＜次回へ、つづきます＞
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