── こんなに食品で
わくわくする売り場ってなかなかないですか?

ジョージ どうかしら?
ボクの中では全ての基準が
ここになってしまっているから‥‥。
海外にはこういうデパ地下って
あまりないわよね。
パリのギャラリー・ラファイエットのことは
むかし話したことがあるわよね?

── はい、食品売り場のことを。
そもそも「地下」にないですよね。

ジョージ ロンドンのハロッズもそうよ。

── そんな話を聞いて、
そのあと、パリに行ったときに
ボンマルシェの
グランデピスリーに行って
感動しましたよ。
伊勢丹さん、まるごとこれを
呼んでくれればいいのにと思いました。

ジョージ 外国のデパートの食料品売り場と比べると、
まあ文化のちがいはあるんだけれど、
調味料関係は‥‥伊勢丹さん、
たまーにストレスが溜まるわよ。
もっと揃っててもいいはずなのにって。

── 料理好きから言いますと、
ピータンがありません。

ジョージ アジア方面にちょっと弱いのかしら。

でもね、ハムが素敵なの。
ハムって、グラム単位で買うものだと
思っていたの。
でも、伊勢丹さんは「何枚ご入り用ですか」
というような訊き方をしてくれるの。
枚数で言えばいいのよね。
考えれば当たり前なんだけど!

── グラム単位で値段がついていますから
ついつい「100グラムください」
みたいに言っちゃいますものね。
さてハムのコーナーを通りすぎて、
こちらは精肉売り場です。

牛肉と豚肉売り場の人 あ、武井さん。
骨付きの豚リブロース、
きょうはありますよ。

── (武井)あ、すみませんすみません。
きょうは取材で。

ジョージ やだっ、この子。顔なじみ?!



── ぼく、商店街の生まれ育ちなんで、
お店の人と世間話するのが当たり前だと
思っているところがあって。
それで仲良くなっちゃうんですよ。

ジョージ あらっ。でもそうよね、
それが対面販売の楽しみよね!
それにしても壮観ねえ、ここのお肉売り場。

牛肉と豚肉売り場の人 はい、ここは全国から
いろんな銘柄が集まります。
たとえば、ほら、梅香豚もありますよ。
金華豚もあります。
アラン・デュカスさんが
銀座のベージュ(BEIGE ALAIN DUCASSE TOKYO)で
使われている銘柄もございます。
ハンガリーからも、イタリアからも、
お肉が届きます。
これは世界でも有数の売り場だと思います。



── わぁ‥‥(肉を凝視)。



ジョージ ほれ、行くわよっ!
今日は買わないのよ!

鶏肉売り場の人 あらー、武井さん。
もも肉は何本?
脂は落としましょうか?



── わ、すみませんすみません。
きょうは取材で。
もも肉はまた週末に来ます‥‥。

ジョージ ホントにもうっ。フガッ。

── そして、奥には、仔牛肉や、
松阪牛の専門店も。
そのあたりから、お魚売り場になりますね。




ジョージ 伊勢丹さんのお魚売り場は、
きょうはお客様がいらっしゃるわ、
っていうときに、
メニューを考えずに来ても、
なんとかなっちゃうような品揃えなのよね。
お家に持って帰ればすぐ食べられるようなものが
たーっくさん、あるの。
ほら、スモークサーモンがこんなに!

── 魚卵系もすごいですよね。
そしてこちらに行くと、野菜、
その先がフルーツ。
たとえば「白いイチゴ」とか、
見たことのないようなものが
宝石のように飾られることがありますね。






ジョージ さらに行くと、催事のコーナーがあって、
その奥が、お総菜やお弁当売り場ね。
ボク、弁松さんが好き!
保存料が砂糖くらいしかなかったときの
江戸前なお弁当!
そして、今半があって、
志乃多寿司があって。
かんぴょう巻き好きーっ!
新宿御苑への花見はこれを買っていくのよ。

── お総菜もいいですよね。
ぼくはこちらの「魚谷清兵衛」さんの
ちくわが大好きです。

ジョージ 干物屋さんよね。おいしいわよね!

魚谷清兵衛さん まいどっ!
── とても高級な干物なんかもあるんですけど、
たとえば「おとうさんの誕生日に、
最高の、ふつうのごはんをつくってあげたくて」
なんていう御家族が、
買いにいらしたりするんだそうですよ。

ジョージ 素敵ね!

── さてワイン売り場のほうへまいりましょう。
ここ、すごいですよね。

ジョージ いい品揃えよね。
そんなに高くないし。
知ってる? ここね、
しゅわしゅわ系がすごいのよ!
しゅわしゅわーっ、って!



