やあ、いらっしゃい ― 中村好文さんと歩く、伊丹十三記念館

糸井重里が、松山の伊丹十三記念館を訪れました。設計のみならず、キュレーターとしても活躍した建築家の中村好文さんと、館長の玉置泰さんの案内で、じっくり、見て回ります。どうぞ、ごいっしょに。

第5回 「七:料理通」〜「九:テレビマン」

伊丹十三記念館見取り図

七:料理通

伊丹さんといえば、
食べものについてのエッセイが有名です。
マヨネーズのCMで料理の腕を披露したり、
監督第二作の映画は
食べものにまつわる作品『タンポポ』だったり。
料理は伊丹さんにとって
生涯にわたるテーマのようです。
エッセイに登場したレモン搾りや
参考にしていた料理本、日常愛用していた
料理道具などをここで見ることができます。

中 村 ここは料理通のコーナーなので、
台所っていう感じにしつらえてあります。
糸 井 あ、そうですね!
ここも、ここも台所(笑)。
中 村 そう、台所なんで白いタイル張り(笑)。
糸 井 こういう遊び心はやっぱり
読者だった中村さんならではですね、きっと。
中 村 ああ、そうかもしれないですね。
そういう影響を
伊丹さんからたくさん受けていますから。
糸 井 この生活者の部分を入れてるのが、
見る側は、助かりますね。
中 村 そうそう。それがあるから
伊丹さんという人間を
身近な人として感じられると思うんです。


伊丹十三記念館見取り図

八:乗り物マニア

車なんて、単なる実用品、
とエッセイで書いていた伊丹さんですが、
それを楽しむことについては人後に落ちませんでした。
この展示の台には、伊丹さんが乗っていた
車のボディの色が再現されています。

糸 井 お、急に。
中 村 「乗り物」。
それ、子どもの時に自転車に乗っている格好と
バイクに乗っている格好がそっくりなので、
二重写しで見えるようにしました。

自転車とバイクのトライアルの二重写し。動きも感じる。
糸 井 本当だ。
伊丹さん、トライアル、
やってたんだよな。うーん・・・・。
玉 置 糸井さん、ほら。
わかりました?
館内に入る前に、
ガレージに書いてあった番号。
糸 井 わかった!
中 村 わかった?
糸 井 わかった! なるほど!
中 村 心ある人でないと
なかなかわかってもらえないんですよ、
こういう遊びがね(笑)。
糸 井 つまり、あの、
ベントレーが展示されていたガレージは、
この展示の飛び地なんですね(笑)。
中 村 そう、飛び地です。
でね、この展示の背景は、
鉄板を曲面に折り曲げて
車体塗装してあるんです。
クルマ屋さんに出して、やってもらった。
しかもヨーロッパ車仕様の塗装でね。
日本の車体塗装と全然違うらしくて。
糸 井 パール入れて。


伊丹十三記念館見取り図

九:テレビマン

1971年より、伊丹さんはテレビマンユニオンと組んで、
次々と画期的なドキュメンタリー番組を作りました。
ここでは貴重な当時の番組を見ることができます。
また、取材に愛用していたカメラやテープレコーダー、
米軍放出品のバッグなどが展示されています。

糸 井 今になっても僕にとって
いちばんインパクトがあるのは
「テレビマン」の伊丹さんです。
中 村 ああ、やはりそうですか。
糸 井 あ、カメラ。
カメラでカメラを撮ろう。
玉 置 収蔵庫にもカメラはあるんですけどね、
カメラだけはね、あんまりいいものには
こだわってなかったような感じですね。
糸 井 伊丹さんにとってのカメラは、
メモ帳なんだね
玉 置 頂いたようなものも
ちゃんと使ったりはしてましたし。
(つづきます)
2009-10-12-MON
前へ このコンテンツのトップへ 次へ
コラム ようおいでたなもし、松山
  伊丹十三記念館のスタッフが、
記念館に来たついでによってもらいたい、
松山近辺の見どころや、おいしいもののお店を
ご紹介します。
第5回 道後エリア編(1)

図版:トリバタケハルノブ