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アーカイブ 2009/01/18
 
レシピその83
仔牛スカロッピーナ バルサミコ酢味
〜バルサミコ酢の醸造所〜


料理のときにはもちろんのこと
消毒や臭い消し、喉のうがい、
そして掃除のときにも大活躍する「お酢」。
調味料のなかでもその起源はもっとも古く、
昔から大活躍してきました。
リエティに住んでいた頃は
自家製の度数の低いワインが
あまったときに貯めておいて
そこにマードレと呼ばれる種酢を入れ
ビンのフタの代わりにガーゼをあてて
空気に触れさせておいておくと、
自然にワインビネガーができました。
ミラノに来てからは残念ながら
酢作りはしていませんが
掃除や消毒用にはワインビネガー、
料理用にはリンゴ酢やバルサミコ酢などを
購入して使っています。
お酢好きの私は
今回、ワインビネガーとは違う工程で作る
バルサミコ酢の醸造所に行って来ました。
最高級の「トラディショナルバルサミコ酢」を
作っているところです。

ミラノから車で2時間弱のところにあるモデナは
冬は極寒、夏は猛暑で、
1年の気温差が激しい地域です。
いまの季節は寒さが身体の芯にまで伝わってきます。
この風土が、独自の特徴を持つ
かぐわしい香りのバルサミコ酢を生み出します。

地元産の甘味のあるトレビアーノ種の
白ぶどうを圧搾してジュースを作り、
それを36〜48時間かけて、
半分くらいの量になるまで煮詰めて
数年間寝かした後で、樽に入れます。
樽に入れた後も、
7種類の違う木の樽に移しかえながら、
それぞれの木の香りをつけていきます。
樽の移しかえの時期は、
毎年、菌の働きの弱い冬と決まっています。

奥さんに案内してもらって工場に入ると
バルサミコ酢の香りがしています。
酢酸菌が呼吸できるように
樽の上が一部が開いていますが
その上には不純物が入らないように
白い布が置かれています。



まず25年間熟成したバルサミコ酢を味見。



続いて、ご主人のジョバンニさんに導かれて
別の建物に入ると香りが変わりました。
先ほどよりも重厚的で
魅惑的な香りが充満しています。
熟成年数がさらに長いものを置いている部屋です。



138年ものを試食させていただきました。
糸を引くクリームのような濃度。
黒褐色に輝き、濃厚でまろやかで、
豊潤で複雑な味わい。
酸味と甘味のバランスの
均整が素晴しいものでした。
昔は貴族が疲労して体力回復したいときや、
消化促進の妙薬として、
毎日スプーン1杯、飲んでいたそうです。
138年前に作られたものを、
今、自分の身体に入れて味わえる
内臓で感じる幸せです。

最後に、次代を担う息子さんの
アイデアでできた直売店で
製品の説明をうかがいました。
モデナのトラディショナルバルサミコ酢は、
伝統的な作り方で作られています。
最低12年以上熟成したものを
バルサミコ保護組合の厳しい審査にかけ、
そこで認定されて初めて
ボトルに詰めることができます。



1871年から代々引き継いて
現在4代目ご主人ご夫婦です。
毎年、酢の樽をかえ、そして、新しいお酢を仕込む。
先代からの物を次代に引き渡すために、
毎日、自然と向かい合いながら酢を見守る‥‥。

「点」のことを毎日することによって
長く続く「線」にして行く。
この気の遠くなるような仕事に
畏敬の念を抱きました。
彼らのひとつひとつの行動に、
情熱のなせる技を見ることが出来ると思います。

さて今回の料理はバルサミコ酢を使った
仔牛スカロッピーナ バルサミコ酢味です。
スカロッピーナは肉の薄切りのことです。
短時間で出来ますので
どうぞ試してくださいね。

仔牛スカロッピーナ 
バルサミコ酢味


■材料(3人分)

仔牛の薄切り:350g
バルサミコ酢:大さじ2(熟成期間の短めのもの)
バター:15g(ソース用)、10g(焼き肉用)
オリーブオイル:大さじ1
肉のブロード(だし):40cc(コンソメスープでも可※)
水:40cc
塩・コショウ・小麦粉:少々
※仔牛のかわりに豚肉でも良い。
※肉のブロードをコンソメで作るときは
 薄めの味で70ccにして、水40ccは使わない。
 私が使用したブロードは
 味が濃いめでしたので水を足しました。



☆下準備
・肉を食べやすいかたちに切り
 余分な脂肪を取り除き、包丁の背で叩く。
・その肉に薄く小麦粉をつけておく。





■作り方

(1)フライパンにバターを溶かして
 そこに小麦粉を入れる。



(2)弱火で数分炒め、粉っぽさをとる。



(3)バルサミコ酢を入れて
全体的に良くなじませる。



(4)ブロードと水を入れ、
かき混ぜて合わせる。
ブロードが薄味の場合は、
水は入れなくてもよい。



(5)ソースの出来上がり。



(6)別のフライパンに
バターとオリーブオイルを入れて温める。



(7)肉を中火で両面焼く。



(8)肉が焼けたらソースを入れて
すみずみまでソースが
行き渡るように広げてから火を消す。



出来上がりです。
付け合わせの野菜はほうれん草と
かぶの茹でたものとフライドポテトです。



お好みでトラディショナルバルサミコ酢を
数滴たらしてみてください。
まろやかな味わいになります。


 
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