episode5. 本物のCIAが、ドラマのPRに登場?
ほぼ日
海外ドラマの脚本って、どれも、
とんでもなく練られてるじゃないですか。
「こんなのどう考えたんだろう」と思うような
シチュエーションとか、ストーリーとか。
あれだけの完成度のものを作れるのは
どうしてなんでしょう。
ジョージ
だって、海外ドラマって、
脚本家も個人じゃなくてチームでしょう?
杉本
はい、10人以上でやっている作品もあります。
専門家もついてますし、
お金でなんとかする場合もあります。
『ブレイキング・バッド』の場合は
プロデューサーのヴィンス・ギリガンが
何人もの脚本家とともに、ものすごく時間をかけて
シナリオを相談している様子が、
DVDパッケージのおまけになってます。
ほぼ日
監督も、1話ごとに替わるんですか?
原園
毎回替わりますね。
全6シーズンの『ブレイキング・バッド』の場合、
数えてみたら25人の監督がいました。
杉本
ドラマはわりとそうですね、
拘束時間がすごいですから。
たぶん『トゥルー・ディテクティブ』の
キャリー・フクナガが
全8話すべてをまるまる監督したのが、
かなりめずらしい例だと思います。
トゥルー・ディテクティブ─二人の刑事 
(2014、全8話)

アメリカ南部のルイジアナ州を舞台に、
地元の刑事マーティンと、
他州から転勤してきた刑事のラストが
17年の歳月をかけて連続殺人事件の真相を
追跡していくミステリードラマ。
沈黙が多く取り入れられた静かなドラマで、
捜査の過程で、貧困や差別、宗教、政治など
平凡な田舎町に隠された日常の深い闇が
次第に浮き彫りにされていく。
脚本はニック・ピゾラットがひとりで手がけ、
全8話をキャリー・ジョージ・フクナガが
ひとりですべてを監督した。
原園
だからきっと、基本的には
全体のプロデュースと脚本がいいんですよね。
誰が撮っても同じクオリティで作れるように
徹底的に作り込んでいるんだと思うんです。
『ハウス・オブ・カード』だって
後半は、ジョディ・フォスターやロビン・ライトが
監督をしたりしてますから。
杉本
あと、アメリカは「いい作品ありき」で、
おもしろい脚本を書く人が、
すごく活躍の場を与えられるんです。
ほとんど無名の若者が書いたドラマが
採用されるケースもいっぱいあるらしくて、
そのことも、脚本の質が高くなるのに
貢献してるかもしれません。
ほぼ日
そっか、それはいいですね。
原園
そして、これは別の話ですけど、
海外ドラマはPRのやり方もすごいんですよ。
年末にHuluで配信をはじめた
『ザ・ブック』というドラマがあるんですね。
杉本
あ、『ザ・ブック』!
これもすごくおすすめです。
ほぼ日
どんなドラマなんですか?
原園
毎日、全世界の危険な事件の情報を集めて、
アメリカに対して危険度の高いニュースの
トップテンを作っているCIAの部署の話なんです。
その危険リストが毎日
「ザ・ブック」にまとめられ、
担当者が朝、大統領のところにそれを持っていき
「これがいちばん危険ですが、どうしましょう」
などと相談し、軍を動かすという話なんですね。
「もしかしてほんとうにある部署なのかも?」
って感じなんですけど(笑)。
ジョージ
うん。そして大統領に
「本日のおすすめメニューはこちらです。
 どれになさいますか?」
とやる立場の女の人が主人公なんだよね。
ザ・ブック/CIA大統領特別情報官
(2014-現在。シーズン1が最新)

