拍手で迎えてくれる人がいる限りはOKですよね。
担当・リコタカハシ
第３回 ぼくらには見えてないんですよ
- 糸井
-
矢野顕子にあって清水ミチコにないものは何なの？
- 清水
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あ、それは音感。
- 糸井
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音感、ああ。指の動きとかではなくて。
- 清水
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あ、指ももちろん。ピアノから何から、そうそう、音楽性。
- 糸井
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でも、二人とも同じ道にいることはいて、
矢野さんからしてみたら、振り向いたら後ろに清水がいた、ぐらいのところにはいるわけだ。
- 清水
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矢野さん？
- 糸井
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うん。
- 清水
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いない、いない。
全然レベル違う、それは。
- 糸井
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でも、遠くに見えるなっていうぐらいにはいるんじゃない？
ピアノ２台くっつけてふたりで曲やってたじゃないですか。
- 清水
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あれも、だから、矢野さんは一筆書きでササッと書いてるんだけど、私はそれを綿密に、どういう一筆書きをやったかっていうのをコピーしてコピーして頭の中入れて、さも今弾きましたみたいなふりをしてるだけで……。
それはやっぱりすぐわかりますよ。全然違う。
- 糸井
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思えばそれもさっきの、
瀬戸内寂聴さんのものまねをやるときと同じともいえるね。
「あなたのやってることはこう見えてますよ」
っていうことだよね。
- 清水
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あ、そうですね（笑）。それだったらうれしいね。
- 糸井
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でもふたりで普通にやれるじゃないですか。
矢野顕子さんと清水さんと。
- 清水
-
いや、そうでもないです、やっぱり（笑）。
嫌われたくないっていうのがすごい強過ぎて、
よく噛む、本当に（笑）。
- 糸井
-
本当に？（笑）
- 清水
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普段もっと私面白いんですけどねえって思いながら、
こうやって自分をひっぱたくんだけど、何も出てこない（笑）。
- 糸井
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どうして声が似るのっていうのは聴かれたことある？
- 清水
-
ああ、ない。
どうしてなんだろう。
- 糸井
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おかしいよね。声が似るってさ。
しゃべりの癖はできるよ。要するに、似せるんだろ？
ここの癖がこうなんだなとかいうのを耳コピして再現してるわけでしょ？
- 清水
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そうそうそう、うん。
- 糸井
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それはできるんだろうけど、声の質まで。
だってユーミンと矢野顕子、似てないじゃん。
- 清水
-
うん、似てないですね。全然違う（笑）。
- 糸井
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どうしてあなたが挟まると似るんだろう。
だって、あ、そうだ、井上陽水さんもやったよね。
- 清水
-
うんうん。
- 糸井
-
無理だろ、普通に考えたら（笑）。
- 清水
-
今考えたらそうだね（笑）。
- 糸井
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ものまねする人のレパートリーについて
改めて自分では考えたことはない？
- 清水
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10代のときに影響された人が多いかもしれない。
そこ止まりで。
30代、40代超えてから増えたレパートリーっていうと、瀬戸内寂聴さんぐらいで（笑）。
- 糸井
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ということは、今例えば仮に西野カナさんのマネしなさいって言われたら、西野カナさんのことがそんなによく聞こえないんだね。
- 清水
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そうですね。
よくわかりますね。
- 糸井
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例えば水の中に氷が浮かんでますっていうスケッチとか、
絵を描く人は、描けるじゃないですか。
それは絵描きさんにはその世界が見えてるから描けるわけですよね。
- 清水
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うん。
- 糸井
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でも、ぼくらにはその氷が浮かんでるものが見えてないんですよ。
- 清水
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そうね。
- 糸井
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うん。解像度が低い。
- 清水
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そうそうそう。
- 糸井
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だから、描きようがない。
- 清水
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描きようがない、そうそうそう。本当確かにそう。
だから、安室奈美恵さんがやめるっていうときに号泣したりとか、そういう人たちの気持ちに１回なろうと思うんだけど、やっぱりなれない（笑）。
- 糸井
-
その世代の清水ミチコがいたら、安室奈美恵さんのコピーができてるんだろうね、きっと。
- 清水
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うん、きっとそうだと思いますね。
- 糸井
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つまり、自分が若いとき夢中になった人のものまねができるってことは、そのときは受け止める側の脳細胞がバッチバッチになっていて。
- 清水
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そうそうそう。感受性がもう豊かで。
歌で泣いたりとかね、一緒に喜んだりとかしてたのが、
もうやっぱりこの年になると出てこないんですよね。
- 糸井
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年とってからでも好きになった人っている？
多少でも。
- 清水
-
だから、瀬戸内寂聴さんとか、山根会長とか（笑）。
- 糸井
-
山根会長（笑）。
- 清水
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面白がりましょうよっていう気持ちはやっぱりあるから。
- 糸井
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あのへんは、普通の人が意に介してないものを、
ちょっとピントを合わせて見てるんだよね、きっと。
- 清水
-
あ、そうですね（笑）。