ワイン売り場の人 最近人気のあるのは
スペインのカバでございます。



ジョージ お呼ばれしたときなんか、
ぱっと持って行くのにいいのよ。

── でも、ぬるいままだと‥‥。
あ、冷蔵庫に入っているなかから
選べばいいんですね。

ワイン売り場の人 冷えてなくてもお申し付けくだされば、
ヒューッと、キンキンに冷やしますよ。
急速冷却ができますので。

── すごい! 知りませんでした!

ジョージ この売り場こそ、こうやって、
売り場の人の力を借りると楽しいでしょうね!
── ソムリエの方がおおぜいいらっしゃいますからね。
通路をはさんで、
メンズ館への通路の手前が
輸入食材売り場になっています。

ジョージ ここだけ! マーマレードが10種類もあるところ。
虫歯に挟まると痛いけど!

── 虫歯があるんですね。

ジョージ ブランドも、フォートナム・アンド・メイソン
(Fortnum & Mason)があり、
エディアール(HEDIARD)があり。
ここのエディアールは長いわよね。
イルサルマイヨの隣にあった。
そのころはお店の前に
平台のショーケースがあって、
そこにゼリーがずらっと並んでたの。
あれがすっごいうれしくって。
パリな感じだったの‥‥。

── ジョージさんがおっしゃるように
ここで買えばすぐにホームパーティができるような
品揃えなんですね。
ワインもあるし、パンもあるし、
チーズ売り場もありましたし。

ジョージ こちらのスモークサーモンは
肉厚なのよー。
むちゅーんとした感じで、
1〜2枚で食べた感があって
費用対効果が高いの!

── ここで軽く食べることもできるんですね。
あ、こちらは、紅茶の品揃えがすごいですよ!

ジョージ こんなに紅茶が! 知らなかった!
これは伊勢丹さんのブランドなのかしら。

伊勢丹の人 伊勢丹新宿店限定です。
フレーバーティーもあれば、
定番のものですとか、
ハーブティーや中国茶もあります。
農園別・シーズン別にセレクトしたダージリン、
世界中の紅茶、中国茶、
オリジナルのブレンドティーやアロマティー、
ハーブティーなどがございますよ。
ギフトでお使いになるかたも
たくさんいらっしゃるんです。

ジョージ すっごく勉強になったわー。
あらためて見るとやっぱりすごい!
伊勢丹の地下で売っている食材で、
もっとも高いものだけを集めて、
高いワインをあわせて、
フルコースでひとり5万とか6万円とかの
お料理ができちゃうんですものねえ!

── 可能といえば、可能ですよね‥‥。
さて、本館、ひととおり巡りましたね。
それではいよいよメンズ館にまいりましょうか!

ジョージ フガッ。いよいよね!

 


















■ ギャラリー・ラファイエット、
 ボンマルシェ、ハロッズ
そこにあるものを買うことができる美術館=ギャルリー・ラファイエット。そこにあるものを買うことができる万国博覧会=ボンマルシェ。そこにあるものを買うことができる博物館=ハロッズ‥‥、って感じかしら。パリの百貨店は、犬の落し物に靴を汚すことなくそぞろ歩きすることができるシャンゼリゼ通りって言いかえるコトもできるかもね。ロンドンの料理は美味しくないって言われていた時代にさえ、ハロッズのスモークサーモンとキャビアは世界一だった。旅人にとって「そうあってほしい街にであえる場所」なのかもしれないわ。












■ オカマとアジア料理
ニューヨークでも、パリでも、ソウルであってもシドニーでだって。おしゃれなオカマに会いたかったら、アジア料理のお店に行くの。個性的でカジュアルで、おいしいんだけど威張ってなくて、元気と明るい気持ちがもらえる。アジア料理にはオカマ好みが揃ってる。たのしいアジア料理のお店のない街は、おしゃれなオカマがいない街‥‥、ってそう言ったっていいかもネ。ちなみに二丁目周辺って、おいしいタイ料理のお店のメッカでもあるのよね。























































■ アラン・デュカスとベージュ・
 トーキョー
モナコ、パリ、モーリシャス。サントロペに香港、それからラスベガス。優雅でゴージャスなオカマ好みの街を選んでお店を作る。ロンドンにはない。ニューヨークにもお店があったのに、いつの間にかなくなっちゃった。あら、アラン・デュカスから見捨てられたニューヨークってなんだか格好悪いわねぇ‥‥、ってしばらく悲しくなったほど。でも東京にはベージュがあるわ‥‥。彼が認めたほがらかな街‥‥、って勝手に判断しちゃ叱られるわよネ。


















































































■ 高級フルーツ
完璧な姿と、完璧な状態。完璧においしく、しかしながらその賞味期限はほんの一瞬。フルーツ世界のスーパーモデルのような存在。木箱に入ったメロンをみるたび、「あぁ、この子ってどこに貰われていくのかしら」ってなんだか切ない気持ちになるの。高級フルーツ売り場に立つ私。ミス・ユニバースを育てるイネス・リグロンのごと、厳しくけれどやさしい気持ちになってしまうのでございます。
