日々起こるさまざまな事件の中から、
アメリカにとってもっとも脅威となるものを見極め、
大統領に毎日報告するCIAの事件簿「ザ・ブック」。
トップCIAアナリストのチャーリーは、
その「ザ・ブック」に記す内容の決裁者。
テロリストにより殺された自らの婚約者が
大統領の息子であったことから、
大統領とも個人的に近しい関係にあったチャーリーは
公私ともに複雑な事情を抱えながらも国を守り、
大統領に仕え、婚約者の死の謎を明らかにしていく。
原園
で、「ドラマではこういう話もあるよな」
と思ってたんですけど、
びっくりしたのはCIAがツイートで、
「『ザ・ブック』はすごくリアルでおもしろい」
とツイートしてるんです。
ほぼ日
本物のCIAが?
原園
ええ、CIAの公式アカウントが。
ジョージ
うわぁ、それすごいね。
原園
しかも、その公式アカウントが
さらにこうツイートするんです。
「『ザ・ブック』はすごくリアルだけど、
1個だけ違う点があります」と。
杉山
え?
原園
「‥‥何が違うかと言うと、
「いまは『ブック』じゃなくて、
『タブレット』です」って。
一同
(笑)
原園
でもそれで終わりじゃなくて、
そのCIAの公式アカウントが
コメントと一緒に、オバマ大統領が
タブレットを使って
『ザ・ブック』を実際見てる写真を、
ツイッターに上げるんですよ。
ジョージ
ひゃあ。桁違いだわ。
原園
普通に考えたら、ありえないですよね。
だから、たぶんCIAとドラマの間に
仲介者がいると思うんですけど、
そのツイートを見たとき、
アメリカはすごいところまで行ってるな、と思いました。
ほぼ日
そういえば、たしかオバマ大統領も
ドラマ好きなんですよね?
杉山
そうです、そうです。
◎オバマ大統領はドラマ好き

オバマ大統領はドラマファンとしても知られる。
音楽ドラマ『glee/グリー』の出演者たちを
ホワイトハウスに呼んでライブをしてもらったり
『ハウス・オブ・カード』について
「ツイッターでネタバレを書かないでほしい」と
ツイートしたりした。
杉本
だけど、我が国の安倍首相も
海外ドラマ好きを公言してますよね。
政治家がドラマ好きを言うのって、
何か理由があるんですかね。
ジョージ
実はドラマに出たかったりして(笑)。
杉本
あ、出たいのか(笑)。
杉山
若者に政治に興味を持ってほしいから?
ほぼ日
それはあるかもしれないですね。
原園
だけど安倍首相は
政治ドラマの『ハウス・オブ・カード』を見て
「日本と似てるな」とか、
コメントしないですね(笑)。
ほぼ日
そんなコメントが出たら、
きっと大騒ぎに(笑)。
◎安倍首相のコメント

‥‥と、そんな話の出た座談会のあとの
2015年4月末、
安倍首相はオバマ大統領主催の夕食会で、
「実は『ハウス・オブ・カード』に
 夢中になっているんです」と告白。
続けて、
「わたしはこのドラマを
 副総理(麻生太郎氏)には
 見せないようにしようと思っています」
とジョークを飛ばし、会場を沸かせた。

