古賀さん×糸井さん ~漠とした話~
第3回 お金と数字
- 古賀
- 今まで吉本さんや矢沢永吉さんの『成りあがり』のような
糸井さんにとってのヒーロー達の出版を
お手伝いをされてきたわけじゃないですか。
- 糸井
- そうですね。
- 古賀
- その時の糸井さんの気持ちは僕と同じで
自分が前に出るというよりも、
この人の言葉が届いてもらいたい?
- 糸井
- ぼくがとっても驚いたこととか、
とってもいいなと思ったことが
間接話法でぼくの本になるんですよね。
だから自分を前に出す必要は全くないんです。
古賀さんもそういう仕事をしてますね。
- 古賀
- はい。今でこそいろんな出版社さんとも知り合いがいますし、
やりたい企画を実現できるようになりました。
糸井さんの『成りあがり』のような仕事が
今の『ほぼ日』の中で毎日のようにできているように思います。
- 糸井
- 場所作りですよね。
- 古賀
- 『ほぼ日』には「今日のダーリン」という
大きなコンテンツはあるけれども、
糸井さんが大きく前に出ているわけでもなく、
こんな面白い人が居てね、っていう場所になってますよね。
僕が今やりたいことと重なります。
- 糸井
- ぼくも目立ちたい気持ちはすごくありますよ(笑)
ただどういう種類のものなのかを深く掘り下げたら
急にどうでもよくなりますね。
- 古賀
- それこそ30ぐらいの時に
目立って痛い目に遭ったりした経験があるからでしょうか?
- 糸井
- そういうわけでもないですね。
一番目立ちたがりだった時期って高校生じゃないですか。
- 古賀
- そうですね。
- 糸井
- 高校生くらいの頃は何をしてでも目立ちたいんですよ。
みんな俺をもっと見ないかなって、服装を変えてみたり(笑)
それは動物の毛皮の色みたいなもので自然ですよね。
でもやっぱり嬉しいのは近くにいる人にモテちゃうことなんです。

- 糸井
- ぼくくらいの加減の目立ちたがり屋の例が
古賀さんの世代に見えるということに気づいていますよ。
ガツガツ目立とうとしなくても1つの面白い世界を作っていく姿は
若い人達にとっても憧れの対象になりますよね。
- 古賀
- 遠くでモテてるということですね。
- 糸井
- そうなんです、距離なんですよ。
- 古賀
- そういう遠くにいる5万10万、あるいは億の人達を考える時、
糸井さんはお金のことを考えてしまいますか?
例えばミリオンセラーになったら1億円だとか。
- 糸井
- 人はすぐにお金のこと想像するので無防備でいると、
その人の小ささに合わせて自分像が見えちゃいますね。
僕はお金に対してはちょっと警戒心があります。
お金好きですっていう発言を時々するようにしています。
- 古賀
- むっつりスケベみたいな(笑)
- 糸井
- 人を邪魔するのにお金は都合がいいんですよ。
- 古賀
- というと?
- 糸井
- あの人は自分の欲望のために何かしてると思うと
仕事がしにくいじゃないですか。
例えば古賀さんが何か面白い企画を考えたとします。

- 糸井
- その企画に参加したい人に
「それをやればやるほど古賀さんが儲かる仕組みなんだよ」って
誰かが言ったら動かなくなります。
- 古賀
- そうですね、うんうん。
- 糸井
- だからもっと屈託なくやるには、
自分にとってのお金の価値観だとか具体的な使い方を
周りに見えるようにします。
それこそお金の管理ですよね。
- 古賀
- 1億円のように数字が大きいとやっぱり嬉しいですかね?
- 糸井
- それは全くないですね。
- 古賀
- ないですか。
- 糸井
- なぜないかというと、僕が求めて得られるような数字は
お金で言うとちっちゃいからですよ。

- 糸井
- 町中にちんけなビルがたくさん建ってるじゃないですか。
これはあなたのお金で建ちますか(笑)
- 古賀
- 無理ですよね(笑)
- 糸井
- 前提としてちんけなビルですよ。
つまり「古賀さん、その本売れて儲かったでしょ」っていうのは、
お金でいうとちんけなビル以下なんですよ。
- 古賀
- そうですよね、うん。
- 糸井
- そもそもビルは借りて作るから建つものなんですけど、
それにしても何かに勝負するには
まだまだお金は足りなくて、タネ銭なんですよ。
そのくらいのお金で儲かりましたねとは言えないんですよ。
- 古賀
- はいはいはい(笑)
それに気づいたのはいつぐらいですか。
- 糸井
- 30代ですね。
20代ではそういうタイプのお金は全く見えないですから。
30代の始めにやっと千万単位の感覚がつかめるんじゃないかな。
でも実際税金があるから実は想像の半分以下なんですよ。
- 古賀
- そうですね。
- 糸井
- プロ野球選手の年俸を見ていて、怪我のリスクを考えると
これくらいだろうって想像できるようになるんですよね。
ないが故に羨ましがってたり、
僻んだりしてる人達が言ってることってお門違いすぎて。
- 古賀
- うんうん。
- 糸井
- 会社の発想でお金を考え続けると何もできなくなりますよね。
- 古賀
- うんうんうん。
- 糸井
- その辺は、ちょっと先輩っぽく教えられますよね。
- 古賀
- じゃお金はなしでやるよっていうのともまた違いますよね。
- 糸井
- 全然違いますね。
数字とはまた別のお金の感覚は必要ですよね。
自分は立場をふまえた上で、
今あるお金でどれくらいのまでのことができるのかとか、
ここまでできたならこうしよう、とか。
ずるいことをせずに実現できたら
人間として徳が身につきますよね。