もくじ
第1回僕は天狗になれなかった。 2016-05-16-Mon
第2回だから友だちになろうと思った。 2016-05-16-Mon
第3回そして一緒にヒマラヤを望む。 2016-05-16-Mon

冬に生まれた、荒くれ者の飛行機乗りです。ジョージ・エリオットが好きすぎて、頭3文字をひっくり返して女性名のペンネームにしました。空飛ぶ詩人になりたい。うそです。

働くことは、気休めですか?

第3回 そして一緒にヒマラヤを望む。

糸井
古賀さん。
古賀
はい。
糸井
ヒマラヤが見える場所に立ったことあります?
古賀
いや、ないです!
糸井
ないですか。
たまたま立ったら「大きいなー」って思うじゃないですか(笑)
古賀
たまたま立った、ナイアガラの滝で思いました(笑)
糸井
いいですよね。
古賀
いいです。
糸井
で、「来て良かったなー」って思うじゃないですか。
古賀
思います、思います。
糸井
知り合いがもし近くに行くなら
「ナイアガラの滝は絶対見た方がいいよ」と思うじゃない。
古賀
はい。
糸井
あれですよね。
糸井
俺、仕事でそんな巨大なもの見たかというと、
実は見てないんですよ。
だから自分にとって何が大きい数字かっていうのは宿題。
古賀
宿題ですか。
糸井
エベレストの麓で
「登れないけど、これかあ」って思うみたいな。
実は今やりかけてる仕事が、
初めてビジョンとして億単位で数えてもいい、
そんな仕事になったんです。
いざそうなると、
数億人を想像しながら生きてみたいって
思うじゃないですか。
古賀
はい。
糸井
それがヒマラヤですよ。
自分だけじゃない、仲間も一緒に見られるのがいい。
古賀
すごいスケールです。
糸井
古賀さんが「お金なんかないですよ」って子に
「ちょっと今儲かったから連れて行ってあげます」と。
古賀
すごいな。
糸井
ヒマラヤが見えるとこに立って「なぁ?」って言うと、
その子が「ほんとだぁ!」って言うじゃないですか。
その「ほんとだぁ!」が、自分以上に嬉しいんですよ。
古賀
ああ、この間うちのメンバーが。
糸井
出した本がヒットしたんだよね。
古賀
そうです、あれは気持ちいいですね。
自分のこと以上に。
糸井
人が喜んでくれることは嬉しいことです。
言葉にすると綺麗事になるけれど。
でも嬉しいでしょ。
そういう経験をすればするほど、
人の喜ぶことを考えつきやすくなると思うんです。
 
古賀
糸井さん、以前『ほぼ日』始められた頃に、
今自分の中で働くことが流行ってる、
と書かれてたじゃないですか。
糸井
はい。
前日に友達の分まで釣りのセットをセッティングして、
糸を巻き直して、車を運転して、迎えに行って、
じゃ行こうってやってるのって、苦労ですよね。
古賀
うん、そうですね。
糸井
でも、それをやりたくてやってる。
それと同じで、『ほぼ日』始めた時に、
釣りするぐらい面白かったんですよ。
古賀
はい。
糸井
でも1つずつの仕事は…。
ああいやだ、いやだ。
古賀
僕も本書くのいやです(笑)
糸井
楽しくないですよね。
古賀
うん、楽しくないです、本当は(笑)
糸井
辛いからね。
古賀
辛いです、ほんとに。
糸井
仕事嫌いなのに、こんなにいろいろ手出して、ね。
なんなんでしょうね?(笑)
古賀
うーん。
例えば僕にとってですが。
子どもの頃ドラクエにはまってたのと変わらない。
「なんでずっとスライムと闘ってなきゃいけないんだ、
早く竜王のところに行きたいのに」
っていう感覚が結構近いんです。
ゲームはクリアしないと気持ち悪いじゃないですか。
クリアしてもそこに大きな喜びがあるわけでもないのに。
目の前に何か課題があったら解かずにはいられない。
糸井
それは今、小さい組織を作ってから思ったことですか。
古賀
そうですね。
前はもっと露骨な出世欲みたいなのがあったので。
糸井
1人の方がね。
古賀
そうですね。あいつには負けたくないとか。
ただ今は、そこで競争して消耗するのは、勿体ない。
外に目を向けた時の面白さを、今ようやく知りつつある感じです。
糸井
その意味でも、組織を作って良かったですね。
古賀
そうですね、ほんとに、はい。
 
糸井
昨日僕、うちのいんちきラジオに出演して話したんです。
気休めを、みんな悪く言い過ぎるよと。
気休めあってこその人生だし、人間なんだ。
気休めで元気になったら、それはそれでいいじゃん。
みたいなことを…
古賀
その通りですね。
糸井
そう、俺なんかもう、“気休めの鬼”を目指すぞって。
古賀
鬼!(笑)
糸井
口から出任せで言ってたんだけど、結構そうだなと思って。
僕は主役は自分じゃないんだけど、
自分が苗を植えたみたいな仕事、増えてるんですね。
古賀
そうですね。
糸井
そうすると、その実った米やら果物やらを
食べて喜ぶ人とかがいるっていう。
循環そのものを作るようになって、
面白さが、飽きない面白さになったんですよ。
古賀
なるほど。
糸井
俺が時計職人の老人でさ、
近所の中学生が「時計壊れちゃった」って時、
「おじさんはね、昔時計職人だったんだよ」
「貸してごらん」みたいな。
そんなことのような気がする。
「どうだ」って1回だけ言わせたい(笑)
古賀
わかります。
糸井
もうそれで十分だから。「お礼を…」なんて言われたら、
「あ、もうそれは要らない」(笑)。
古賀
あはは。
僕の場合、ライターには編集者がいるんで、
まずはそこをビックリさせたい。
全然期待してなかった原稿に120点で返した時の、
どうだという、なんかそういう喜びはありますね。
糸井
あと、僕は僕のお通夜の席を思い浮かべるかな。
古賀
お通夜!
糸井
みんなが楽しそうに集まってるの。
もう本人がいないんだから集まらなくてもいいのにさ、
たくさん人が集まって楽しくやってたら、
どのぐらい僕が楽しかったかわかるじゃないですか。
古賀
はい(笑)
糸井
お葬式用の写真なんて僕は、
絶えず更新してますからね。
古賀
え、そうなんですか。
糸井
うん。
その未来に向かって、今日を生きてるんですよ、たぶん。
それはなんか、いいものですよ。
なかなかね(笑)。
古賀
うーん、まだ想像できません。
糸井
まあ、古賀さんは僕の年までまだ長いですから。
まだいっぱい楽しいことありますよ。
古賀
それは楽しみです(笑)