糸井

これだけ「仕事が嫌い」とは言っても、
ぼくたちだって、
他人からみれば「よくやってるねぇ」って
思われるくらい頑張ってるのは、
どうしてなんでしょうね（笑）。

古賀

いや、ほんとに、そうなんですよね。
ぼく、3連休とかもらったとして、
たぶん半分以上は仕事のことを
考えてしまうと思うんですよ。
でも、それは
「ワーカホリック」とはちがうんです。

糸井

はい。

古賀

RPGのゲームをするのと似ている気がしていて、
はやくクリアしたいけど、
そこにたどり着くまでは地道で面倒くさい。
じゃあ、やっとの思いでクリアしたところで
大きな喜びがあるわけじゃないけど、
できないと気持ちがわるい。
なんていいますか、目の前になにか課題があったら
解かずにはいられない、みたいな。

糸井

それは、自分で会社という
チームをつくってから思ったことですか？

古賀

ええと‥‥いえ、昔から変わりませんね。
でも、以前はもっと、露骨な、
「出世欲」みたいなものがあったんですよね。

糸井

ひとりでライターをやっていたときのほうが。

古賀

はい。
ライターの世界でいちばんになるんだ、という。

糸井

いわば、永ちゃん（矢沢永吉）ですよね。

古賀

そうですね（笑）。
でも、そういう競争で消耗するのは、
なにかもったいないというか、
結局そのなかでしか物事をみていないので。
外の世界に目を向けた面白さっていうのを、
ようやく実感しつつある感じですね。

糸井

その意味でも、
チームをつくってよかったですね。

古賀

そうですね。
ほんとうに、はい。

糸井

ぼくも、たぶん、
おなじようなことだと思うんですけど、
誰かを競争で打ち負かしたというより、
「誰かによろこんでもらえた」っていう話が
聞こえてくるのが、大きいですねぇ。

古賀

うん、うん。そうですね。

糸井

あのね、昨日、
「おれは『気休めの鬼』をめざす」って
みんなのまえで言い切ったの（笑）。
気休めって、みんな悪くいうけど、
気休めあってこその人生だし、
気休めで元気になったらもうそれでいいんだ、と。

古賀

その通りだと思います。

糸井

巡業で街にやってきたお相撲さんを触って
よろこぶ人がいるわけですよね。
触ってなにになるわけじゃないのに（笑）。

古賀

でも、うれしいんですよね。

糸井

そうなんですよ。
最近の「ほぼ日」では、
自分たちが苗を植えるような仕事が増えていて、
その実った米やら果物やらを食べて
よろこんでくれる人がいるっていう
循環そのものをつくるようになってから、
飽きない面白さになりました。

古賀

もともとは、その「よろこび」がほしくて
やったことじゃないんですよね。

糸井

はい。
もともとは、ちがいます。
でも、解決してほしい問題があるからやる、
っていう形はとっているけれど、
問題がなくてもやりたいんじゃないかな。

古賀

あぁ‥‥なるほど。

糸井

おれが時計職人だったとしてさ、
近所の中学生の時計が壊れちゃったとき、
「おじさんは昔は時計職人だったんだよ。
　貸してごらん」って直してあげるように。
「どうだ！」って1回いわせて、みたいな（笑）。

古賀

よくわかります（笑）。

糸井

もうそれで、十分でしょう。
「おじさん、お礼に‥‥」っていわれても、
「あ、それはいらねぇよ」って（笑）。

古賀

そこは、「どうだ！」って
言わせてほしいですよね（笑）。

糸井

あの、つい、ぼくがいっぱい
しゃべってしまいましたが、
大丈夫でしょうか。

古賀

いえいえ、ありがとうございました。
はじめは「売れていて絶好調」という話から
だんだん「仕事が嫌い」という話になって
そのまま終わらないか心配でしたが（笑）。

糸井

よかったです（笑）。
ありがとうございました。

（おわります）