もくじ
第1回「どうして小説を書いたんですか?」 2017-10-17-Tue
第2回「書き残すとうれしい」のは、なぜだろう? 2017-10-17-Tue
第3回捨てる、思い出す、大人になる 2017-10-17-Tue
第4回燃え殻さんの「リズム&ブルース」 2017-10-17-Tue
第5回かさぶたと共に生きること 2017-10-17-Tue

1994年生まれ。ほっかいどうの田舎そだち。
出版と映画のしごとをしながら、勉強をしています。
好きな曲はベベチオのブラウニー、好きな映画はぼくの伯父さん、すきな楽器は小太鼓です。

ボクたちはみんな大人になれなかった</br>スペシャルトーク 銀座LOFT編

ボクたちはみんな大人になれなかった
スペシャルトーク 銀座LOFT編

第4回 燃え殻さんの「リズム&ブルース」

糸井
何かをいろいろ集めてるよって話、
他の人から聞く側になったことある?
燃え殻
あんまりないかな
糸井
ない?自分が話す側だったんですか?
燃え殻
そうですね。
糸井
ああ。人に話を聞いてもらうって、
人間にとってものすごくうれしいことですよね。
燃え殻
そう。すごくうれしくなりますよね。
糸井
ね。あと見事な歌詞だと思うんだけど、
クレイジーケンバンドの「俺の話を聴け!2分だけでもいい」
燃え殻
いいですね。2分だけ(笑)
糸井
「貸した金のことなんかもういいから、俺の話を聴け」って、
あの曲はすごいこと言ってるけど、よく考えると
ブルースでよく歌われてるのはそういうことですよ。
「嫁がまた俺をろくでなしって言いやがったァ」みたいな。
あれも「俺の話を聴け」であるわけで。
燃え殻
あー。ものすごくコアな話なんだけど、
ちょっと自分とシンクロする部分を見つけちゃったりして
聴いてる方としても心地いいのかな。
糸井
しかも、似たような生活をしている人が聴けば、
それぞれが自分のお楽しみについて歌ったとしても、
周りはみんな「そうそうそうそう・・・・」
燃え殻
「俺のことを歌ってるんだ!」ってなるんだ。
糸井
うん。
こうしてブルースミュージシャンがやってきたことを、
今俺も繰り返してるのかな、とは思いますね。
燃え殻さんのあの小説も、けっこうブルースに近いですよね。
燃え殻
ああ、そうかもしれない。
糸井
ぼくがこの本の帯に
「リズム&ブルースのとても長い曲を聴いているみたいだ」
と書いたのは、そんな気持ちからなんです。
若いときの僕は、オーティス・レディングの
「ドック・オブ・ベイ」って歌が大好きで、
ああ、この歌ずっと聴いていたいなあと思ってたことがあって。
燃え殻
ああ、なるほど。
糸井
それはぼくがスナックでバイトしてたときだったので、
そのお店のジュークボックスで、知らない誰かが
「ドック・オブ・ベイ」をかけてくれると嬉しかったんです。
燃え殻
ああ、すげえわかる。
糸井
「リズム&ブルースのとても長い曲を聴いているみたいだ」
っていうのは、その若かったときの自分が
この小説をものすごくほめているつもりなの。
種明かし的にいうと。
燃え殻
すごくうれしいです。
糸井
あと、燃え殻さんの小説の中には
自分のための世の中じゃないところに
居させてもらっている感じがありますよね。
俺のためにあるわけじゃない町に紛れ込んでみたり、
俺のためのパーティーじゃないところにいたり(笑)
燃え殻
はいはい。なんかこう、
僕は「そこに所在がない」って場所で
ずっと生きているような気がしてて。
糸井
いる場所がない(笑)
燃え殻
はい。
会社自体も、社会の数に入っていない気がしてた。
で、その居場所がないっていう共通言語を持った人と・・・・
糸井
会いたいよね
燃え殻
そう、会いたい。いつも思ってます。
第5回 かさぶたと共に生きること