- 糸井
- 追い詰めすぎなのかもしれないけど、どうですか逆に。
- 古賀
- いや僕は、そうだなあ。やっぱり、つい「業界のため」
とかっていうのを、言っちゃうし、考えるんですよね。
たとえば10年前、20年前、自分が新人だったころは、
こんなカッコいい先輩たちがいたって、
今自分らがそれになれてるんだろうかとか。
今残っている50代60代の中に、
どれくらいカッコいい人たちがいるだろうと思うと、
やっぱり昔の思い出のほうがカッコよく見えるんですよ。
- 糸井
- そうですね。
- 古賀
- で、そのときに若くて優秀な人が、カッコいいなとか、
入りたいなって思う場所になってるかどうか
っていうのは、たぶん端的に言って、
ネット業界とかのほうがキラキラして見えるはずなので。
うーん、だから多少のキラキラとか、
なんて言うんですかね……。
羽振りの良さみたいなものとか、そういう、
サッカーの本田圭佑さんが白いスーツ着たとか、
ポルシェに乗って成田にやってきたとか……。 - 糸井
- あえて、やってますよね。
- 古賀
- はい。ああいう演出とかも、何かしら出版業界の中とか、
僕らみたいな立場の人間が、
多少はやったほうがいいのかなあっていう思いも
若干あるんですけど。でも、
今の糸井さんの話を聞いて、
三日三晩自分にそれを問いかけたら……。 - 糸井
- あっはっはっは。
- 古賀
- ……と、思いますね(笑)。自分が、うーん、
やっぱりそうだなあ、問い詰めると、どっかには
「ちやほやしてほしい」という気持ちはあるんで、
それを良くないことと片づけるのは、
あまりにももったいない原動力だから。 - 糸井
- 人間じゃなくなっちゃう、ってとこがあるからね。
- 古賀
- はい。だから「ちやほやされたい」と
どう向き合って、そこをこう、
下品にならないようにとか、
人を傷つけたりしないようにとかの中で、
自分をこう前に進めていくっていうのが、
今やるべきことなのかなという気はします。
- 糸井
- まあ、本当のこというと、
やるべきことなのかどうかも
わからないんですよね。
つまり、なんて言うんだろう、
変なハンドルの切り方してみないと、
まっすぐが見えないみたいなところがあって。 - 古賀
- はいはいはいはい。
- 糸井
- やっぱりその、僕はよく言ううんだけど、
社内で「昔はみんな立ちションベンしてたんだよ」
って言い方して。
地方に住んでた人は、もっとですよね。 - 古賀
- そうですね。
- 糸井
- 田んぼと年の境目みたいな場所だらけだったから、
田んぼや山の中でするのはおかしくないわけで。
重なってる領域みたいなところにみんな
生きてるわけだから。 - 古賀
- はい。
- 糸井
- それから、今倫理的にものすごく
あちこちで追及されるけど、
その、おめかけさんのいる人とかって、
いくらだっていた。で、今の基準で良い悪い
って言うのは簡単ですよ。答えがわかってて、
その後押しをしているわけだから。
だけど、タバコ吸って、女子供のいるところで
モクモクの部屋でえらそうなことを
オヤジたちが喋ってて、
「あ! 酒こぼしちゃった」なんつって
「あらあら」なんて拭いてもらう。 - 古賀
- はいはいはいはい。
- 糸井
- ああいう時代に生きてたっていうのが、
僕の中にはまだやっぱり、あの、
しっぽがついてますからね。
だから、比べる機会がものすごく多いんですよね。
あのままそっち行ってたらこれは今もう袋叩きだぞ、と。
そんなこと山ほどあるんだけど、
今ってスタートラインリセットでゼロにして、
すぐにチェックし合うみたいなことになるじゃないですか。
「歯に青のりついてない?」みたいなとこから
始まるじゃないですか。 - 古賀
- ええ、ええ。
- 糸井
- 青のりつけちゃったほうが、人として健全な、
こう、免疫というか、
それをつくれるんじゃないかなと思うんですよ。
今、ネットのほうが華やかに見えるっていうけど、
あれやってる人は、痙攣的に楽しいんじゃないですかね。
楽しいとしたら、ピリピリするような。 - 古賀
- うんうんうん。
- 糸井
- やっぱり追い抜く方法を自分でわかっていながら、
追い抜かれるのを待つみたいなわけじゃない。 - 古賀
- そうですね。うんうん。
- 糸井
- 僕がコピーライターやってるときにも、
それの浅いやつはありました。 - 古賀
- ほう。
- 糸井
- その、あいつがこのくらいのところで出してくるなら、
俺はそれよりずっと飛んじゃいたいなとか。
でも今って、その、僕の時代が月単位で動いてたとしたら、
月刊誌の尺度で動いてたとしたら、週刊さえ超えて、
時間単位ですよね。
あそこで“「俺は裏の裏まで読んでるんだ」ごっこ”を
ピリピリしながらやってるというのは、
なんにも育たない気がする。
- 古賀
- だから先日糸井さんが、その、
3年後の話というのを書かれてたじゃないですか。 - 糸井
- あれ、ピリピリくるでしょ(笑)。
- 古賀
- でもその時間軸をどういうふうに
設定できるかっていうのが、すごく大事で。
見えもしない10年後、20年後を語りたがる人って……。 - 糸井
- まずそれはいやだね。
- 古賀
- そうですね。
そこで満足している人たちっていうのは、
結構たくさんいて。若い人たちにも、
ある程度年齢がいっている人たちにもいて。
本当に今日明日しかないんだっていう、
「だってわからないじゃん」って。
僕もどちらかというと、そういう立場だったんですよね。
でもそこで考えに考えたら、
3年先にこっちに向かってるとか、
あっちに向かってるとかの大きなハンドルは切れるんだ
っていうのは、うーん、
あれは結構ピリピリきましたね(笑)。 - 糸井
- それをだから僕は今の歳でわかったわけです。
- 古賀
- ああーーーー(笑)。
- 糸井
- 古賀さんの歳でも、わかる人はいるかもしれない。
だけど、そんなに簡単にその考えになりたくない
みたいなところがあって、たぶん抵抗するんですよね。 - 古賀
- うんうん、そうですね。
<第3回へ続く>