もくじ
第1回セットでなきゃ、だめなんです 2017-11-07-Tue
第2回『旅と音楽』がわたしに教えてくれたこと 2017-11-07-Tue
第3回旅の相談役、引き受けます 2017-11-07-Tue

音楽と旅行が好きなアラサー女子。地方で食べるおいしい食べ物とお酒が大好きです。

わたしの好きなもの</br>『旅と音楽』

わたしの好きなもの
『旅と音楽』

担当・蒼山静花

第2回 『旅と音楽』がわたしに教えてくれたこと


わたしが本格的に『旅と音楽』を楽しむようになったのは社会に出てから。
社会人になって、上京してひとり暮らしを始め、
仕事は忙しくてウィークデーは毎日終電帰り。
ライブに行くなんてもってのほか。

そんなわたしは、土日の休みに現実逃避をするように
音を探し求めて旅をするようになった。
休みの日に自分の好きな音が鳴る場所を聞きつけたら、
可能なかぎり駆けつける。
そんな暮らしをしていた。

旅をしていると、東京にいるだけでは得ることができない
さまざまな経験をすることができる。
『旅と音楽』がわたしにくれたもの。それはこの4つだ。
 

1.日本各地にたくさんの友人ができた

知らない土地に旅に行く。
当時流行り始めていたtwitterに、「今週は福岡に行くよ」と言うと、
福岡やその近郊に住んでいる『音楽』を通じて知り合った
フォロワーたちがその土地の名所や、定番のおいしい食べ物や、
さらには地元の人しか知らないような隠れ家的なお店まで教えてくれる。
わたしのその日の目的地であるライブ会場までの行き方も教えてくれるし、
その周辺の見どころや時間を潰す場所も教えてくれるのだ。

もちろん同じライブを観に来る予定の人とは会場で挨拶するし、
ライブ後に盛り上がったらそのまま打ち上げに行ったりもする。
そうやって会う回数を重ねていくうちに、
今度は『音楽』がその土地で鳴っていなくてもその友人に会いに行ったり、
結婚や出産のイベントごとがあったら、お祝いに駆けつけたりも
するようになった。

社会人になってから、友達をつくるってなかなか難しいのでは‥‥と
思っていたけれど、そんなことはなかった。
旅が、そして音楽がわたしにたくさんの出会いをくれたのだ。
 

2.人の数だけ『暮らし』があるということを知った

ライブをやる会場は必ずしも都市部だけでなく、
たまにものすごい辺鄙な場所で行われたりもする。
その土地に住んでいる人には失礼だが、
本当にライブ会場の周りに何もなく、
終演後には辺りは真っ暗闇という土地もあったし、
ライブ会場まで行くバスが1時間に1本しかなかったり、
車以外の交通手段がない山の上にある会場もあったりした。
なぜそんなところでライブをやるのだろう、と思いながらも
知らない土地にいくのは楽しいので、
好奇心からわたしは足を運んだりもするのだが、
現地に行くとそんな疑問はすぐに払拭される。

なぜなら、そこに『人の生活』があるからだ。

人が生活をしているから、人が集う場所が存在している。
そしてそこにパフォーマンスをしにやってくるアーティストがいる。
そういう場所では、こうやってたまに東京からアーティストが来て
ライブを行うこと自体が、街全体のイベントだったりもするのだ。
そういう土地で行われるライブは、自然と盛り上がるし、
『ライブ慣れ』していないからこそ、人々の純粋な感情が溢れ、
あたたかい空気が流れていたりもする。

そして、そんな街をいかにも旅人風な装いで歩いていると声をかけられる。
ライブの前後にごはんを食べに入った店で、
手慣れぬ様子で注文をしようとすると、手取り足取り教えてくれたりする。
そこから会話が始まって、ライブの打ち上げで来ているときは
本当ならばつい先ほど終わったばかりのライブの感想を
友人と興奮冷めやらぬうちに話したかったりもするのだけど、
酔っぱらったおじさんや、お店のおばあちゃんの昔話を
聞くことになってしまったりもする。

でも、それはそれで楽しいのだ。

東京で生まれ、神奈川で育ち、そして今も東京に住んでいるわたしは、
関東地方の、日本全体でいうと恐らく『都会』に分類されるであろう
世界しか知らない。
自分の知らない世界を覗き込むことができる貴重な機会なのだ。

海が近くにある街では知らない魚の名前をたくさん教えてくれたし、
方言のきつい地域では何か話しかけられているのだけど、
何を言っているのかわからないという、
テレビのなかでしか見たことがない光景に出くわしたりもした。
どこで飲もうか悩んでいたら、目の前の店から出てきたおじさんに
「この店のうまさは俺が保証する!」と言われ、
入ってみたら、ものすごいおいしいカニを食べることができたりもした。

今までに経験したことのない場面に遭遇することで、
わたしのなかで学生時代よりも着実に
『多様性を受け入れる』という感覚が
身についているような気がしている。
 

3.おいしいものを知った

『旅と音楽』を求めて出かけるときに、
わたしにとってもうひとつ欠かせない要素がある。
それは『食』だ。

「なんにもないよ」と言われるところにも、
なんだかんだ地元の名産品があったりする。
定番なものから、少しコアなものまで。

回を重ねて訪れる土地では、毎回違うものを食べるように意識している。
その季節、その月にしか食べられないものもあるから、
行く『場所』だけではなく、『タイミング』も大事になってくるのである。
昨年の冬に仙台に行ったときに、もう何年も食べてみたいと願いながらも、
今までずっとタイミングが合わずに食べることができていなかった
『せり鍋』にやっとありつくことができた。
何なら、せり鍋が食べたいがゆえに冬の仙台にライブを観に行く予定を
つくったぐらいの勢いだったので、感動もひとしおだ。

もしかしたら、地元の人からしたら
たいしたものではないと感じるのかもしれないけれど、
日々の生活のなかで目にしない食べ物に出会ったときの感動は
忘れられない。

ちなみに日本酒のおいしさに気付いたのも、
『旅と音楽』の体験をしている最中の高知県でだった。
おいしい食べ物とおいしいお酒のコラボレーションほど、
最高なものはないと思う。

 

4.人生が楽しくなった

こんなことを書くと「大げさな」と思われるかもしれないが、
まさに読んで字のごとく。
『旅と音楽』を楽しむようになってから、
わたしの人生は今まで以上に楽しくなった。

新たな友人との出会い、新たな世界との遭遇、新たな食べ物との出会い、
そして時には新たな音楽にも出会うことができる。

今まで20何年と生きてきたなかで、
『旅と音楽』を楽しむようになってからの自分が
一番活き活きとしているような気がするし、
人生を一番楽しいと思えているような気がする。

ちょっと辛いことが仕事やプライベートであったとしても、
ふと休みの日に現実から少しはみ出たところに飛び出すことで、
息が詰まっていた自分に深呼吸をさせてあげることができる。
外からの新鮮な空気を吸って帰ってくることで、
次また辛いことや嫌なことと遭遇してしまったとしても、
受け取り方が少し変わったり、場合によってはそれを辛いとか嫌だとか
思わないようになっていたりもする。

『旅と音楽』は、間違いなく
わたしの人生を良い方向に導いてくれているのだ。

第3回 旅の相談役、引き受けます