おめでとうのいちねんせい 再販記念企画  のんびりした神様に。 日比野克彦+糸井重里
第5回 アトリエと打ち合わせじゃ、 オレが主役だ。
日比野 パルコ、西武、ビックリハウスとか、
メディアとしていろんなものが出てきた時期で、
NHKでは『YOU』があったりして、
だから僕は、渋谷あたりで、
だいたい成立してました。
糸井 渋谷あたりで(笑)。
渋谷という場所が、同時にあのとき
出てきたんだね。
当時、いろんな人が
美術の世界から出てきたけど、
イラストレーターになるんだ、と
決めちゃう人と決めきれない人に分かれて、
決めきれない人のほうが、逆に
長持ちしたということも、
あるかもしれない。
日比野 そうですね。
糸井 おんなじタイプのことに絞ったほうが
効率がいいんだけど、
「どうもちがうな」という気持ちを
持ってるほうがいいのかもしれないね。
このときは、もう日比野くんは、
学生とはいいながら
さまざまなことをやってただろうし。

日比野 「おめでとうのいちねんせい」は
連載が1983年からはじまったんで、
ちょうど駆け出しのころですよ。
これが、一発目の、おばけ。
糸井 「ぼく おばけだよ」が、
そうだね、連載の第1回。
日比野 これはたしか、八百屋さんのダンボールに
描いた絵です。
あとになると、ダンボールは、
箱を買い足しましたけど、
このときはもらってた。
糸井 「おめでとうのいちねんせい」の作品って、
けっこう、さっとやるの?
日比野 もう、速い速い。
糸井 折り紙つくるみたいに?
日比野 そうそう。
絵の具が乾くのが待ってられない!
くらいの感じです。
早く形にして、早く形にして、
って感じでやってました。
ですから、立体作品の裏なんてもう、
テッキトーに、ガムテープで
ベタベタになってます(笑)。

糸井 ということは、
日比野くんの中に、
ちょっとパフォーマンスのようなところが
あるんだね。
日比野 あ、そうですね。
糸井 それは、自分だけが見てる
パフォーマンスというか‥‥。
日比野 そうそう、そうです。
だから、展覧会よりか、
自分のアトリエがいちばんおもしろいな、
と思うときがあります。
糸井 なるほど。
日比野 展覧会ってなんだかウソのようで‥‥
もっと言えば、
展覧会って自分の居場所がないんですよ。
それに最近、気がつきました。
糸井 そのとおりだね。
日比野 展覧会の会場に立ってる自分って
なんだかさまにならないなぁ、って
しみじみ思ったんです。
いらっしゃいませ、ありがとうございます、
どうですか、また来てね(笑)。
僕は用なしだと思います。
でも、アトリエだと自分が主役です。
糸井 うん。そうだ。
それは、オレの「打ち合わせ」と同じだ。
打ち合わせがいちばん好きだし、
打ち合わせのときに、いちばん
頭を使ってるからですね。
いま、こうして話してるのもそれに似てるよ。
日比野 アトリエと打ち合わせがおもしろいのか‥‥。
糸井 ところで、ここに
「おめでとうのいちねんせい」の
連載のリストがあるんだけど、
日比野くん、覚えてる?
日比野 覚えてます。作品のことは、覚えてます。
全部、ぼくの実家にあります。
糸井 実家、はははは。
日比野 へぇええ、これが、全部かぁ。
(パラパラ見る)



あ‥‥覚えてないのもある。
糸井 あ、そう。
日比野 81篇もあるんだもの。
糸井 ねぇ?
そんな回数やったと思うと、すごいねぇ。
日比野 (作品を見ながら)ねぇ。
糸井 いくつか教科書に載ったものもありますね。
その詩がどうして載ったのか、
なんとなくわかる気がするんですよ、
大人が選びたくなるような詩だったから。
だけどオレのほうは、
子どもでも書けるようなものを
書きたくて書いてました。
そこだけは、たぶんずっと、
一貫してたんじゃないかな。


日比野 それはすごい話だな。
糸井 なつかしいよね。
ほんとにね。

(つづきます)

2009-02-12-THU





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