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第0回街を歩くことが好きな僕の話 2016-11-08-Tue

都内ではたらく24歳の編集者です。人と話すことが好きです。

街歩きを好きになって、毎日に退屈しなくなった

街歩きを好きになって、毎日に退屈しなくなった

担当・早川大輝

「自分の好きなものについてエッセイを書く」

この課題に取り組むにあたって、まず自分の好きなものが何なのか、
ノートに書き出す作業をしました。


服が好き ニットが好き コートが好き スニーカーが好き シャツが好き
ネイビーが好き 白が好き 光が好き 木漏れ日が好き 知らない街が好き
見知った街が好き 人が好き 友達が好き 人の好きが好き 人の話を聞くのが好き
喋るのが好き 寝るのが好き 気だるさが好き 朝起きて何するか考えるのが好き
食パンの耳の丸さが好き めんどくさいが好き 休日が好き 日当たりの良い部屋が好き
考えるのが好き 好きなものを話すのが好き 笑うのが好き 笑わせるのが好き
文章を書くのが好き‥‥

しかし、書き出したらきりがなくて、ほんとうに困ってしまいました‥‥(笑)

好きなものがまとまらない。


僕は、考えごとは歩きながらする癖があるので、
普段から悩んでるときはよく歩きます。
家のなかでさえも、部屋をぐるぐる歩きながら考えごとをするほどです。

今回も例に漏れず、考えごとを整理するために歩きだしたのですが、
ものの30分くらいして、ふと「街歩きは好きだな」と気づきました。


ずいぶん回りくどくなってしまいましたが、僕の好きなものは「街歩き」です。


今回のエッセイにおいては、自分のなかでひとつ決めごとをつくりました。

それは、導入部分と全体の文章の手直し以外は、
実際に街を歩きながら書くこと。

僕が街を歩きながら、リアルタイムで思ったこと考えたことを、
形にしたいと思います。

それでは、全1回、お付き合いいただけると嬉しいです。
よろしくお願いいたします。

歩く場所はどこでもいい

よく、散歩が好きですと言うと、
「おすすめの街はどこですかー?」
と聞かれるんですけど、個人的にはどこでもいいなと思ってます。

おしゃれな街を歩くのも好きですし、地元を歩くのも好きです。
そしていま、僕は何度も歩いたことがあるはずの地元を歩いています。

遠くから、中学校のテニス部の掛け声が聞こえる。

この日は、秋なんて無かったんじゃないかってくらい急な冷え込みで、
景色も秋が足早に去っていったような、秋に取り残されたような、そんな様子。

近くを歩くおばあさんやおじいさんが、
「急に寒くなりましたね」
なんて立ち話をしているのを横目に、
一定のリズムで鳴っている靴音が心地いいなとか思いながら、歩いていく。

地元の道って、普段は最短距離を通るから
意外に通ったことない、知らない道がたくさんある。

そんな道を見つけると、「おっ」て思って
曲がってみた結果
地元なのに道に迷ったり。

そんな体験が新鮮で好きです。

僕は街歩きをしていると、よく野良猫を見つけます。
ふつうは近づくと怖がって、どこか隠れちゃうんですけど、

たまに、人に慣れているのか、こちらと一定の距離を保ちながらも
逃げないねこがいるので、
そういうときはこっそり後をつけます。

見知った街なら問題はないのですが、知らない街だとよくこれで帰り道が分からなくなります。

ねこに対して「してやられた!」と思う一方で、
どこか満足気な自分がいて、ほんとうに気持ち悪いと思います。

ちなみに、僕は帰巣本能のようなものが強いので、
どんな知らない街で道に迷っても、駅までは帰れます。勘で。

街を歩いて、見える景色

街を歩いているときに目に見える景色は、そのときの精神状況によって変わります。

僕はいまの会社に入社したとき、精神的に参ってた時期がありました。
いろいろなことを考える余裕がなく、
外に出る理由は、出退勤ともっぱらご飯を食べるときだけです。

ご飯を食べることを目的に街に出ると、自然とご飯屋さんばかりが目につきます。
だから、その頃の僕にとっては、会社の近くの街の景色はご飯屋さんしかなかったんです。

でもあるとき、気が滅入っているときは、外を散歩してみなよと言ってくれた人がいました。
「別にいいよ、この辺なんもないし」と思っていたものの、
言われるがままに、渋々外に出て、付近を散歩。

脇道に入ったとき、目を奪われました。

木々の間から光が漏れていて、
木漏れ日が、きれいだなって思ったんです。

大したことないように思えるかもしれませんが、
あのときの僕にとっては大したことだったんです。

だって、ご飯屋さんがたくさんあるとしか見えていなかった景色に、
こんなにも自然があったなんて知らなかったから。
木漏れ日がこんなにもきれいだなんて、知らなかったから。

こんな小さなことですが、涙が出そうなくらい感動しました。

人間の目は、見たいものしか見えていないんだなと実感しました。
もしかしたら、そのときに求めているものが、景色として目に映るのかもしれない。

その出来事は、散歩が、街を歩くのが好きになったきっかけです。

退屈なんて、するわけない

先日、所要のため午後に有給休暇をとりました。
すこし時間があったので、
散歩が好きになるきっかけになった「青山・渋谷付近」をふらふらと歩いて帰ることに。

いまの僕には、何が見えるのだろう。

見えたのは、人でした。

地元よりも比べものにならないほどたくさんの人が歩いている街で、
そのひとりひとりが、気になってしまった。

気だるそうに歩くサラリーマンを見て、何か嫌なことでもあったのかと理由を想像する。

平日昼間に笑顔で歩いている高校生を見て、ちゃんと学校行ってんのかなと心配する。

すれちがった人のファッションがとても似合っていると、いいなって思う。

どの街にも、そこにいるのは人で、そのひとりひとりに個性があって、
だから、人がとても好きだなと思います。

平日昼間の渋谷付近は、僕には眩しすぎましたが、
でも、こんなのこれからも絶対退屈するわけない。

どうやら僕は、街歩きを一生の趣味にできそうです。