ブライアン 質問だけど、日本にも、
ドットコムバブルってあったんですか?
糸井 うーんとね、あったといえば、あったのかな。
そのへんはきっと、篠田さんのほうが
うまく説明してくれるよ。
篠田 また(笑)。
日本のドットコムバブル、ありましたよ。
ただ、日本はもともと株式市場が
アメリカほど強力ではないので、
意味合いが違うかもしれません。
端的にいうと、日本ではこの2年間で
新規上場企業が20〜30社くらいしかないから。
ブライアン へぇぇ、それって、
起業そのものが少ないんですか?
それとも、起業はしてるけど、
株式公開している企業が少ないのか。
篠田 起業自体が少ないんです。
いまはとくに。
糸井 ブライアンさんもデイヴィッドさんも
日本にいたからご存じだと思いますけど、
資本を入れて可能性を増やす、
といったことについて、
日本人はまずリスクのほうに
目が行ってしまうんだと思います。
ブライアン わかります。
日本では実際に、リスクが高いのも事実です。
アメリカだと、起業や株式公開が、
仕組みとしてやりやすいんです。
会社をはじめるときに資本を集めることも、
簡単にできるような法律が整えられているから。
たとえば、アメリカでは、
起業した会社が経営悪化して潰れたとしても、
起業家個人の資産と会社の資産が
完全に分かれてるので、
会社をたためばそれで済む。
投資した人はリスクを負うけど、
起業した人はそこを
それほど心配しなくていいんです。
糸井 起業することも公開することも、
ひとつの道具のように使えるんですよね。
ブライアン はい。
会社をはじめるのが簡単で、
失敗してもペナルティが少ない。
あと税制面でも起業を後押ししていて、
会社が成功して大きくなったときに
お金が起業家のもとに
ちゃんと残るようになっているんです。
だから、アメリカのほうが、
「将来はこうなるぞ」と思ったとき、
そっちに向かって一歩出すことの
リターンが大きく、リスクが低いんです。
糸井 うん。そうですね。
ブライアン それは、お金の面でもそうですし、
社会的な面においてもそうです。
日本の場合、この先こうなるだろうなと、
見通しを持ってそこに賭けたとしても、
賭けること自体に、まず社会的なリスクを伴う。
そして、仮に成功したとしても、
税金をそうとう取られてしまうので、
お金の面でもチャレンジに見合わない。
糸井 いいことない(笑)。
ブライアン そう。あまりいいことないなぁ
っていうふうになっちゃうんです(笑)。
糸井 うん。
ブライアン まぁ、アメリカにおけるベンチャーというのは、
そもそも国がはじまったときからの
大きな原動力ですからね。
たとえば、アメリカでは、毎年、
「フォーチュン500」っていう、
その年、成績のよかった上位500社の
ランキングが出るんですけど、
毎年毎年、ものすごい率で
順位の入れ替わりがあるんです。
前の年にはすばらしい数字を残していた会社が、
翌年になるとランキングを大きく下げて、
名前も聞いたことのないような会社が
突然、どーんと上がってくる、
というようなことが毎年起きます。
ところが、日本のランキングを見ると、
上位の顔ぶれはもう何年も同じですよね。
トヨタ、シャープ、三菱‥‥みたいな。
糸井 きっと、もっともアメリカらしい例が
Hubspotなんじゃないですか?
ブライアン (笑)
デイヴィッド そう思いますよ。
3年前は、Hubspotがやろうとしていることも、
私が本に書いたことも、
「ほんとう?」って思われてた。
糸井 でも、それがいまは標準になってる。
デイヴィッド そうですね。
会社もすごいスピードで大きくなってる。
ブライアン このままうまく行くといいけど(笑)。
糸井 うまくいかなくなる理由も、
考えたりするんですか。
ブライアン それは、考えますよ(笑)。
夜中ずっと起きて、
そういう心配してることもあります。
糸井さんは考えませんか?
糸井 うーん、考えないわけじゃないけど、
なんていうか、ぼくらの会社のモデルは、
Hubspotと違って、基本的に
「BtoC(Business to Consumer:
 企業と一般消費者の取り引き)」ですから、
すごくシンプルな次元でいうと、
お客さんのことを考えていればいいんですよ。
で、自分もお客さんのひとりだから、
自分たちのコンテンツや商品を
その目でじっと見ればいいわけで、
そういう意味では、将来に対して、
漠然と心配するようなことはないかもしれない。
「大失敗したとしても最低限ここだな」
というようなことはしょっちゅう考えますけど、
それは不安や心配とはちょっと違うと思う。
ブライアン なるほど。
糸井 一方、Hubspotは、モデルが
「BtoB(Business to Business:
 企業どうしのやり取り、取り引き)」だから、
将来が心配になったりするんじゃないですか?
つまり、どうしても相手の会社の出方に
左右されてしまう面があるから。
ブライアン でも、私から見ると、
「BtoB」よりも「BtoC」のほうが、
ずっと不安定でリスクが高いように思えます。
糸井 あ、そうですか。
ブライアン いまの会社始める前、
ベンチャー企業に投資する会社にいたんですけど、
「BtoC」の会社の評価をするとき、
成功確率をだいたい1パーセントで計算してました。
つまり、うまくいったときのリターンは大きいけど、
成功する確率はそうとう低い。
一方、「BtoB」の企業のほうは、
成功確率はだいたい10パーセント。
糸井 すごい差ですねぇ。
ブライアン というのは、
消費者が何を欲してるかっていうのが
ものすごいわかりにくいから。
「BtoB」の場合は、企業を調査して、
「こういうものがあったら買いますか?」
って聞けば、ある程度は読めるから。
糸井 うーん、そうかー。


To Be Continued......

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2011-07-27-WED