ふたりが語る、「いままで」と「これから」。

古賀: 吉本さんだったり、
あるいは矢沢永吉さんだったり、
糸井さんの中でヒーローのような人達がいて、
その出版のお手伝いとか、
糸井さんはされてきたじゃないですか。
その時の糸井さんの気持ちっていうのは、
俺が前に出るというよりも、
この人の言葉を聞いてくれみたいな感じなんですよね。

糸井: そうですね。
僕の本は、「とっても驚いたよ」とか、
「僕はとっても良いなと思ったよ」とか、
間接話法でできるんですね。
だから自分を前に出す必要は全くないんです。
古賀さんも、そういう仕事してますよね。
古賀: そうですね、今だったら、
いろんな出版社さんにも知り合いがいますし、
やりたいと言えばやりたい企画ができるような状態に
なったんですが、１０年前はやりたいと言っても
なかなか実現しなかったりとか、
向こうからやってというお仕事だけしか
できない時期は結構長くて。
例えば糸井さんが『成りあがり』とかで
やったことが、おそらく今『ほぼ日』の中で毎日のように
できているのではないかなと思うんですよね。
こんなに面白い人がいるので、対談して紹介したいなとか、
それにTOBICHIでこんな人がいるからその人の展覧会を
開いてとか、そういう…
糸井: 場所作り。
古賀: そうですね。
僕が今やりたいことと、すごく重なる部分があって。
『ほぼ日』は「今日のダーリン」という
大きなコンテンツはあるんですが、
糸井さんが俺が俺がって前に出てる場所
ではないですよね。それよりも、こんな面白い人が
いてねっていう場所になってて。その姿勢というのは、
結構成りあがりの頃から一貫してるのかなという。
糸井: 「あなたは目立ちたいってことはないんですか？」
って聞かれれば、
「非常にありますよ」
って言うんじゃないですかね。
ただそれはどういう種類のものなんでしょうねというと、
「いや、良いかも、いらないかも（笑）」っていう。
多分浅いところでは目立ちたがりですよ、僕。
でもちょっと掘るだけで、急にどうでもよくなりますね。
そんなにガツガツ目立とうとしなくても、
１つの面白い世界はやれますし、
そのくらいの方が楽しいんだよ。
だってね、全盛のアイドルも別にモテてないですよ。

古賀: 遠くでモテて。
糸井: そうなんです、距離なんですよ。
だから人から見ればすべてOKですよっていう
ファンが会場を埋め尽くしていても、
それは禁じられたことでもあるし、
仮にそこに突っ込んでいけば、後始末大変ですよね。
古賀: そうですね。
糸井: それは、商品に手を付けることだから
禁じられているわけで。それよりは、
たまたま行った誰かの送別会の際に隣にいた女の子に、
「送って欲しいんだけど」って言われれば、
もうバリバリに鼻の下伸ばしますよね。
「そのくら良いよ」って（笑）
古賀: （笑）そうですね、うん。
糸井: そこの実態の話で。
いずれみんなわかっちゃうんじゃないですかね。
まだ足んないんだよって僕、あまり思わないんですよ。
大体足りたって思うんです。
古賀: でも遠くの５万人とか遠くの５０万人に
モテてる俺っていうのを喜ぶ人も確実にいますよね。
糸井: それはとても面白いゲームだし、
僕なんかの中にもそれはなくはない。
１００万人が読んでくれてるとか、
それは「ええー？」っていう嬉しさがあるじゃないですか。
例えばヒマラヤとかさ、
ああいうのが見える場所に立ったことあります？
古賀: いや、ないです。
糸井: ないですか。たまたま立ったりした際に、
「大きいなー」って思うじゃないですか（笑）
古賀: （笑）ナイアガラの滝で感じました（笑）

糸井: 良いですよね。
古賀: 良いです、うん。
糸井: で、「来て良かったなー」って思うじゃないですか。
古賀: 思います、はい。
糸井: 人に、「もしナイアガラの近くを通るんだったら
絶対行った方が良いよ」と思うじゃない。
あれですよね。
古賀: はああ。
糸井: それは、「どうだ俺はすごいだろう」じゃなくて、
ヒマラヤですよ。
その仲間もヒマラヤを見れるのが良いよね。
古賀さんが、「お金なんかないですよ」って子に
「ちょっと今儲かったから連れて行ってあげます」って、
ヒマラヤが見えるとこに立って「なあ」って言うと、
その子が「ほんとだあ」って言うじゃないですか。
そのほんとだが、自分以上に嬉しいですよね。
この間あったじゃない、それ。

古賀: はい（笑）うちの子が。
糸井: ヒットしたんだよね。
古賀: そうですね、あれは気持ち良いですね。
会社の子が１０万部いって、
自分のこと以上にそれは嬉しかったですね。
糸井: それは嬉しいと思いますよ。
人が喜んでくれることこそが自分の嬉しいことですって
いうのを綺麗事として言葉にすると、
すごく通じないんだけれども、例えばお母さんが子供に、
お母さんは食べずに、イチゴを食べさせるような。
あれも全く同じだし。そういう経験をすればするほど、
人の喜ぶことを考えつきやすくなりますよね。

ふたりが語る、「いままで」と「これから」。

第３回 ヒマラヤの喜び。

第３回ヒマラヤの喜び。