■ 弁松、今半、志乃多寿司
どれも江戸の老舗のお弁当。ちょっと贅沢。そして上等。会議室でも、電車の中でもなくて劇場、あるいは舞台。オシャレな装いの膝の上に似合うようにできているのネ。食べやすくて、ひと口で口を汚さず食べらるように気配りされてて、だからオカマの花見にピッタリ。だって、新宿御苑はほがらかさんの劇場みたいなモノですものネ。




































■ しゅわしゅわ系
この文脈で、しゅわしゅわしているモノと言えば、ソーダでもなくコーラでもなく、シャンパーヌ。このしゅわしゅわの栓を抜くって言うことは、すなわち、新たな恋人との出会いのようなモノなのネ。ひと瓶ごとに泡の状態、味わい、風味が微妙に違う。一旦、栓を抜いてしまうとなるべく早く飲みきらなくちゃおいしくなくなる。気が抜けちゃったら「しゅわしゅわ」じゃなくなっちゃうんだから。恋は一気に飲み干すものよ。愛はユックリ熟成させるものなのよ。






































■ ソムリエと相談するコツ
レストランでソムリエと相談するってことはつまり、料理との相性を相談するってことよネ。でも、ココは百貨店。そこでソムリエと相談するっていうことは、お料理じゃない別のモノとの相性を相談するということ。例えばお洋服やバッグ。あなたのオキニイリのモノをみせ、これにあうワインなんてあるのかしら? あるいはお酒をプレゼントするお友達の好きな音楽なんかを伝えて、これにあうワインをなんて。ソムリエさんも困るかもしれないけれど、絶対答えを出してくれるはず。だからワインを買いに行くときはオシャレをしましょ‥‥、いいワインに出会えますようにって。

■ フォートナム・アンド・メイソン
イギリスの料理はおいしくないけれど、イギリスのジャムやマーマレードは本当においしい。昔っからそんな風に言われてた。ロンドンみたいな大きな街から、小一時間も走ると緑豊かな野山があってそこでおいしいベリーが取れる。それを使ったジャムがおいしくないはずがなく、瓶の蓋をあけるとイングリッシュガーデンの花の香りがしてくるのよね‥‥。ギンガムチェックのテーブルクロスを取り出して、ウェッジウッドの食器を並べて小指を立ててみたくなる。

■ エディアール
赤と黒のモダンな容器やパッケージ。フェミニンなデザインのモノが多い高級食料品の中にあって、凛々しく大胆。男の一人暮らしのキッチンにおいてあってもおかしくはない。だからオカマのボクは好き! パンからスイーツ、惣菜と品揃えだって豊富で便利。伊勢丹地下のお店の脇に、ココのお料理がたのしめるテイスティングコーナーがある。しゅわしゅわ片手にそこでテイスティングしているボクを見つけても、そっとしといて‥‥、横にいるのがつねさんだから(笑)。

■ パリ
花の都よ‥‥、オシャレな街。花の命は短いモノって言われるけれど、パリって花はもう何百年もずっとキレイに咲き続けている。自分自身に誇りをもって、新しいコトを恐れぬ気持ちが、パリって花をいつも若々しくしてくれているに違いない。大抵のオカマと花の命は短い。目指すはパリよ‥‥、ずっとキレイに咲き続けるの‥‥、がんばるの。

■ ホームパーティ
張り切り過ぎると失敗するのがホームパーティー。料理にこだわりすぎちゃって、接待みたいになっちゃったり、準備ばかりに手をかけてパーティーがスタートする頃にはもうクタクタになっている。そんなコトを起こさぬように。だってホームパーティーっていうのは、もてなす人がたのしくなくちゃいけないんだから。だから伊勢丹みたいなパートナーがいてくれるととてもウレシイ。もてなし上手にしてくれる。

■ オカマと紅茶
二丁目っていうポットの中に、ワタクシっていう茶葉をサラサラ。お酒っていうお湯を注いで蓋をする。お湯をタップリ含んで茶葉が膨らみ開くようにして、いつものボクが、ホガラカなボクに変わってく。カップに注がれる紅茶は会話。最初は淡く、徐々に濃くなり苦くなる。ほどよき自分を表現できる、その瞬間は短くてそれで何度もポットにお湯を注ぎ続ける。最後はグダグダ。我を忘れてとぼとぼ家に戻るというと、オカマと紅茶の類似性。




次回、ジョージさんが大好きな
メンズ館へと足を踏み入れますよ!
これまたすごいんです。おったのしみにー!
2012-07-13-FRI