はじめてのJAZZ2ヒストリーもたのしみなりー!ほとんどまるごと再現ツアー

#07 1900〜1920年 ジャズの誕生 ラッパが余っていた

糸井 ジャズにはブルースの遺伝子が濃い、
という話ですけれど‥‥。
山下 時代が下ってからもまた、入ってくるんです。

のちほど、あらためて説明しますが、
とくに、ビバップからハードバップの時代になると、
今のブルースや、モリタ教授が言ってた
「ワークソング」に先祖帰りしていく。
タモリ 1940年代から50年代ぐらいですかね。
糸井 あえて、ブルースに戻る?
タモリ たとえば、ウィントン・マルサリスっていう
クラシックとジャズ、
両方やるトランぺッターがいるんですけど、
この人なんかも
ブルースだけのレコード出してんですよね。
糸井 もともと何だっけっていう
自分の血を思い出したいんですね。
山下さんにも、
そういうルーツってあるんですか?
山下 えーとね、ふと口をついて出るメロディは
童謡だったりしますよ、やっぱり。
糸井 はー‥‥。
 
山下 ぜんぶ日本の童謡みたいなので
アルバムをつくったこともありますし。
糸井 自分のなかの、いちばん奥にあるもの。
山下 でも、酒場なんかに集まったりするとね、
やっぱりブルースなんですよ、われわれジャズメンは。
タモリ どのくらいかかったのかわかんないけど、
黒人たちが、
全員共通の決まりを作ったんでしょうね。
山下 そう、ブルースというね。
糸井 集まったら、すぐできるぞー、という。
山下 ひとことで「アフリカ」といっても、
それぞれ別の部族の出ですし、
踊りもちがう、歌もちがう、何もかもちがう‥‥。
だからこそ、
最大公約数みたいな財産を作ったんでしょうね。

ここになら、みんな入れるぞってワクをね。
糸井 で、そうした音楽を経て、
いよいよ「ジャズ」が誕生してくるわけですね。
山下 モリタ教授も言ってたように、南北戦争が終わって‥‥。
糸井 はい。
山下 まず、楽器が手に入るようになった。
タモリ それまでは、高くて買えなかったものが、
安い中古の楽器が出てきた。
初期のニューオリンズ・ジャズには
ピアノ、ありませんでしたし。
 
糸井 へぇー‥‥。
タモリ ドラムも、シンバルとスネアぐらい。
ベースもないってんで、チューバを使ってたんですよ。
糸井 手に入りやすい楽器からはじまったわけですね。
でも、なぜニューオリンズだったのか、というのは‥‥。
山下 やっぱり、あらゆるものが
いちばん、ごったごたと存在していたのが
ニューオリンズだったんでしょう。
糸井 つまり、ヨーロッパとアフリカが
ニューオリンズという地で衝突をおこして、
都合のいいことに、
ラッパや何かが余っていた‥‥と(笑)。
山下 うん、手に入れやすかった。
糸井 ブルースを歌う黒人たちも、たくさんいた。
山下 いた。
糸井 お客さんも、いた?
タモリ いた。酒場に。
山下 いかがわしい酒場に。
糸井 ほー‥‥。
山下 当時のピアニストたちは、
そういうところでピアノを弾いていたんです。
 
<つづきます>

今日のジャズ語

ニューオリンズ・ジャズ
ニューオリンズ周辺で生まれた
ジャズ初期の演奏スタイル。
ブラスバンドの影響を受けたもの、
ドラム缶を叩いて歌い踊ったようなものから
クレオールによる室内楽的なものまで、
そのスタイルはさまざま。
担い手は、黒人たちやクレオールだった。
2008-03-11-TUE