ほぼ日刊イトイ新聞 - 糸井重里の本能カレー

野菜とお肉をじっくり煮込んだスープは、
順調においしく仕上がりました。
ここからルーを割り入れ、カレーにしていきます。
最後はどのように味を仕上げるのかと思ったら‥‥。
‥‥‥‥え？


	ここまでくれば、できたも同然です。じゃあ、火をとめてください。
────	はい（とめる）。
	ルーを入れましょう。

────	入れましょう（箱をあける）。
	（箱をあける）これ、ぜんぶ入れちゃいましょう。
────	とかしながら入れる。
	そう。

────	‥‥よいしょ。ぜんぶ入れました。かきまぜますね。

	ジャガイモをつぶさないよう、ゆっくりね。というか、もう、あまりまぜなくても、とろとろになるから。
────	わかりました（混ぜる手をとめる）。やりすぎないほうがよさそうですね。
	うん。なんでかわかんないんだけど、カレーって、手をぬいちゃったときのほうが、うまくできたりするんですよ。
────	なんででしょうね？
	なんでだろう、情熱がべたつくのかな、一所懸命すぎると。 ‥‥じゃあ、ここで、炒めたスパイスも合わせます。

────	ぜんぶ入れました。
	ぜーんぶ入れました。

	かーなりスパイシーですよー。ここも、ゆっくりとまぜます。

	わお！　うおう！　うわああおう！

────	香りが、ぶわあっと。
	ここで味をみます。
────	はい‥‥。

────	‥‥いかがでしょう。
	ふむ‥‥。

	あのね‥‥カレールーが足りない。
────	そうですか、ルーがすくなかった。
	水が多すぎたかな‥‥。みんなに食わせたくて量を増やしたからね。
────	ひとっ走りして、カレールーを買ってきましょうか。
	いやいや、買ってこなくてもいいです。足りないならば、ここから考えるさ。微調整に入りましょう。まずは醤油の隠し味で‥‥。

────	ウスターソースは、ここに。

	ありがとうございます、それも入れます。

	隠し味は、隠さないとね‥‥。

	さて、これでどうだ‥‥。

	‥‥なるほど。

	よし、よし、よし‥‥。

────	‥‥どうです？
	だいたい、オーケーだと思います。
────	オーケーですか。
	あとは最後に、ぼくはみんなをこう、外に出してですね、ないしょでやることがあります。
────	‥‥え？
	出ていってもらえますか。
────	‥‥このキッチンから？
	はい。
────	全員？
	ぼくをひとりにしてください。
────	その‥‥ひとりでやることは、秘密。
	ええ。
────	ということは、つくりかたの途中に「秘密」という部分がある、そんなレシピになってしまいます。
	いたしかたないです。そもそも、ずっとデタラメですから、レシピと言えるものはできないでしょう。
────	たしかにそうかもしれませんが‥‥。
	はい、じゃあみんな、出てって出てってー。

────	えー！　ほんとに、ほんとなんですね？
	はいはいー、カメラも出てって。ぼくが「もういいよ」って言うまで、ぜったい入ってきちゃだめです。

────	わ、わかりました（退室）。 ‥‥ひゃー、すごいなこれは。

────	まさかの展開。

────	つくりかたの一部が、秘密。

────	カレーの仕上げは、なんと密室で行われます‥‥。

（いったい、密室の中でなにを‥‥？　最終回へとつづきます）

2012-01-12-THU