ほぼ日の学校

行ってみたほぼ日の学校

古典をテーマとする「ほぼ日の学校」では、
多くの先生方が情熱をたっぷり注いだ、
白熱の講義をしてくださっています。
この、ただならぬ熱気を伝えたいと、
いろんな方に参加してもらい
体験レポートを描いていただきました。
講義の様子は「ほぼ日の学校オンラインクラス」
だれでも、いつでも、みられます!
一緒に「ほぼ日の学校」を体験してみませんか?

2

前田知洋さん

世界的マジシャンの前田知洋さんが、
シェイクスピア講座に遊びに来てくださいました。
聴講されたのは3回、
熱心に講義に耳を傾けた
前田さんの心に残ったこととは。

前田知洋さんのプロフィール

アメリカに留学してよかったことのひとつが、
リベラルアーツに出会ったこと、と語る
世界的マジシャンの前田知洋さん。
聴講いただいたのは、
第11回ベンチャーキャピタリストの村口和孝さんの講義と、
第12回動物心理学者の岡ノ谷一夫さんの講義、
そして最終回の「卒業制作」では
受講生のみなさんと一緒に「夏の夜の夢」を
演じてくださいました。
毎回熱心に耳を傾ける姿が
とても印象的だったので、
授業の感想をうかがってみました。

テレビに出ると、よく
「新しいマジックはありますか」
と聞かれるのですが、
ぼくはこれが大っ嫌い。
「新しくてくだらないものはたくさんあるけれど、
新しくていいものはあまりない。
そのかわり、古いものならあります」
というのが、ぼくのスタイルなんです。
だから、ほぼ日の学校がはじまるときの対談で
糸井さんと河野さんが「古典は宝の山」と
話していたのに、まったく同感なんです。
マジックでも、若いマジシャンが
「これは古くさいから捨てちゃおう」
というようなものから拾ってきて、
「すばらしいものがあるよ」と
示すのが、ぼくのスタイルです。

いまの世の中、
イノベーションばかりもてはやされて、
新しいもの、即物的なもの、
すぐにお金に換わるものに、
一生懸命になっている気がします。
でも、そんなのは、いわば、
植えてすぐに育つ「草」のようなもの。
ぼくはそれよりも、
根がしっかり張って、幹が太くて、
枝が広がる木のほうが好き。
マジックのような芸能もそうだけど、
人間とか、文化って、
しっかり根を張って、
少しずつ枝を伸ばしていけば、
倒れないしっかりしたものになる。

シェイクスピア講座を受けたとき、
この授業は「根」の部分を語っていると
思いました。

魂の入れ方の授業

仏をつくって魂を入れず、
という言葉があります。
いまは「仏の作り方」に関する
情報ばかりが氾濫して、
魂の入れ方がほとんど語られない。
ほぼ日の学校は、
「魂の入れ方」の授業をしていると
ぼくは感じました。
講師の方々も、参加している受講生も、
いかにして魂を入れるかを考えている。
みんなで演じた卒業制作なんて、
まさしく「魂を入れる授業」だったと思います。

古いものがいいと思っているぼくは、
武道を習ったことがあって、
学んだことのひとつが、
道場で相手を倒せなければいけない、ということ。
この技をこうやるんだと、
語る人はたくさんいるけれど、
口だけじゃなくて、倒せなければいけない。
シェイクスピア講座の授業を受けたとき、
ぼくは、どの先生も
「ちゃんと人を倒せている人だな」と
思ったんです。
理屈よりも、まずやってみましょう、
感じてみましょう、ということが多かった。
ベンチャーキャピタリストの村口さんも、
投資したら、儲からなきゃいけないし、
投資した先の会社が育たないといけない。
魂を入れていないと商売にならないんです。
まさに「倒している人」です。

武道のたとえでもうひとつ言うと、
武道の世界には、こういう言葉があります。
「先人の型を真似るのでなく、
先人が求めた先を求めよ」
人真似をするのでなく、
先行する人が何を求めたか、
その目線の先を求めると、
表現者として道が開けてくる。
シェイクスピア講座も似たところがあって、
シェイクスピアが見たもの、考えたことは何か。
それを追求し、シェイクスピアと血を通わせた
演出家や俳優や学者の先生方が、
シェイクスピアが見据えた「先」を
示してくれたことで、
魂を入れるという講座のコンセプトが
明確になったのではないかと思います。

シェイクスピアとマジック

シェイクスピアとマジックって、
ちょっと相通じるところがあるんです。
今日もってきたのは、
“The Discovery of Witchcraft”という本です。

『妖術の開示』。もとは17世紀の本です。
グーテンベルクの印刷機ができたことによって、
人々は本をもつことができるようになった。
最初に印刷されたのが聖書で、
その次に印刷されたのがこれです。
さまざまな妖術・マジックの解説が書いてあって、
シェイクスピア講座のときに
入り口に飾ってあった
シェイクスピアの本と雰囲気が似ているでしょ。

それから、
マジックと演じることにも共通点があります。
相手の目の前で演じる
クロースアップ・マジックって先生がいないので、
どうやって学んだらいいか悩んだときに
読んだのが、この本です。
『俳優の仕事』
現代演劇の父ニコライ・スタニフラフスキーが書いたもので、
演劇学校を舞台にした物語風の教本で、
チェーホフもでてくるし、シェイクスピアも出てきます。

いったいどうすれば「トリック」が「マジック」になるか。
ぼくは、そこをすごく考えます。
音楽でいえば、楽譜をいかにして音楽にするかと同じ。
演劇でも、シェイクスピアという題材を
どうやって演劇というアートとして昇華させるか。
つまるところ、いかに血を通わせるか、だと思うんです。

大きくいってしまうと、本来、
それが学校の本質だったと思うんです。
アメリカに留学して良かったことのひとつは、
リベラルアーツに出会ったこと。
論理学、文法、弁論術と
数学4科(算術、天文学、幾何学、音楽)の7分野です。
役に立つか、立たないかでいうと、
すぐには役に立たないかもしれないけれど、
この基盤があってはじめて上に専門がのっかる。
演劇や音楽には、リベラルアーツの
いろんな要素が入っているんです。
ほぼ日の学校という
リベラルアーツの学びの場は、
今の日本にぴったりの学校だと思います。

できたら子どもにもこういう学びを
与えたいですよね。
そうすれば、勉強がすごく好きになって、
もっと自由に仕事を選べたり、
自由に学問を追究できたりするように
なれるでしょう。

▲生徒さんと一緒に「夏の夜の夢」を演じる前田さん(左)。

(おわります。)