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第0回 2016-11-08-Tue

長野県出身東京都在住。1981年生まれ。趣味は食べ放題です。クレープとカニが好き。

Tw:@yunico_jp

日本のいちばん西
与那国島の魅力

担当・永田ゆにこ

沖縄には、恩がある。
20代のころ、いろんなことに悩んで疲れていたとき、
社員旅行で、初めて沖縄の本島へ行った。
南国の空気、めずらしい食べもの、
きれいな海やいきものや草花たちに、
期せずして、とても癒されてしまい、
すっかりと元気になってしまったのである。
そして、そこから沖縄のことが大好きになった。

沖縄の離島はもっとおもしろい。
空気も文化も、もっと濃くて独特になる。
沖縄の空気をギュッとまとめて、
そこにそれぞれ違ったエッセンスを振りまいたような。
いくつかの離島も見て歩いたが、
中でも日本の最西端に位置する、
与那国島がいちばん好きになった。

今回は、恩返しのような気持ちで、
与那国島の魅力について書いてみようと思います。

わたしが好きなもの、いろいろあるけど、これはゆずれない。
沖縄の離島「与那国島(よなぐにじま)」が大好きだ。

与那国島は、さつまいもを横にしたような形の、
日本で一番西にある、沖縄の離島。
羽田から石垣空港へ行き、そこからプロペラ機に乗り換え30分ほどで着く。
石垣港から大きなフェリーに乗って行くこともできるが、
こちらはなんと、4時間もかかる。
石垣島より台湾の方が近く、晴れた日には台湾の影が見えるそうだ。

若き頃の父は、一人旅で北海道にある日本最北端へ行った。
大人になって一人旅を計画したとき、ふと父とは真逆に行こうと思った。
日本の一番南は沖縄、波照間島にある。
石垣島から波照間島への移動はフェリー。
波の荒い外洋を通るため、少しの雨や風ですぐに運休してしまう。
旅行中、弱めの台風と遭遇してしまい波照間島行きは断念。
石垣港で立ち往生をしていると、どうやら空の便は問題ないと知る。
最南端がだめなら最西端へ行ってみよう!と、
唐突に与那国島行きの飛行機に乗ったのが始まりだった。

与那国空港は小さく、滑走路が短い。
着陸時には体が大きく前へ傾くほど、飛行機のブレーキがきつい。
海に面した空港で、辺りは見渡す限り、海と山しかない。
借りたレンタバイクで島の外側の道をぐるりと巡ってみると、
小さな島なので1時間もかからず一周できてしまう。
行くも行くも、見えるものは海と山。
島内の約三分の二は緑地帯で、起伏が激しく高い山もあり、
ひとたび海の見えない場所へ入ると、まるで長野の山奥のようだ。

与那国島は観光がメインの島ではない。
島の主な産業は、カジキの漁業、サトウキビ農業などで、
大きなホテルもひとつしかなく、観光施設らしいものもあまりない。
住民の方々も観光客に媚びている印象がなく、
みな淡々と自分の生活をしながら、時々来る観光客を相手にしている。
目立ったおみやげやも、スーパーも、当然コンビニもない。

行くのも大変そうだし、観光メインという雰囲気の島でもないし、
この島のどこがそんなに好きなのかとよく聞かれる。
この島の魅力とは何だろう?

与那国島は島全体が、とにかくダイナミックでかっこいいのだ。
珊瑚礁から成っている波の穏やかなビーチが多い石垣島などと違い、
与那国島の外側は、切り立った岩によって断崖絶壁の箇所が多い。
海を覗き込むと、濃い青の大きな渦や白く高い波が見え隠れしている。
外洋に面しているので波は荒く、潮の流れも速く、少しこわい。
荒々しい波に削られてできた奇妙で神々しいいくつかの岩、
東には、日本で一番遅く日が昇る東崎(あがりさき)、
西には、日本で一番遅く日が沈む西崎(いりざき)。
西崎には日本最西端の碑があり、でっかい夕日が落ちてゆく。
いたるところに、小柄でおとなしい与那国馬という馬が放されていて、
悠々と草を食み、道路でものんびりと糞をしている。
島にあるのは、これらのいくつかぐらいである。
なのにただ歩いているだけで、「非日常」がすごく感じられる。
ひとつひとつが、どれもダイナミックなのだ。
壮大な草原が広がり、緑の先には青い空と海。
日本の多くを見たわけではないけれど、
こんなに「この世の果て」らしい場所もそうそうない。
観光客も多くはないので、
「いま、この瞬間、地球には自分しかいない」という気分になれる。
世界でひとりぼっちになってしまった、ちっぽけな自分ごっこ。
地球は丸く7割が海で、日が差せば緑が生え、それを食べる馬がいる。
毎日太陽は昇り、沈む。
東京で生活していると忘れてしまう、何十億年前から続いてきたこと。
それを、激しい波や巨大な岩や広い草原や高い山の景色で、
暴力的なまでに思い出させてくれるのが与那国島だ。

何べん行っても、毎回、島のすごさに圧倒される。
いっぺんに、ど迫力の「こんなところ、見たことない」が味わえる。
欲張りなわたしは、一度の旅行でたくさんの「非日常」を摂取したい。
雰囲気が、普段の生活から離れれば離れるほど良い。
東京から2000km以上も離れた与那国島は、
何もかもが非日常すぎて、「お得な感じ」すらするのだ。
ただそこにあるだけなのに、とにかくすごくてかっこいい。

時々、夏の台風が与那国島を襲うことがある。
電気が通じなくなったり、雨風で家や木が倒されたり、
島外との交通も遮断され孤立状態になってしまうこともある。
ほかにも、時々自衛隊のことで、話題になったりもする。
それ以外では、あまり知られていない島かもしれない。
のんびりとした時間が流れる、ぽっかりと海の上に浮かんだ、
ただのすばらしい島だ。
あの景色を想いながら、恩返しのような気持ちで募金をする。

実は今回、この課題にかこつけて、
与那国島へ一人旅をしようと目論んでいた。
あいにく都合が合わず、それは叶わなかったが、
現地へ行けば、島の魅力をもっと生き生きと書けると思ったのだ。
隙があれば無理やりにでも、機会を作って行きたいと思う。
そんな場所は他にはない。

昨日も今日も、東京に住んでいるわたしの上を通りすぎた陽は、
一日の終わりに、与那国島の西崎から見える海の先へ沈んでいく。
遠く離れた、ダイナミックすぎる小さな島が、
わたしが日本で一番好きな場所なのである。