第2回 お妾さんという覚悟。
シェフ
みんなはこの「昭和」の
リアリティはどうだった?
山下
僕はこのお話の終わりごろが
ちょうど生まれた年なんですよ。
昭和37年生まれなんです。
あやや width=
じゃあ三谷さんと同じぐらいですね。
山下
三谷さんは昭和36年生まれですね。
シェフ
あ、じゃあ結構リアル?
山下
そのお妾さんみたいなところは
まわりにいなかったから知らないけど。
シェフ
ぼくは昭和41年生まれなんだけど、
伯母‥‥母の姉で、一家の長女である
大正生まれの伯母が、
まさしく柴咲コウちゃん演じる
政子のような人生だったんです。
あやや width=
お。
ゆーないと
うーん!
シェフ
一生それで暮らした人です。
まだ存命ですが、
今は、あの、介護施設に入って
とってもニコニコして
暮らしています。
あやや width=
写真を見せてもらったことがあるんですが
とてもきれいなひとですよね。
シェフ
だんなさんになる人とは、
大陸で出会ったんです。
スガノ
大陸で、っていうのがもう時代でしょ。
あやや width=
上海とか、満州とか?
ゆーないと
大連とか?
シェフ
満州でとある大会社の支店長と
恋仲になるんですけど、
彼には日本に妻と子供がいたんですよ。
ですが、きっと、
そういう時代だったんですね、
男に甲斐性があり、
うちの伯母はそれをよしとした。
で、まだちいさな妹や
弟たちもいたんだけれど
私はこういうふうに生きるからと宣言して
ほんとにその通りに生きた。
そういう人が僕の大好きな伯母におりました。
なので、ある意味、このものがたり、
すんなり、とてもすんなり
受け入れました。
スガノ
わたしもその伯母さまにお会いしたんだけど、
ほんとうにチャーミングな人だった。
美人なのになんで結婚しないのって
みんなに聞かれちゃうから、
いいなずけが学徒出陣で死んじゃったのよ、
でもわたしは待っているのって、
そういう方便をね(笑)、考えて、
話しているうちに。
シェフ
だんだんそれがね、
自分の中で本当になっちゃって、
『聞け、わだつみの声』とかをね、
終戦記念日にテレビで特集とかすると、
「ああ、あの人は今、どこにいるのかしら」
って、ボロボロボローっと
泣いたりする(笑)。
スガノ
「ちょっと現実と想像の
 区別がつかなくなっちゃってさ、
 泣いちゃうのよねー!」なんて。
あやや width=
えー!
シェフ
ぼくがおじさんと呼んでいた人は
人のいい人でハンコ1つで失敗して、
東京から離れた片田舎に引っ越すんです。
のちに政治方面の人となって、
子供たちを立派に育てる。
正妻さんがお亡くなりになったとき、
その子供たちは、うちの伯母に
後妻さんにぜひ来てくださいと
お願いしたんだそうです。
親父1人で田舎暮らしは困るだろうからと。
でも伯母は
プライドがあったので断ったんですよ。
ゆーないと
へえー。
シェフ
私はそのために
今まで待ってたわけじゃありませんと。
あやや width=
あー。
シェフ
でも懇願されて、
じゃあお手伝いとして
入りましょうと言って、
住み込みという名目で
いっしょに暮らしはじめるんです。
おじさんは「籍を入れてやるぞ」と、
そういう言い方するんですね。
言うんだけど、最後まで断って。
あやや width=
へえ、かっこいい。
シェフ
かっこいいでしょ。
後で伯母に聞いたらね、
まさか一緒に暮らせるとは
思わなかったって。
とても嬉しかったって。
うーん。
シェフ
ところがすぐおじさんが倒れるんですよ。
あーっ。
シェフ
骨折、入院、退院繰り返して、
酸素ボンベを横に置いての暮らし。
山を降りたところに病院があって、
そこと行き来して、亡くなるんですね。
で、でもね、まさか自分が
看取れるとは思わなかったって言ってた。
あやや width=
あー、いい話だ!
シェフ
やっと自分のものになったのかもって
そのとき思ったらしいんですけど。
あやや width=
ああ、なるほど。
シェフ
まあ、そんな伯母がおりまして。
彼女も、気丈で、そしてとても明るい人。
政子さんのように。
あやや width=
そう、政子さん、
ひじょうに明るいですよね。
スガノ
家族も全員明るいのね。
シェフ
あの、裏で生きる‥‥、何て言うの、
裏といったらあれだね。
山下
日陰?
シェフ
そう、日陰の身って言うじゃないですか。
スガノ
うん。
シェフ
でもね、実際は、
僕がこの柴咲コウさん演じるお妾さんに
ものすごくリアリティを感じるのは、
その伯母のほんとうに根っから明るい性格と
自分の運命をまるごと受け入れたおっきな器量が
ものすごくリンクしたからなんです。
あやや width=
ねえ。
スガノ
伯母さま、崖の上の、ちょっと傾いたお家が、
旦那さんを看取られたところなんですよね。
シェフ
そうそう。
スガノ
わたしがお会いしたときも
そこに住んでらっしゃって、
すごい危ないし、
崖上ってかなきゃいけないし、
引っ越したらどうですかって
みんなが言ったんだけど、
あたしはこの家と一緒に
落ちてもいいんだよって、
すごい真顔でおっしゃってた。
あやや width=
ああ‥‥。
ゆーないと
えー、素敵。
スガノ
すごいなあと思って。
あやや width=
でもやっぱり、その、よっぽどの、
家が落ちてもいいのよって言うぐらいの
覚悟がやっぱり要るんですね。
シェフ
まだ女学生だったような弟、妹たちの前で、
一流の会社に勤めている長女が、
私、一生、お妾さんでいくからねって
宣言したんだものね。時代かな。
あやや width=
時代だし、相当な覚悟ですよね、
やっぱりもう。だから籍も、
入れてやるって言われても。
‥‥すごい。そんな覚悟を、
あなたは今持って
何かをしていますかって感じ。
全員
(笑)。
シェフ
すっかりうちの伯母の話になりました。
話を八女家に戻しましょう。
(つづきます!)


今回の感激団メンバー
darling 山下 スガノ
あやや  ゆーないと  

感激団による『わが家の歴史』の
登場人物と、おおまかなあらすじ。
くわしくは、こちら









4月9日(金)10日(土)11日(日)
夜9時から、3夜連続放送。
キャスト:
柴咲コウ・佐藤浩市・松本潤
佐藤隆太・堀北真希・榮倉奈々
長澤まさみ・大泉洋・玉山鉄二
山本耕史・鈴木砂羽・加藤清史郎
高田純次・天海祐希
富司純子・西田敏行
役所広司(声の出演) ほか
脚本:三谷幸喜
演出:河野圭太
音楽:服部隆之
エンディングテーマ:
 中島みゆき「時代」