もくじ
第1回広げすぎていた、自分の冒険の地図。 2017-04-18-Tue
第2回苦手の看板を立てているのは、自分。 2017-04-18-Tue
第3回苦手でも、世紀の大恋愛でいいじゃないか。 2017-04-18-Tue

社会人5年目の27歳実家暮らし女性。なんでも省略する父親から、名前も略され、み(ぃ)と呼ばれています。趣味は野球観戦。

私の好きなもの</br>人の前で話すこと

私の好きなもの
人の前で話すこと

担当・みぃ

第2回 苦手の看板を立てているのは、自分。

中学・高校は、得意で好きな運動に没頭した。
人の前で話すことはなくなったが、
それはそれで、楽しかった。
小学生のときに感じた、
人の前で伝えようとすることで得られた、
あの内側から湧き上がる歓びを、
思い出すこともなかった。

苦手の看板は、立ち続けたまま存在感は薄れ、
私は、大学生、そして社会人になっていく。

いつしか苦手は、ただの便利な隠れ蓑に。

社会人になってからは、
人の前で話すことが、
仕事として出てくるようになった。

人の前に立つことから離れていたら、
話すときに、相手がよく見えるようになっていた。
相手の時間や、考えていることが気になり、
緊張をするようになった。
再び、苦手の看板の存在を意識するようになる。

‥だが、苦手の看板を取り下げる転機も、
ちゃんと訪れていた。

中小企業の社長が集まる会合で、
自分が担当するプロジェクトの説明をすることになる。

極度の緊張により、足や声が震えるばかりか、
用意した原稿の文字すら読めず、
もう、仕方なく、自分の言葉で話していた。

何と伝えたのか覚えていないぐらいだったが、
その後の反応から、
確かに伝わったことを実感した。

プロジェクトに対する会社の思いはもちろん、
私個人の思いをのせて、
自然とでてくる言葉にゆだねていた。
終わった後、小学生の時のジェスチャーと同じぐらい、
体の芯から溢れる歓びを感じた。

それでも、この機会を転機にはできなかった。

極度の緊張をするほど、
自分は話すことが苦手なのだと、
自分に言いきかせていた。
冒険の地図に書かれていた、
「苦手」の看板が立ち続けていることを、
敢えて確認するかのように。

小学校のささいな出来事から、
苦手という意識は、
いつしか便利な隠れ蓑にまで
なってしまっていた。

苦手だから。
自分の好きなものを守るために、
上手くいかなかったと思うときに、
自分を慰める言葉になっていた。

それでも、人の前で話すのが好きなんだ。

苦手って何だろう。
あの時、湧き出たと感じたものは何だったのだろう。

‥人の前に立つと、
一人の思いだったものを、
必死になって、伝えようとして、
言葉や体から、思いが溢れだしてくる。

その場にいる人たちの時間を
もらうことにはなる。
圧倒されながら、
いっぱいいっぱいになっても、
その場で表現することをやめなければ、
思いがけない言葉が転がってきたり、
紡がれたりすることもある。

言葉に体が反応して、さらに伝えたいことが
生まれてきたりすることもある。

その場にいる、誰か一人とでも、
表現を通じた理解や興味から、
繋がれる可能性も生まれる。

準備していた原稿から、
伝える言葉が離れていったときに、
何より幸せを感じる。
一緒にいる人たちと、言葉の響きを確認しながら、
その場を一緒に作り上げていけるときもある。‥

そこには、まだ見えていない、
冒険の地図が広がっているのだ。

苦手が、ただの隠れ蓑となっている看板なら、
その先に続いている道があること、
好きが広がっているということを、
まずは、認めればいいのだと思った。

(つづきます)

第3回 苦手でも、世紀の大恋愛でいいじゃないか。