第3回 好きなことと、できること。

糸井
塚越さんは、クリエイティブなことが
やりたいと思ったかもしれないけど、
実際には実務というか、
実現する力があったということを、
相手が見抜いた。
それって、何なんですかね。
塚越
糸井さん、ぼくをみて、
クリエイティブに向いてると思います?
糸井
‥‥‥‥。
会場:(笑)
糸井
ぼくは、同業には厳しいですから。
でも、営業がいわゆる
クリエイティブの仕事以上に
クリエイティブだという認識はあります。
塚越
なるほど、なるほど、それはわかります。
ぼくの場合は、何かを開発するよりも、
営業的な動きをする中に、
能力を発揮できる部分があるんですよ。
糸井
クリエイティブの人たちって、
徹夜して、ああでもない、
こうでもないって実現しない話を
ずっとしてるのが大好きなんですよね。
それが一番たのしいから。
原作つきのテレビドラマとかあるじゃないですか。
あのときに、キャスティング誰にする? なんて話、
みんな大好きでしょ。
「あれは木村拓哉だったけど、
 ほんとはそうじゃないよね」
とか。「じゃあ、だれ?」、
「反町かな」って言ってると、
たのしくて、しょうがないんですよ。
だって実現しないのに言っていいんだもん。
“ぼくの理想”が語れると思ってるし、
つっこまれても、また、たのしいんですよ。
でもそこに、
「さあ本当に決めようじゃないか」
って言う人がいないと、
本当になんかならないんですよ。
それが塚越さんの仕事なんです。
塚越
逆にこっちは、実現するのがたのしいんですよ。
おもしろいアイデアがあっても、
いざ実現するプロセスって、
絶対にうまくいかない。
いろんなハードルがあるし、
できない理由がごまんとありますから。
糸井
あります、あります。
塚越
それがたのしい。
それをどうやってクリアにするかとか
実現させるところが、たのしいんです。
糸井
その実現する力って、
だれも試したことがないから、
わからないんですよ。
つまり営業の適性って、
「よくしゃべるやつ」だとか、
「人に説得力のあるしゃべり方」だとか、
いろいろあるかもしれないけど、
そんな単純なことじゃないんですよね。
そして、学生のときには、
それはわからないんですよ。
そんな自覚なかったでしょ。
塚越
なかったですね。
自分が何が優れてるかとか、
たぶんわからないと思うんですよね。
今のぼくの話でもそうですけど、
何が自分にとって優れてるかとか、好きかとか、
好きなことと、できることって、
どういう関係があるかとかって、
わからないですよね。
たぶんどこかから芽が出るんだと思うんですね。
可能性っていうのかな。
糸井
どこから出たんですか、塚越さんの場合。
何から出たんですか。
塚越
いま思うと、人との付き合いの中から、
引き出してくれているんですよ。
ぼくは好きなことやりたい、と、
思ってるだけだけど、
それをやらしてくれる機会を作ってくれてるのが
糸井さんだったり、取引先の方だったり、
前の会社で言えば先輩たちなわけです。
そういう人たちは、
ぼくにこういうことをやらせたらおもしろいとか、
そういう目で見てくれていた。
そこにおもしろいと思う気持ちがあったから、
そのアドバイスに従ってやってみた。
それの積み重ねの中で、
自分の経験値みたいなものを貯めていけてたんです。
糸井
経験値。
1個やれたという後では、
もうこのことについては、
また必ずできると思うんですか。
塚越
思います。
または精神的なものってあるんですよ。
ダメだって思っても、それをクリアしたときには、
同じような状況が来たとき、
諦めないで済むでしょう。
きっとまた何かやれる手はある、と。
(明日に、つづきます)




若いとき、なにが不安でしたか。

質問者3(女性):
美術大学の2年生です。
周りの子は、
行動を就職活動に焦点をあててる子もいるし、
全くしない子もいるし、
何がしたいかわからないで
会社を選ぶとかそういう子もいるし、
逆に仕事をしたいと思って
就職活動している人もいるんですけど、
そういう人たちを見ていて、
なぜかわからないですけど、不安になるんです。
お二人は、このくらいの年齢のときに
何が不安でしたか。

塚越
不安でしたよ。
自分はどこかに就職できるんだろうかとか、
入ったらこれでよかったんだろうかとか、
それはもう不安でしたよ。
それでいいんじゃないですか。
不安は絶対ありますよ。
いつでもぼくはあると思う。
不安ないですよ、ってぼくが言っても
やっぱり不安だと思うし、
しょうがないと思うんですよね。
不安になってるところで、どうしようと思うより、
自分がやりたいことやってる方が、
たのしかったですね。
それをやってると、
ぼくの場合は不安のことを忘れてました。
就職するときこんな会社入りたいなって、
妄想が湧くんですよ。
自分が入ったらこうしようとか、
いろんな妄想で、不安をかき消すんですよね。
不安は絶対あると思うので、
やりたいことやりながら、
妄想するのがいいんじゃないかな。
アドバイスになるかどうかわかりませんけど。
糸井
22歳のぼくは、しょうがなかったよ。
自慢じゃないけど、
ぼくは30まではね、ひどかったよ。
不安とかそういうレベルじゃないです。
もう自分に説教してやりたいです。
なんなんだろうなって、今でも思うんだけど。
みんなと同じ踊りを踊っていれば、
時間が過ぎるじゃないですか。
それで踊れていれば、
あの子はちゃんとしてるって言うじゃない。
だけど、合わせて踊っている間って自分の考えって
育たないじゃないですか。
つまり合わせられないなと思ったときに、
しゃがみこむのか、ちがう踊りをするのか、
やめるのか、見る側に立つのか、
自分で決めなければいけないときありますよね。
そのときに、こんなふうに踊ってられないわって、
男のところに走ったり、
いろんなことが起こりますよ。
それはオリジナルなんですよ。
だから全部経験なんだけど、
みんながやってること一緒にやってる間は、
空っぽでも生きていけるので、
そこが全部ムダになるんです。
そういうのぼくできないからって
いちいち頭ぶつけてるのは、
全部経験になるんです。
いいんですよ、いろんなことをすれば。
それは、全部OKなんですよ。
自分で考えることなんだから、
自分の経験なんです。
だから、不安はチャンスです。
結構、それは、大事なことだから、
不安なままで、みんなと同じ踊りを
踊ってる必要はないですよ。
ぶつかった方がいいですよ。
あと、デザインっておもしろいぞ。
デザインは、おもしろい。
半分は、もので考えることができるし、
半分は考えてもできないし、
両方あるから。
考えてることに行き詰ったら、
考えないほうにいけばいいし、
考えないほうが苦手になったら、
こんどは考えればいいし。
行ったり来たりして、上手になるんだよ。
それは、すごくたのしい仕事ですよ。
本当は、いろんな仕事が
全部そうだと思うんですけどね。
塚越
今の、すごくいい話ですね。
こういうふうにね、
おじさんと話をするといいこともありますよ。


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2007-05-01-TUE

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