第11回 ジャズ経営者の気質。

糸井 タモリさんが関わっているジャズクラブ、
それが黒字ってだけで、すごいですよね。
タモリ すごいですよ。
家賃、5か月滞納してますから。

うちのジャズクラブは、
地下に2軒あったところを借りているから、
テナントから出ちゃうと
地下街が閑散とするわけ。

だから
「もう出ないでくれ」って言われていて……
だけど、ある時、内容証明書つきで、
「もう滞納になっていますので、
 この次にとどこおった場合は出ていってくれ」
という紙が入っていたんです。

それで、お店のスタッフが
あわてて電話したらしいんです。

そうすると
「あぁ、うちも会社ですから、
 一応、ああいうのは出しますよ」
と、笑いながら言ったんだって。

たまに、大家が激励に来るらしい。
「がんばんなさいね」
って……もうああなると立場が逆ですよ。
糸井 すごいなぁ。
そこでは、ジャズの演奏をしているんですか?
タモリ 生演奏を、毎晩、入れてますよね。
糸井 それでもダメなんだ。
お客さんもいるんでしょう?
タモリ まぁ、少ないですけどね。
山下 毎晩やるからダメなんですよ。
週末だけにしておけばいいものを……。
タモリ そう。
毎晩やろうっていうことになって。
山下 豪華なもんだよね。
毎日毎日、違うヤツが来て、
生で音を出して。
糸井 山下さんも、
そこで音を出したことは?
山下 昔は、よくありますよ。
タモリ ミュージシャンは安いんですけど、
だんだん、ライブハウスって
潰れているんで……
ミュージシャンにとっての職場がないんです。
糸井 どこに、どういう問題が、
あるんだろうねぇ。
タモリ うーん。
糸井 いや、もちろん、
俺がその経営をやれば……
とかいうことは思ってないですけど、
なんだかものすごく簡単なことが
間違ってるんじゃないか、
という気もするんです。
山下 うん、そうね。
タモリ だからやっぱり
こういう企画で、ジャズを
ちゃんと解説していかないと……。
糸井 うん。
落語だって、みんな、
はじめてのお客さんばかりなのに、
「はじめての落語」を聞いた人は、
ニコニコして、帰りましたからね。
山下 でもさ、毎晩毎晩、
違う落語家が出てます、
っていう時、人は来ますか?
糸井 それはダメですね。
山下 ね?
糸井 それは、だから、
やっちゃいけないですよね、たぶん。
山下 そうだよね。
糸井 6日休んで、
日曜だけのほうがいいですね。
山下 そうでしょう?
週末だけのほうが。
でも、ジャズは
「毎日」をやっちゃうの。
タモリ やりますね。いつもやってますよね。
糸井 それをやってるのは……つまり、
「俺の話を聞いてくれ」だからですよね。
タモリ (笑)うん。
山下 (笑)経営者もそうなのよ。グルなの。
糸井 「こいつらの話を、毎日、聞いてくれ」
って(笑)。
タモリ 「おまえの話は、もう聞いたよ」

「いや、今度は
 ちょっと違う友達の話をしますから!」

「ほんと?」

「うん、これは、
 ちょっと違っておもしろいですよ!」
糸井 ……あぁ、それは、無理ですよね。
 
(つづきます)



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2005-01-05-WED


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