- 僕
- おはよう。
- 息子
- おはよう。きょうは、とーちゃん、おしごとないの?
- 僕
- ないよ。土曜日だからね。
- 息子
- やったー。
- 父
- あのね、きょうは、かーくんのしたいことを
なんでもしていいよ。 - 息子
- えー!なんでー?
- 僕
- きょうは、とくべつな日なの。
- 息子
- ふーん。
- 僕
- なにかしたいことある?
- 息子
- (しばし考えて、)たくみがおうちつくるテレビ、みたい。
- 父
- たくみが?え‥? ああー。
最初の願いは、録画してあるテレビ番組を見ることだった。
彼が選んだのは、大好きな「ピタゴラスイッチ」でもなく、
いま熱中している「動物戦隊ジュウオウジャー」でもなく、
「大改造!!劇的ビフォーアフター」だった。
匠と呼ばれる建築士が、依頼者の悩みを解決するべく、
住宅リフォームを行う模様を追う、ドキュメント番組だ。
たしかに、親が好きでよく見ているが、
ふだんは興味も示さない。意外な選択だった。
古くなった家屋が取り壊される映像を見ながら、
「あー、かべがこわれちゃったー」とか言いながら、
わりとたのしんでいる。
妻が朝ごはんを用意してくれたので、
食べながら、いっしょに見た。
匠が、すばらしい家をつくりきる前に、
「えほん、よんで」と言いだした。
いつもより丁寧に、絵本を読みきかせた。
ふだんは2回くらいで「他の本にしようよ」と、
僕からもちかけるのだが、きょうは、
彼が飽きるまで何回も読んだ。
物語に出てくるケーキがおいしそうだった。
その後、「こうえん、いきたい」と言うので、
さっと支度をして、みんなで近所の公園に向かう。
とても良い天気だ。
最高気温は30度にもなるそうだ。
ブランコを飽きるまでやり、すべり台へ移った。
ふと、すべり台の下で息子がうずくまった。
何してるのか聞くと「くさのケーキ、つくってる」と言う。
ふだんの3割増しくらいの時間をかけて、
それぞれの遊具をこなしていく。
よく飽きないなあ、と感心する。
それにしても、暑い。
集中してあそぶ息子に、時おり声をかけて水分をとらせ、
日射病にならないために、帽子がはずれたらかぶせた。
砂場であそんでいると、
ふだん、保育園でなかよくしているともだちが来た。
挨拶を交わすこともせず、しぜんに、あそびはじめた。
助かった、と思った。日頃、まともに体を動かしておらず、
とーちゃんには、体力がないのだ。バトンタッチする。
我が家は共働きで、保育園には0歳のときから預けている。
このともだちは何歳か上で、乳児のころからの付き合いだ。
ふたりであれこれと喋りながら、てぎわよく
「おしろ」をつくったり、こわしたりしている。
- 友達
- ねーねー、かーくん。
- 息子
- なに?
- 友達
- あかちゃんのころに、だっこしてあげたの、おぼえてる?
- 息子
- おぼえてるよー。
- 僕
- (そんな頃の記憶があるのか、すげーな‥‥)
息子の通う保育園では、園での生活や、
イベントごとの写真を購入することができるのだが、
こうして子どもどうしであそんでいる姿を、
見ることはなかなかない。いいものを見た。
強い日差しのせいで、砂が固まらないので、
すこしづつ水をかけながらあそぶ。
泥だらけになるが、構わずやりたいようにさせる。
子ども達が、服を汚しているのを見ながら、
洗濯すればいいのだ、と思うも、
砂がすみずみまで入り込んだスニーカーは、
洗うの大変なんだよなあ、と暗い気持ちにもなる。
30分くらいあそんで、ともだちが帰った。
木陰で休んだりしつつ、あそばせてはいるし、
顔色も、声も問題なさそうではあるものの、
ぼくらがここに来てから、けっこうな時間が経っていた。
「かーくんも、帰ろうか?」と声をかけるも、
「すべりだい、やる」と言う。
そろそろ暑さに耐えられなくなってきた僕は、
まじか、と思いつつ、従う。
ふだんなら、「5回だけだよ」などと声をかけて、
「あと3回」「1回」と、カウントダウンをしながらやる。
そうしないと諦めがつかず、全然おわらないからだ。
でも今日は好きなだけやらせる。
そして息子も、飽きもせず、延々とやる。
さすがに満ち足りたのか、帰ることになった。
帰って、電池がきれたように眠る。
親もけっこう消耗したので、みんなでお昼寝をした。
起きてきて、「ガチャガチャがしたい」というので、
バスにのって、近くのショッピングセンターへ向かう。
(あとすこしだけ、つづきます!)