あの道のちょっと先から。

古賀: 糸井さんが先日、
３年後の話というのを書かれていて。
糸井: あれは自分でもビリビリきましたね（笑）
古賀: はい（笑）
その時間軸をどう設定できるか。
それは、すごく大事ですよね。
見えもしない１０年後２０年後を語りたがるのは……。
糸井: まずそれは嫌だね。
古賀: ええ。
僕はほんとに今日、明日を、
とにかく頑張ろうという立場だったんです。
でも、そこで考えに考えたら、
３年先にこっちに向かってるとかの
大きなハンドルは切れるんだと。
だから僕にも結構ビリビリきましたね（笑）
糸井: 僕は今の年でそれを分かったわけです（笑）
古賀さんの年でも、わかる人はいるかも知れない。
だけど、そんな簡単にその考えになりたくないって、
たぶん抵抗するんですよね。
古賀: うんうん、そうですね。
糸井: 例えば、大きな災害があった後とかに、
３年後は分からないから、
今日１日、精一杯ちゃんと生きよう
というのは、立派な考え方です。
そこにしっかりと重心を置いていたら、
説得力があるんです。
古賀: そうですね。
糸井: たぶん僕も、一旦、本当にそう思えたんです。
ただ、「これからどうしましょう？」って、
よく聞かれたんですよ。
それで、「それは俺もわかんないんだけど……」
というのを、繰り返していていて。
でも３年前をよくよく思い返してみれば、
今日ぐらいのところは分かってたぞと。
古賀: なるほど。
それは震災とか気仙沼に関わるようになったことに
関係してますか？
糸井: 震災は大きいですね。
みんなが優しくしてくれる時に、
その場にいる人達が素直にその行為を受け取れるか。
僕はそれが一番大事だと思ってます。
震災にあった人達と友達になりたいって早く言ったのは、
友達が言ってくれたことだったら聞けるからです。
古賀: ああ、だから友達なんですね。
糸井: 友達じゃない人からいろんなこと言われても、
「うん、ありがとうね」だけじゃなくて、
やっぱり語尾には「ございます」が付くんです。
古賀: うんうん。
糸井: そうすると、いつか、誰と誰に何をされたから
返さなきゃいけないと思うじゃない。
古賀: そうですね。
震災の時、糸井さんは、
「当事者じゃなさすぎる」
という言い方をされてましたよね。
当事者になることは、やっぱりできないので、
そのきっかけが、友達ということになるんですね。
糸井: はい。
だから、もし前から知ってる人がそこにいたら、
こういう付き合い方したいなっていうのが友達ですね。
古賀さんは、震災の時、
どう自分の考えを納めようと思ったの？
古賀: 僕はちょうどcakesの加藤さんと一緒に
本を作ってる時でしたね。
震災に何も触れずに、
５月ぐらいに出版予定の本だったんです。
でも、このままその本がポンと出てくるというのは
明らかにおかしいぞと思って。
だから、まず現地に行って取材をしました。
糸井: まだ全然復旧されてない時期ですよね。
古賀: ええ。
瓦礫を見た時の迫力で……。
糸井: まずは無力感ですよね。
古賀: これに対しては何もできないなと思いました。
だから、とにかく東京にいる僕らにできるのは、
自分達が元気になることだなと思ったんですよ。
東京の人間が東を向いて何かをやるというよりも、
西の人達に向かって、
俺達ちゃんと頑張ろうよ、と。
糸井: 何もできないという思いは、ずっと形を変えて、
小さく僕の中にも残ってますね。
やった人達に対する感謝と一緒にね。
古賀: はい、そうですね。
糸井: ただ僕は、ライターだとか編集者だから
自分のできることは、こういうことだっていう発想を、
なるべくやめようと思ったんですよ。
そこは、さっきの古賀さんの考え方と違ったところで。
古賀: なるほど。
糸井: つまり、個人の名前としてどうするか。
とにかくそれを先に考えようと思ったんです。
そうじゃないと、
職業によっては、今何も役に立てなくて、
来てもらっちゃ困るのに行くかもしれない。
古賀: そうですね、うん。
糸井: だから、豚汁を配る場所で
列を真っ直ぐにする手伝いとかね。
その延長線上で何ができるかみたいなことを、
できる限り考えたかったんです。
でも分からなかったから、ずっと悩んでました。
古賀: そうですよね。
糸井: それで、友達に御用聞きするって決めました。
震災がなくて、考えなかったら、
今僕らはこんなことしてませんよね。; （つづきます）

あの道のちょっと先から。

第２回 当事者じゃないけれど。

第２回当事者じゃないけれど。