ふたりが語る、「いままで」と「これから」。

糸井: 今、ネットの方が華やかに見えるって言うけれども、
あれやってる人は、痙攣的に楽しいんじゃないですかね、
ピリピリするような。
追い抜く方法を自分でわかっていながら、
追い抜かれるのを待つみたいなわけじゃない。
古賀: そうですね。
糸井: 僕がコピーライターをやっている際にも、
それの浅いやつはありました。
だからあいつがこのぐらいのところで出してくれば、
俺はそれよりずっと飛んじゃいたいなとか。
でも今って、
僕の時代が月刊誌の尺度で動いていたとすれば、
週刊さえ超えて、時間単位ですよね。
あそこで、俺は裏の裏まで読んでるんだごっこを
ピリピリしながらやっているというのは、
何にも育たない気がする（笑）

古賀: （笑）先日糸井さんが
「目の前の海ばかりじゃなく、水平に見える３年先を
　語り合えるような日常が大切なのだ」
といったことを書かれていたじゃないですか。
そこの時間軸をどういうふうに設定できるかというのが、
すごく大事で。
見えもしない１０年後２０年後を語りたがる人って…
糸井: まずそれは嫌だね。
古賀: そうですね、そこで満足している人達というのは、
結構たくさんいて。若い人達にも、
ある程度年齢がいってる人達にもいて。
僕はどちらかというと
「今日明日しかないんだ、
　先のことはわからないじゃないか」
という立場だったんですよね。
でもそこで考えに考えれば、
３年先にこっちに向かってるとか、
あっちに向かってるとかの大きなハンドルは
切れるんだっていうのは、
あれは結構ビリビリきましたね（笑）
糸井: それを僕は、今の年でわかったわけです（笑）
古賀: ああ（笑）
糸井: だから、大きな災害があった後とか、
今日っていう日を充実させていこうという、
これは立派な考え方だと思うんですよ。
そこにしっかりと重心を置いていれば、
３年後はわからないので、今をやり残すことなく、
１日中精一杯ちゃんと生きようよというのは
説得力があるんです。
古賀: そうですね。
糸井: おそらく僕も、本当にそう思えたんじゃないかな。
で、それを繰り返していけば、
「どうしましょう？」って
聞かれることが多くなるじゃないですか。
「俺もわかんないけど…」っていうのを、
ずっと言ってきたけれども、３年前からすれば、
今日ぐらいのところはわかっていたなって
思うようになったんですよ。
古賀: それは、震災とか気仙沼に関わるようになったのと
関係していますか。

糸井: 震災はでかいですね。
あの時僕らに何ができるかってことを考えていなければ、
今こういったことはしてませんよ。
古賀: そうですね、うん。
糸井: 全くしてないと思うんですね。
どうしてたんだかわからないです。
もっとつまんない、虚しい小競り合いをしたり。
あるいはちっちゃな贅沢、カラスがガラス玉集めるような
ことをしてたんじゃないかな。
それに思想を追っかけさせたんじゃないかな。
もたないですよね、それじゃ。
古賀: そうですね。でも、震災に関わるって決めた際に、
慈善活動とか、世間的に良いことに見えるって、
良い面と悪い面とあるじゃないですか。
糸井さんやほぼ日の活動を見ていると、
そこを上手くコントロールして、
しっかりと正しい道を選んでいるなという感じがします。
糸井: やはり吉本さんですよね。吉本隆明さんは
「良いことやってる時は悪いことやってると思え、
　悪いことやってる時は良いことやってると思え」
と言っていて、吉本さん自身が、
そうしようと思って生きてたってことは、
よくわかるんですよ。
例えばの話、僕らもチケットをもらったりしますが、
入場料払って見るのが基本だみたいなことは、
吉本さんを見てて思うんですよね。
その姿勢がベースにあるんで、
順番に列に並んでいる人を突き飛ばして前に出た方が、
もっと良いことができるかも知れなくても、
無駄になっても、コストだぐらいに考えてというのは、
ずっと吉本さんを見て思うことで。
でも吉本さんちの奥さんは、
お父ちゃんは偽物だって言うんですよ。

古賀: （笑）はああ。
糸井: 吉本さんちのお父さんがいて、
あのお父さんは本物だった。
本当にお父ちゃん良い人だけれども、
うちのお父ちゃんは、そうなろうとしてなっているから
本物ではないって。
でも、僕、今さら本物になれないんで（笑）
古賀: （笑）はい。
糸井: そういう吉本さんの方法しかないんですよ。
そう見ると、ほんとのこと言う偽物が結局なれる場所
なんですよね。
だから態度については、これからも
間違わないんじゃないかなというような気がします。
古賀: そうですね。
糸井: もし間違ったら言ってくださいねっていう。
ちょっと良い気になってたら（笑）

ふたりが語る、「いままで」と「これから」。

第２回 水平のその先。

第２回水平のその先。