糸井重里の 本能カレー  ── レシピですとは言えないけれど ──
その3 タマネギを炒め、スパイスを粉々に。

おいしいカレーのためには
タマネギをじっくりと炒める工程が必要です。
さらに、砕いたスパイスをもっと細かくする作業も必要。
長丁場を覚悟していたら‥‥糸井重里にひらめきが!
それって、どんなひらめき?


イトイ いやぁ、しかしこの、
スパイスの刺激っていうのはすごいね。
涙がどんどん出てくるよ。
──── スパイスもそうですけど社長、
うしろでタマネギをきざんでましたから。
イトイ あ、そうかそうか(笑)、タマネギか。
そりゃあ、目にしみるわけだ。

よし、じゃあそのタマネギを炒めましょう。

──── ここもやはり、ギーで炒めますか。
イトイ そう。
すましバターで。

──── では、熱したフライパンにギーを入れて‥‥。

──── みじん切りにしたタマネギをここに‥‥。
イトイ あ、ぜんぶ炒めないでね、
1個分くらいを生のままとっておいてください。
──── そうだ、そうでした、
そういうお話をされてましたよね。
‥‥このくらいでしょうか。

イトイ うん。
スパイスとして生のタマネギをね、
あとで入れるんです。
タマネギ臭さをわざと出すために。
──── それを糸井さんは本能的にやっていたと。
イトイ なんかカレー鼎談では、
やたらとそこを感心されましたよね。
無意識でやってたことなのに。
──── では、
1個分を別にして炒めはじめますね。

イトイ じっくりと、よろしくお願いします。
──── どのくらいまで炒めましょう。
イトイ ‥‥いわゆる、飴色?
──── わかりました。

イトイ それでは、ぼくは引き続きスパイスの仕事を。
──── え? まだスパイスの仕事が?
イトイ あります。
バーミックスで砕いただけでは、粗いんです。
ですからこれを、
すり鉢でできるだけ細かくします。
(ゴリゴリ‥‥)

──── それはまた、たいへんな‥‥。
イトイ いくら「スパイスを食うカレー」でも、
あまりに粗いと、
歯にひっかかって嫌になるでしょう。
だからできるだけ、こう、
ゴリゴリと‥‥。

──── 糸井さん、それかわります。
ちょっとたのしそうだし。
イトイ ‥‥そう? 悪いね。
──── よいしょ。
(ゴリゴリゴリ‥‥)
イトイ じゃ、ちょっとぼくは、
座らせてもらおうかな‥‥(座る)。
──── これは、なかなか‥‥。
(ゴリゴリゴリ‥‥)
イトイ 時間がかかるんだよ。
──── はい‥‥。
(ゴリゴリゴリ‥‥)
イトイ ねえ‥‥。
──── (ゴリゴリゴリ‥‥)
イトイ ‥‥‥‥。
──── (ゴリゴリゴリ‥‥)
イトイ ‥‥あのさ。
──── はい?
(ゴリゴリゴリ‥‥)
イトイ それってつまり挽いてるわけだよね、スパイスを。
──── そうですね。
(ゴリゴリゴリ‥‥)
イトイ たしか、使わなくなった
コーヒーミルがあったじゃない。
──── (ゴリ‥)
イトイ ‥‥ためしにやってみようか。

──── 電動ミルを買ったので、
手回しのミルはそこにしまってますが‥‥。
イトイ どこどこ?(立つ)
あったあった。
だからこれに、こうやってさ‥‥。

──── ああー。
イトイ これでうまくいったら最高じゃない?

──── そうですけど‥‥。
イトイ どうだ(回す)。

──── ‥‥‥‥お?
イトイ ‥‥あれ? 挽けてる、挽けてる!

──── ほんとだ(笑)。
イトイ 答えを発表します。
これは、いい!

──── いい!
これで、これでやりましょう!
これでいきます。
任せてください。

イトイ ひゃー、
すごい発見しちゃったなぁ(座る)。

なんだー。
いままでのカレー人生は、なんだったんだろう。

そうだよなぁ‥‥要はミルだもんね。

自分の「カレー年表」に入れたい出来事だわ。
2011年 ミルの発見。
ちょっと、ツイートしておこう。

──── (回しながら)ほんとにいいですよ、これは。
ものすごく早くなるわけではないですが、
すり鉢に比べたら圧倒的にラクです。
イトイ うん(ツイートしている)。
──── すごいな(回している)。
イトイ ‥‥(ツイートしている)。
──── ‥‥(回している)。
イトイ ‥‥(ツイートしている)。
──── ‥‥(回している)。
イトイ ‥‥よし(ツイート終わる)。

で?
スパイスのほうはグンと早くなったけど‥‥
タマネギはどんな感じ?
──── そうですねー、
まだまだ飴色には‥‥。
イトイ ちょいと、フライパンを持たせてもらって‥‥。

イトイ あ、これはね、
もっとギーを足したほうがいい。
いためるというより、
タマネギを揚げるようなイメージで。

イトイ はーい、そうそう!
いいねえー。

イトイ 余計なあぶらは、あとで取り除けるからね。
これは、いいなぁ。
タマネギいくつ分?
──── 大きいのを5個です。
イトイ じゃあ、20人分くらいはできるかもしれないね。
──── おおーー。
イトイ ‥‥あっ、来たな! モンスター社員!

──── モンスター社員って(笑)。
イトイ どうせ、香りに釣られてやって来たんだろう。
ちょっと手伝っていきなさい。
そうすればアリバイ的参加になって、
このカレーをつくった人になります。
──── 手伝いましょう(笑)、
みんなでやりましょう。
イトイ ぼくは丸イスに座るよ。
監督的ポジションだから。
──── にぎやかになってまいりました。

イトイ いいねー。
こういうのがいいね。
なるべくおもしろく、カレーをつくりたい。


(そうですね、どうせならおもしろくつくりたい!
 つづきまーす!)
2012-01-09-MON
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(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN