HubSpot & ほぼ日刊イトイ新聞

Unusual 2 IT'S A GREAT DAY その日は、すばらしい日

#2

「いま!」という価値

糸井
しかし、デイヴィッド‥‥
ずいぶん細くなった(笑)。
デイヴィッド
Yes, Very Unusual.
一同
(笑)

これが6年前のデイヴィッド。これが6年前のデイヴィッド。

そして、現在の写真。うーん、Unusual(変わってる).そして、現在の写真。うーん、Unusual(変わってる).

糸井
びっくりしましたよ。

別人かと思った(笑)。
デイヴィッド
憶えてらっしゃるかわからないんですけど、
6年前、糸井さんから
「はかるだけダイエット」の話をうかがって、
それがきっかけでダイエットしたんです。
糸井
そうなんですか(笑)。

それでまた本が書けるんじゃない?
デイヴィッド
いまはミック・ジャガーのマネをして、
講演中に会場を走り回ってるんです。
糸井
ほんとですか。
渡辺
ほんとなんですよ。

彼は講演中に腕立て伏せをしたり、
走り回ったりするんです。
糸井
そんなこと、誰も望んでないでしょ(笑)。
渡辺
ねぇ(笑)。

ブライアン
ハハハハ。
糸井
デイヴィッドの講演も
この6年の間に求められるテーマが
変わったんじゃないかと思うんですが、
「講演中に走り回ること」以外に、
どういう変化がありましたか?
デイヴィッド
ええ、講演の内容も変化しました(笑)。

私はマーケティングについて
講演することが多いんですが、
いま、人々が非常に興味を持っているのは、
「リアルタイムのマーケティング」です。

つまり、即座に反応があるようなこと、
「まさにいま!」という価値を持つものに
みんな興味があるんです。
糸井
ああ、日本でもその傾向はあるような気がします。
デイヴィッド
実際、糸井さんはすでにそういうことを
「ほぼ日」の仕事の中に取り入れていると思います。

たとえば、糸井さんが毎日書いている原稿
(今日のダーリン)は、アーカイブを持たず、
1日経つと消えて読めなくなってしまいますよね。

だから、読みたいなら、今日、読むしかない。

それはまさに「いま!」という
リアルタイムの魅力をコンテンツの中に
活かしている好例だと思います。
糸井
それについては、6年前に会ったときも
デイヴィッドとブライアンに驚かれましたよね。

「なぜそんなことをするんだ」って(笑)。
デイヴィッド
ええ、毎日休まず原稿を書くのに
それを読めなくしてしまうなんて、
ほんとうにすごいことだと
ブライアンともよく話すんです。

いってみれば、世界と逆のことをしてますからね。

非常にめずらしいやり方で
「いま!」ということに人々を集中させている。

こんなことをしている人は
糸井さんのほかに知らないです。
糸井
あのとき、ふたりから
「なぜアーカイブを残さないんだ?」と聞かれて
ぼくは「そうしたいから」とだけ答えたんですけど、
ほんとにそうしたかっただけなんですよね。

ところが18年間それを続けているうちに、
アーカイブに残らないことが
「いま!」を感じさせる効果を生んでいる。

デイヴィッド
たとえば、こんなデータがあります。

100人のマーケッターを調査したところ、
そのうち99人は、つぎの1週間のこととか、
1ヵ月後のことを考えている
ということがわかったそうです。

ところが、100人のうちのたったひとりだけが、
「いま」に集中して、
「まさにいま、即座に行動している」。

どうしてそのひとりがそんなふうに行動できるのか?

そういう、「いま!」という価値を生みだす動きに
みんな高い関心を持っているんです。
糸井
それはあれですよね、ミュージシャンたちが、
以前はレコードの売上で経済を回していたんだけど、
最近はライブを中心にしているのも同じ傾向ですよね。

「その1回」、「そこでしか起こらないこと」に
みんなが価値を感じはじめている。
デイヴィッド
ああ、まさにそういうことです。
糸井
あと、みんなぼくの毎日の原稿を
「1日で消えてしまうのがもったいない」って
よく言ってくれるんですけど、
じつは、気に入ったものって、みんながそれぞれに
コピーしていたりするんですよね。

だから、じぶんたちがアーカイブを残すんじゃなく、
読む人が個人的にそれをしている。

そういう仕組みになっているんだなと思いました。
デイヴィッド
それってまさにグレイトフル・デッドが
やっていたことですよ。

彼らの活動の中心であるライブは、
音楽を奏でた途端に消えるわけですけれども、
ファンに自由にレコーディングをさせていたので、
そのテープがいまだに残っていて、
30年後、40年経ったいまでも、
みんながそれを聴くことができる。

糸井
ああ、同じですね。
ブライアン
最近、糸井さんのやり方と同じような
コンセプトを持つソーシャルメディアが
アメリカで人気になっているんです。

「Snapchat」というサービスなんですが、
ポストした投稿がずっと残るのではなく、
設定した時間が過ぎると消えてしまうんですね。

ですから写真やテキストが残らない。

このSNSがいまとても人気なんです。
糸井
聞いたことがあります。

しかし、発信したものが残らないというのは、
じつはそれほど珍しくないというか、
昔はみんなそうでしたよね?

ラジオの放送なんかも、
その日、その時間に聴くしかなかったもの。

録音や録画だって、できませんでしたし。

だから、「残らない」ことが
いまの時代に魅力になり得ているのは
じつはちょっと不思議なことなんですよね。
ブライアン
たしかに、そうですね。

(つづきます)

2016-12-09-FRI