イセキさんのジュエリー雑記帖

ロンドンを拠点に
アンティークや
ヴィンテージの
ブローチを探し、
ご紹介していた
イセキアヤコさんの
人気コンテンツ

リニューアルして
かえってきました。
雑記帖という
タイトルにあるように、
ジュエリー全般に
まつわるあれこれを、
魅力的なエッセイと
写真でお届けします。
不定期更新です。

profile

イセキアヤコさんプロフィール

京都出身。2004年よりイギリス、ロンドン在住。
アンティークやヴィンテージのジュエリーを扱う
ロンドン発信のオンラインショップ、
tinycrown(タイニークラウン)
を運営している。

Vol.10 ルーサイト(書籍紹介編)

‘‘PLASTIC JEWELRY’’
著者 Lyngerda Kelly、Nancy Schiffer
出版社 Schiffer
ISBN 978-0-7643-4349-0

タイトルのJEWELRYという綴りからもわかるように、
これはアメリカの書籍である。
(イギリス英語ではJEWELLERY。)
アメリカをはじめ、世界で
いつ頃プラスチックジュエリーが広まったか、
ヴィンテージジュエリーには
どんな種類のプラスチックが使われていたかが
簡潔にまとめられている。


本書によると、
「ルーサイト」はアクリルプラスチックで、
もともとの研究は1901年のドイツに遡るという。
その後1931年までの間に、アクリルプラスチックは
物質のコーティングやガラスの安全な結合のために
使われるようになったが、
クリスタルのような透明度、容易に着色できて
見た目に美しいところが高く評価された。
高温にすると溶ける性質のサーモプラスチックで、
簡単に加、研磨ができ、他のプラスチックよりも
安定性がある。いろんな点で、ジュエリーを作るのに
ぴったりの素材だったというわけだ。


1931年、日本でもテフロン加工の鍋でおなじみの
デュポン社が、第二次世界大戦中に
ルーサイトという名のアクリルレジンを開発。
93%の透明度を持ち、防水、紫外線カット、
そして厚みが増すと防弾にもなる
高い強度があったため、戦闘機の
ノーズ・コーン(先端の、円すい形の構造部)
などに使われたが、
一方でジュエリーにも加工され、
製品は、ファセット(切子面)がつけられたり、
文字や模様が刻まれたり、削られてビーズに姿を
変えたりした。


1941年5月16日付けの『ニューヨーク タイムズ』で、
ルーサイトの特許はニューヨークシティの
コスチュームジュエリー製造会社の代表、
マクシミリアン・C・メイヤーという人物に
与えられることが決まったと報道された。
ルーサイトは登録商標で、今でも
航空機の窓ガラスなどに使われているそうだ。


写真は、この本のルーサイトブローチのページ。
当コンテンツでご紹介した鳥モチーフの
ルーサイトブローチ群と同じ技法の品が掲載されている。

 

このページの掲載商品はtinycrownのオンラインショップ
2020年1月10日17:00(日本時間)から販売されます。

2019-12-08-SUN

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