はじめてのJAZZ2ヒストリーもたのしみなりー!ほとんどまるごと再現ツアー

#16 1960年〜 多様化するジャズ 俳句

山下 たとえば、スケート選手に
5分間だけ好き勝手にやっていいですよと
言うとするじゃないですか。

どういうタイミングで回転するのか、
どっちへ向けて滑ってくのか、
それは、あなたしだいですからねって。

でも、その選手にテクニックがなければ、
いい滑りはできないでしょう。
糸井 ははぁ‥‥自分がどの鍵盤を叩いてるのか、
ぜんぶ把握していながら、「自由」なんだ。
山下 それまでの蓄積と、自分のスタイルを、
瞬時に出していくやりかたなんですね。
糸井 なるほど‥‥かっこいいなぁ。

じゃ、もう終盤ですが、
次の話は、ジャズのどのあたりになりそうですか?
山下 モダンジャズの次ですから、フュージョンです。
糸井 そっちに行った人もたくさんいますよね。
山下 ひとつのジャンルになってますからね。
 
糸井 日本のジャズの今の状況って、
やっぱり、そういう方向なんですか?
タモリ トラディショナルなジャズも多いですよね?
山下 案外、正統派も聴かれてますけど、
人口としては、フュージョンが多いんじゃないかな。
糸井 演奏するほうも、聴くほうも。
山下 うん、そうですね。
糸井 山下さんは、なぜフリーの方面へ‥‥?
山下 いろいろ分析しはじめると長いけど(笑)。
糸井 長いでしょうけども。
山下 自分のなかにたまってきたものが、
それまでのやリかたですと
なんというか‥‥釣り合わないんですよ。

すごく強い感情‥‥激情といいますか。
タモリ うん。
糸井 他のどんな方法を試しても表現しきれなかったんで、
ヤケになって、
ヒジで鍵盤を叩いちゃったり‥‥そんな感じですね。
糸井 1960年代くらいから。
山下 それについては先達がいるんですけれど、
僕がはじめたのは、1969年からです。
糸井 もう、ご自身の表現の一部になってるんですね。
山下 その表現をすこしお目にかけようというのが、
次の「HAIKU」という曲なんです。
糸井 あの「俳句」ですよね。
山下 ええ、あの「五七五」の「俳句」です。

はじめて会った相手と、フリーにやろうってときに、
途中は、それぞれ勝手なんだけど、
曲の最後は、どうやって終わったらいいのか、
そこのかたちだけ決めとこうっていう、
そういう演奏のしかたをしてる曲なんですよ。

その合図として、同じ日本人なら誰でもわかる、
俳句のリズム「五七五」を使ってるんです。

タタタタタ、タタタタタタタタ、タタタタタって。
糸井 それが唯一のお約束であると。
山下 ええ、ただ、それだけがルールの曲。
糸井 なるほど、なるほど。
山下 それ以外の部分は、
個々のプレイヤーの表現でできあがっていきます。
糸井 じゃ、一句、聴かせていただきましょうか。
山下 はい、それでは「HAIKU」です。
どうぞ、お聴きください。
 
  「HAIKU」
<つづきます>

今日のジャズ語

フュージョン
マイルス・デイヴィスの『BITCHES BREW』が、
そのはじまりとされる。
電気楽器を大胆に取り入れ、
ロック、ポップス、クラシックなど
他のさまざまな音楽ジャンルと融合したことで、
一般の音楽ファンの関心をも獲得、
一大ブームを巻き起こした。
この「エレキの導入」によって、
ジャズは、雑多な文化の混淆という、
その発生期のルーツへと回帰したともいえる。
2008-03-26-WED