もくじ
第1回本当は、いろいろ話したかったよね 2019-02-05-Tue
第2回最初は、周りの人が面白がってくれた 2019-02-05-Tue
第3回10代のころの感受性 2019-02-05-Tue
第4回サル山のボス 2019-02-05-Tue
第5回不幸になる気はしないです 2019-02-05-Tue

漫画家・イラストレーター・たまにデザイナー。
「アユム」と読まれがちな「アユミ」です。女子バスケの漫画を描いています。

隣人は、芸の肥やし

担当・歩

第3回 10代のころの感受性

糸井
いろんな人のモノマネをしているのに、
どうして声が似るのっていうのは聴かれたことある?
清水
ああ、ない。どうしてだろう(笑)。
糸井
おかしいよね。声が似るってさ。
清水
本当だ。しかもそれで生計立ててるってね(笑)。
糸井
(笑)。つまり、しゃべりの癖が似るはできるよ。
要するに、似せるんだろ?
で、ここがこうなんだなというのを再現してるわけでしょ?
耳コピしてるわけでしょ?
清水
そうそうそう、うん。
糸井
それはできるんだけど、声の質まで…
だってユーミンと矢野顕子って、
本人同士は似てないじゃん。
清水
うん、似てないですね。全然違う(笑)。
糸井
どうしてあなたが挟まると(笑)。

清水
(笑)。多分、本当にユーミンさんのモノマネして、
矢野さんのモノマネしてだったら、
あ、似てるって錯覚するけど、
ユーミンさんやって、ここにユーミンさんが来て一緒に歌ったら、
全然違うってわかると思いますよ、多分。

糸井
でも、近いことやったことあるでしょう?
矢野顕子とはやってますよね。
清水
うん。そうですね、ユーミンさんとやったときも、
ちょっと似てるなと思った(笑)。
糸井
あるよね。ほら。
清水
やっぱりすごく好きだと‥‥自分ではわかんないな。
どうしてなんだろう。
糸井
どうしてなんだろうね。
清水
うん。でも、私も松村さんもそうですけど、
あんまり自分の何か表現したいものがない人が得意かもね(笑)。
「私の歌を聞いて」って気持ちに全然ならないけど、
「私が演じる誰かを聞いて」っていう気持ちにはすごいなる。
糸井
その人の代わりに歌ってる(笑)。
清水
そう、「その人の代わりやるから、こっち聞いて。
面白がって!」っていうのは人一倍強いと思う。
糸井
ああ。だって、あ、そうだ、井上陽水さんもやったよね。
無理だろ、普通に考えたら(笑)。
清水
今考えたらそうだね(笑)。
糸井
清志郎をなんとかしちゃったもんね。
清志郎の初期と今とでは、圧倒的に今のほうが似てるよね。
それって、改めて自分では考えたことはない?
清水
でも、モノマネしてる人ってみんなそうだけど、
私も10代のときに影響された人止まりで、
30代、40代超えてからは、増えたレパートリーっていうと
瀬戸内寂聴さんぐらいで(笑)
糸井
ということは、例えば今流行ってる、
若い女性歌手のモノマネをしなさいって言われても、
そんなに再現できないのかな。
清水
そうですね。よくわかりますね。
糸井
絵描きさんがね、例えば水の中に氷が浮かんでますっていう
スケッチとかを描く人は、描けるじゃないですか。
それは氷が見えてるから描けるわけですよね。
 
でも、ぼくらにはその氷が浮かんでるのが見えてないんですよ。
清水
そういうことですね。
糸井
うん。解像度が低いから、描きようがない。
清水
そうそうそう。本当確かに。
だから、安室奈美恵さんが引退するってときに号泣したりとか、
そういう人たちの気持ちに1回なろうと思ったんだけど、
やっぱりなれないんですよ(笑)。
糸井
その世代の清水ミチコがいたら、
安室奈美恵のコピーができてるんだろうね、きっと。
清水
うん、きっとそうだと思いますね。
糸井
つまり、10代のとき夢中になった人はできるってことは、
そのときは受け止める側の脳細胞がバッチバッチに‥‥
清水
そうそう。感受性が豊かだから、歌で泣いたりとかね。
一緒に喜んだりとかしてたのが、もうやっぱりこの年になると、
出ないんですよね、そういう歌手の人って。
糸井
脳がついてってない(笑)。
清水
多分、解像できないですね。
糸井
年とってから好きになった人っていうのはある?
清水
それはやっぱり瀬戸内寂聴さんとか、
山根会長とか(笑)。
糸井
山根会長(笑)。
清水
ああいうなんか、
面白がりましょうよっていう
気持ちはやっぱりありますから。
糸井
普通の人が意に介してないものを、
ちょっとピントを合わせて見てるんだよね、きっと。
だから、商売にするにはちょっと、本当は足りないでしょうね。
清水
ああ、そうですね。
糸井
ユーミンと山根会長を比べると、完成度が(笑)。
清水
全然違う違う(笑)。
糸井
でも、ベースになるユーミンは今でも聞きたい人がいるわけだから、
案外、浮世に流れなかったんですよね。
モノマネの人ってけっこう難しくてさ、
大ヒットが出たりすると、その人と共に消えるじゃないですか。
清水
ああ、本当だ。

糸井
でも、あなたの場合は、なんやかんやいって、
編集し直していくっていうか。
ユーミンはユーミンなんだけど、
もう1回、ここに置けば違って見えるとか(笑)。
清水
そうそうそう(笑)。
薄めたり、ごまかしたり。
糸井
それで武道館ができちゃうんだから。
清水
本当だね。私の好きなその桃井さんとか矢野さんとか
ユーミンさんの世代がまずキャラクターが強い
っていうのもありますよね。みんな知ってるし。
糸井
そうか、お客も濃いんだね。
好き度がね。
清水
うん、そうそうそう!

(つづきます)

第4回 サル山のボス