イベント「活きる場所のつくりかた」より
ライさんジョシさんのおはなし
僕たちが故郷に学校をつくったわけ
~国に恩返し~
第3回
「やろうぜ」ということは、やろう。

おふたりの講演が終わり、ここから
今村正治さん、糸井重里といっしょに
トークをします。
糸井
この話は、ぼくは何回も聞いているし、
知っているはずなんだけど、
そのつどちょっと、目の端っこが
濡れてきます。
今村
来ますね。
ふたりはAPUに通っていたわけだけど。
ライ
あそこには世界中からすばらしい学生が
集まっていまして、
みなさんの行動力はほんとうにすごいですね。
彼らから学んだこともたくさんありますし、
このあと講演されるhoshiZora
インドネシアの大先輩からも
たくさん学びました。
ジョシ
APUでいろんな国々の友達と出会い、
それぞれの背景を聞いて、
教育がどれほど必要なのかを
深くまで知りました。
今村
YouMe小学校の子どもたちは
学帽をかぶっていますね。
そのエピソードをご紹介くださいますか?
ライ
はい。その通学帽はほんとうに、
子どもたちにとっては、宝物なんです。
自分の家から学校まで通うために
6歳の子どもが毎日5km、山をのぼります。
通学中にその帽子をかぶると、村のみなさんから
「あ、日本人みたいな子どもが来た、来た」
って声をかけられるんです。
子どもたちはそう言われて
うれしくてたまらないらしいです。
お家でご両親が
ちょっとでも帽子にさわろうとしたら
子どもからめっちゃくちゃ怒られる、
という話を聞きました(笑)。
糸井
その帽子は、学校側から生徒さんへの
プレゼントだったわけですよね。
ライ
はい、そうです。
私が日本で大学に通っていたとき、
たまたま帽子をかぶっていた小学生を見たんです。
イエロー帽子‥‥。
今村
黄色い帽子ね。
ライ君は「あの帽子はなにかな?」と
はじめは思ったんだよね。
ライ
そうです。
YouMe小学校の子どもたちにもぜひ、と、
黄色い帽子をプレゼントしました。
でも、そのあとで赤い帽子も見ましたので、
「え、赤い帽子もあるのか」と、
次に赤い帽子を買いました。
糸井
ライ君とジョシ君は
学生でありながら、学校をつくって
生徒に帽子をプレゼントしたりしてきました。
日本でもどこでも、学生って
「俺は金がないよ」って言ってますね。
なにをするにも金がない、
アルバイトで自分の生活をやってくので
いっぱいだよ、ということになっています。
しかしこのふたりは、
もちろん奨学金はあったにしても、
自分のための金がないような若い時期に
学校をつくった。
「どうしてできたの?」って思います。
ジョシ
ぼくたちは選ばれて国から奨学金をもらい、
9年間、優秀な学校で教育をもらったからこそ、
日本へ留学もできました。
そういうことを絶対に
忘れたくないと思ったのです。
ライ
正直に言うと、私が8年前に来日したとき、
借金がちょっとありました。
それ、まだ払っていないんですよ。
糸井
おお、おお。
ライ
まだ返せていないんです。
しかし、しかしこの学校をつくりたい。
自分の心は、ネパールのことでいっぱいなんです。
ネパールのためなら、もう、なんでもやりたい。
糸井
自分というのは後回しになるんだね。
ライ
自分のことはあまり考えたことないです。
ジョシ
もし私たちの社会がよくなれば、
私たちも国も、よくなります。
糸井
おふたりがおもしろいのは、
政府や国を批判するよりは、
「自分のできることをしよう」
というふうに動いていることです。
今村
そうですね。
糸井
ぼくはよく、
「大きい夢を語る人は信用しない」と
言ったりするんだけど、
この話は「大きい夢」というジャンルじゃなく、
ほんとうにやる気のある、本気の夢だと思います。
聞いていてすごく、納得がいくんですよ。
2024年に8つ学校をつくる計画も、
この人たちだったらできるような気がします。
そのための戦略については、
ふたりで会議しているんですか。
ジョシ
ふたりでも話しますが、
私たちがいま、いちばん投資しているのは、
ネットワーキングなんですよ。
糸井
ネットワーキング?
ジョシ
たとえば、技術を使って、
私たちがいま学校をつくっている現地で、
どんなことが起こっているかは、
東京に住みながらもすぐわかります。
糸井
うん、そうだね。
ジョシ
また、APUのお陰で、
いろんな国々の友達ができました。
みなさんと、東京でも会って
食べ放題とか飲み放題しながら。
会場
(笑)
ジョシ
夢の話をします。
そのときに、いろんなアイデアが出てきます。
ネットワーキングがあるからこそ、
私たちの心の中のエネルギーも、あがります。
日本、ネパール、いろんな国の方々と
ネットワーキングをしながら、
ポジティブになって行動していけば、
夢が実現できるんじゃないかと思って進んでいます。
糸井
うん。
なんだか、この人たちとしゃべっていると、
うれしくなりますね。

ぼくはもともと広告業界にいて、
代理店の人たちとお話をすることが多かったし、
ま、いまでもするんですけど、
「こういうことをやろうぜ」というと、
たいてい「いくらかかるか」という
予算組みを最初にするんですよ。
次に「そのお金、誰が出すの?」
「スポンサーを集めよう」
という話になります。
そして、お金が集まらなかった場合、
「やろうぜ」と言っていたことが
結局なくなってしまうわけです。

だけどほんとうは、お金が集まらなくても
「やろうぜ」ということは
「やろうぜ」なんだよね。
その原点のようなところを
ライ君、ジョシ君のお話で
思い出させてもらえます。
ついでにいうと、今日のイベントも、
大きい会場でやることもできたんだけど、
毎日新聞のおかげで
無料で借りることができました。
出演者のギャラはもちろん無料です。
会場
(笑)
糸井
技術陣も全部、うちの会社から連れてきただけです。
同じイベントを、もし、
予算を組んでやっていたら、すごいことになります。
みんなでちょっとずつ手弁当でやっていくと、
けっこう大きなことができるんです。
「予算枠」という言葉から離れて歩き出す、
そういうことをやる時代なんだな、というふうに
思います。

おふたり、ありがとうございました。
(ライさんジョシさんのおはなし
「僕たちが故郷に学校をつくったわけ
~国に恩返し~」
 は、これでおしまいです。
ありがとうございました)

2015-05-29-FRI