さらに麻生太郎氏はその後、
この件について
「アメリカ議員3人くらいから
 電話がかかってきたが、
 このドラマを見たことないから知らない」
と苦笑まじりにコメントした。
杉本
実はぼく、『ハウス・オブ・カード』の
DVDが完成したときに、
いっぱい政治家の人たちに送ってみたんです。
だけど、何も返答がなかったですね。
原園
さすがに日本だと、政治家の人から
コメントをもらうのは難しいでしょうね。
そして、もしあのドラマの
意地悪な世界をそのままやってたら、
かなり怖い(笑)。
杉本
『ハウス・オブ・カード』はもしかしたら
政治家の人たちより
官僚の人たちに良いドラマなんですかね?
ジョージ
「なるほど、こうやって法案を通すんだ」
みたいな?(笑)
原園
あと『ハウス・オブ・カード』は
会社の経営者にもいいかもしれないですね。
昔は経営者が「徳川家康」とかの歴史書を
経営の参考にしてたけど、
最近はドラマに変わってたりして。
ほぼ日
たしかに海外ドラマって
さまざまな人間関係の集積だから、
いろんな立場の人に役立つ部分は、
そうとうある気がします。
ジョージ
うん、それはそうだと思う。
(つづきます。)
うれしいことに、連載開始とともに、
たくさんのかたによるおすすめ海外ドラマ情報が
ぞくぞくとメールで届いています。
そこで、突然ながらみなさんからのメールを
一部ご紹介させていただくことにしました。
担当は「ほぼ日」の海外ドラマファンの
モギ&田中です。
面白い企画を有難うございます。
ただ「欧米ドラマ」がテーマなので、ちょっと残念。
アジアドラマにも、韓ドラに限らず
おもしろいものがたくさんあるんですよ~!
わたしのおすすめは、中国の『小児難養』。
「80后」(1980年以降に生まれた世代)が結婚し、
子供が生まれ‥‥でも今の日本と同様に
自分のことだけを考えて育ってきた世代だから、
子供が生まれて思ったように生活できなくなり、
いろんなことにぶち当たって
悩みながら成長していく物語で、はまりました。
 (ちゃんず)
たしかに、今回は欧米ドラマですけど、
アジアの海外ドラマもおもしろそうですよね。
韓国のものに限らず、
おもしろいのがいろいろある、とは
聞いたことがあります。
これは韓国ドラマですけど、個人的に
『わたしの名前はキム・サムスン』という作品を
強烈におすすめされたことがあります。
あまりに強くおすすめされたので、
いつか見たいと思っています。
わたしも『パン屋の職人キムタック』
だったかな‥‥
(正式タイトル:製パン王キム・タック)
すごくおすすめされたので、気になってます。
気がはやいですが、さらなる海外ドラマ座談会、
またできたらいいですね。
私がいま見ているものの一つが、
「ハワイ5-0」(ハワイファイブオー)です。
ドラマとしておもしろいのはもちろん、
毎回ハワイへ行った気になれます!!
(ヒロミ)
「ハワイ5-0」は‥‥えーっと、
「ハワイの美しい風景をバックに、
 特別捜査班『FIVE-0』が
 凶悪事件に挑むアクションドラマ」
なのだそうです。
美しい景色と凶悪事件のギャップが
絵になる感じで良いのではないでしょうか。
旅行気分が味わえるドラマって、いいですね。
ハワイ旅行に行ったことがある人なら、
「あそこ行ったな‥‥」とかも
たのしめそうです。
そういうドラマでいえば
わたくし、かなり昔に放映されていた
「特捜刑事マイアミ・バイス」 を
おすすめします。
お馴染みの観光地が続々登場して、
そういった部分もたのしかったりしました。
個人的には、タイのチェンマイを舞台にした
海外ドラマがあれば、
ぜったい見ちゃうと思います。
かつてはビバリーヒルズ青春白書の
ディラン(ルークペリー)にはまり、
現在は「パーソン・オブ・インタレスト」の
ジョン・リースにはまっています。
でも海外ドラマで一番最初は
大草原の小さな家のお父さんに憧れてたような‥‥。
(mi-yon)
このかたのはまってきた人たちを
検索してみましょう(ぱたぱた)
おお‥‥このかたはどうやら、
正統派二枚目の俳優がお好きなようですね。
なるほど、こういった感じをお好みでしたら
次に見るドラマとしては
「ホワイトカラー」が
いいのではないでしょうか。
FBIモノですが、主人公がイケメンです。
そういうものですか。
ええ。しかも「ホワイトカラー」には
ビバリーヒルズ青春白書に出ていた
悪女のバレリーが、
刑事の妻役で出てるんです。
たしかに別のドラマに出ていた役者さんが
登場するのって
「あ、また会えた!」みたいな感じで
嬉しいですよね。
そうそう。
ぞくぞくといただいているメール、
すべて目を通しておりますー。
みなさん、ありがとうございますー!

(コラムも、つづきます。)

2015-06-15-MON