──

これ観たいなあと思って観た映画や
テレビドラマに、
村上さんが出演なさっていることが、
最近、多くて。

村上

本当ですか。

──

町田康さんの小説が原作の
映画『パンク侍、斬られて候』には、
もっと出てほしかったです。

村上

ありがとうございます（笑）。

──

名物編集者の末井昭さんの自伝を
映画化した
『素敵なダイナマイトスキャンダル』
では、はっきり言って、
途中まで
村上さんだと気づきませんでした。

村上

ああ、それはうれしい感想です。

──

末井さんのお父さんの役でしたが、
役作りでしょうけど、
おなかも、ぽっこりされていたし。

村上

夜中に菓子パン食べて出しました、腹。

──

それと、テレビ東京のドラマには
『山田孝之のカンヌ映画祭』
『銀と金』
『バイプレイヤーズ』
と、立て続けに
出演されてらっしゃいましたよね。

村上

『山田孝之のカンヌ映画祭』と
『銀と金』は
あちらからのオファーでしたが、
『バイプレイヤーズ』には、
頼み込んで出してもらいました。

出演されているみなさんが大好きで、
どうしても出たかったんです。

──

出演作の数自体、多いと思いますが、
ご自身が「呼ばれる理由」というのは、
ご自身では、どう思われていますか。

村上

決まりきったイメージがないんですよ。
僕には「これという役」がないので。

──

ああ‥‥。

村上

村上淳と言ったらこの役だよね‥‥
というのが、ないんです。

で、そのことは、逆に言うと、
キャスティングする側にしてみたら、
どんな形にもできるだろうと。

──

なるほど。

村上

実際『銀と金』の船田という元検事と
『素敵なダイナマイトスキャンダル』
に出てくるパパ‥‥
妻にダイナマイト自殺されるお父さんに、
共通点なんて、ないですもん。

監督や台本が望む形に、なってるんです。

──

真っ白い狂人を演じた『莫逆家族』では、
村上さんの演技を
本当に恐ろしいと思いましたが、
ヨガの映画では、一転やさしいゲイ役で。

村上

自分が持ってる、
つまらない「主観」ってありますよね。

そんなものを、
めちゃくちゃに砕いてほしいんですよ。

──

役柄に？

村上

演技にしても、モデル上がりで、
きちんと学んだ経験もないわけですから、
その部分の引け目が正直あるし。

──

引け目。

村上

劣等感？

──

あの、映画の先輩に教えられ育てられて、
若い人のために
質問大会を開いてしまう村上さんですが、
仲のいい俳優さんと、
演技の話をすることもあるんでしょうか。

村上

ほとんどないです。

──

あ、ないですか。

村上

ないですね。

いろんな俳優に会って、
映画論や演技論を戦わせるような場所に
顔を出すようなことも
したらいいのかもしれないけど、
それは、あんまり気がすすまないんです。

──

そうなんですか。

お酒とか飲んで演技論を‥‥みたいな、
そういうことは。

村上

同業者‥‥つまり俳優と
酒場で演技論を語るみたいなことは、
ほとんど、したことがないです。

──

それは、なぜですか。

村上

うーん、うまく言えないですが、
会うならカメラの前で会えばいいって、
思っているのかもしれないです。

──

撮影の現場で。

村上

そう、本番でね。酒とか別になくても。

もちろん、誰か俳優と仲良くなって、
ふだんから
いいコミュニケーションが取れていて、
あいつはこういうやつだからと、
あの子はこんな子だからと、
そういう雰囲気の中で芝居をやったら、
楽しいとは思うんです。

──

ええ。

村上

でも、カメラの前では、
そんなことは関係ないというか‥‥。

せっかく恋に落ちたり、
ときには殺し合ったりとかもするんです。
「はじめましての人」
のほうが、おもしろくないですか。

──

どう出るか、わかんない人のほうが。

村上

仲良くやるのもいいんだけど、
「いいじゃん、別に。本番で会えば」
って、僕はそう思っています。

──

なるほど。

村上

縁があったら、
どこかのカメラの前で会うでしょうし、
台本という設計図をいただいて、
同じ作品の中、同じゴールに向かって、
お互い一生懸命につくりあげる、
それが
たったワンシーンの仕事だとしても、
ひとつの作品に関わった人間たちが
ぜんぶ終わったあとに集まって、
打ち上げで祝杯を上げて、サヨウナラ。

そういうほうが、僕は好きです。

──

そうなんですね。ちょっと意外でした。

なぜだかわからないけど、
熱く語るイメージがありました（笑）。

村上

俺が俺がって人間ばっかりですから。
俳優って、良くも悪くも。

うるさいんです、たくさん集まると。

──

はい（笑）。

村上

でも、同業者意識は強いんですよ。

これはきれいごとじゃなく、
どの俳優にも、
いい作品にめぐり合ってほしいし、
成功してほしいと思います。
それは、もちろん、自分を含めて。

──

そうですか。

村上

そのためにはやっぱり、やめないこと。

マンガの『スラムダンク』に出てきた
安西先生じゃないけど、
諦めないでいる限り試合は終わらない。
続けていけるわけです。

──

バスケットボールを‥‥俳優を。

村上

諦めたら、そこで終わりなんですよね。
だから、やめてほしくないんです。

──

どの俳優さんにも。

村上

僕は、何があっても続ける覚悟だし、
オファーが来なくなったくらいじゃ
諦めないし、辞めません。
泥すすってでも、という気持ちです。

だから、他の人たちも、
やめずに続けてさえいてくれるなら、
いつか、どこかのカメラの前で、
会えるかもしれないじゃないですか。

＜つづきます＞

2018-08-23-THU