あのひとの本棚。
「ほぼ日」ではときどき糸井重里が「あの本が面白かった!」とか
「これ、読んどくといいよ」と、本のオススメをしていますが、
これを「ほぼ日」まわりの、本好きな人にも聞いてみようと思いました。
テーマはおまかせ。
ひとりのかたに、1日1冊、合計5冊の本を紹介していただきます。
ちょっと活字がほしいなあというとき、どうぞのぞいてみてください。
オススメしたがりの個性ゆたかな司書がいる
ミニ図書館みたいになったらいいなあと思います。
     
第31回 MIKA POSAさんの本棚。
   
  テーマ 「子どもたちのことが好きだから、の5冊」  
ゲストの近況はこちら
 
子どもの写真を撮ることが多い私は、よく言われるんです。
「ちっちゃい子を撮るのは大変でしょう?」って。
でも、そんなふうに思ったことは一度もありません。
真っすぐにぶつかってきてくれる相手だから、
いっしょにいてほんとに気持ちがいいんですよ。
私も子どもなので、同等な存在なんでしょうね(笑)。
「子どもたちといっしょにいることがたのしい」
そんな自分の気持ちに素直になって、5冊を選びました。
   
 
 

『石井桃子集5』
石井桃子

 

『さくらんぼのしっぽ』
村松 マリ・エマニュエル

         
           
 
   
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日本人の男性と結婚して日本に住んでいる、
フランス人の女性が書いた本です。
なにげないパリでの日常生活を紹介しながら、
お菓子のレシピがイラストつきで載っていて‥‥。

はじめて読んだのは学生のころです。
たしかまだ、パリに行ったことがないころ。
フランスという国に興味を持ち始めたそのころは、
知りたくてしょうがないのに
身の回りに情報があまりなかったんです。
それで、本屋さんにいってみつけたのがこの本でした。
もう、夢中になって読みました。
フランスではこんなふうに家族で過ごしてるんだあ、
すごい楽しそうだなあって、
あこがれて、何度も何度も読んだ本なんです。



じつはこの本には、
ちょっとびっくりなエピソードがあるんです。
はじめて読んでから10年くらいの時が経ちまして、
あるとき友だちがハーフの女の子を紹介してくれたんです。
会って話をしてみたら、そのハーフの子は、
私の本、『パリのちいさなバレリーナ』
持っているって言ってくれたんですね。
すごくうれしくて盛り上がって、その子が、
「じゃあ今度うちに遊びにきてよ」って。
それで、遊びに行ったら、
その子の家に、『さくらんぼのしっぽ』があったんですよ。
「あ、私この本持ってる」っていったら。
「え? これ私のお母さんが書いた本だよ」って。
もう、びっくりしちゃって。
この本にはアメリちゃんとトマくんっていう
ふたりの子どもが出てくるんですけど、
まさしくその子がアメリちゃんだったんですよ。
すごく昔から知ってるみたいな気分になっちゃって、
いまもとても仲良しなんです。
お母さんにもお会いしたときは、
この本に出てくるリンゴのケーキを作ってくれて、
ああー、本物だー! みたいな(笑)。

すみません、自分の思い出ばっかり話して。
本の内容に戻りますね。
フランスが好きな人もそうですけど、
料理に興味がある人は機会があったら読んでほしいです。
レシピだけじゃなくて、
親と子どもがみんなでいっしょに行事を楽しむとか、
いろんな要素があって料理がおいしくなることが
伝わってくる本だと思います。
しかもこの優しい色合いで、お話も楽しいんですよ。
田舎のおばあさんの話とかも出てきて。
パリだけじゃなくてフランスのいろんな地方の、
たとえばアルザスというドイツ寄りの地域では
こういうお菓子をとか。
そういうお話も、とてもたのしいんです。

   
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「5冊の本を選んでください」というお話をいただいて、
これは紹介したい、と最初に決めたのが、
石井桃子さんの『子どもの図書館』という本だったんです。
でも、私が持っているこれはもう絶版なのだそうで。



それで、同じ内容が入っている
『石井桃子集5』をご紹介することにしました。

石井桃子さんは100歳で亡くなられたのですが、
もう、ずーっとその、子どもたちの読書のために、
家庭文庫をなさってたかたなんです。
1950年代に欧米の図書館を実際に見て、
日本が遅れていると思った石井さんは、
自宅を開放して図書室にするんですよ。
いまでこそ「家庭図書館」はたくさんあるけど、
その先駆けを日本でされたかたですよね。
家庭図書館を開いていた7年間の記録と、
子どもになぜ絵本が必要なのかっていうことが、
この本には書かれています。

これを読んだのは学生のころで‥‥。
じつは私、児童学科みたいなところにいたんですよ。
でも保母さんになりたいわけじゃなかったんです。
絵本が好きなだけ読めるし、
調理実習でオムライスとかプリンを食べられる。
そういうのが楽しそうで入った学科なんです。
しょうがない学生ですよね(笑)。
で、保母さんにならないなら
何になるつもりだったかというと‥‥
作家になりたいと思っていたことがあるんです。
もともとちいさいころからの夢が、
自分の本が置いてある本屋さんになることだったんですね。
絵本が好きすぎて、
とにかく絵本がいっぱいある環境がほしかったんです。
そこに自分の本もあったらいいだろうなあ、と。
でも、いざ書いてみると長いものが書けなくて、
これはちょっと自分に向いてないかも‥‥と思ったころに、
フォトグラファーという職業に出会いました。
さらに今回はエッセイを書き上げて、
ちょっとだけ自信がついてきたので、
作家の夢も引き続きあたためておこうと思います(笑)。

石井桃子さんも、童話を書いたり翻訳をされて、
自分の本を出されているかたなんです。
おかげさまで私も、自分の本を出せるようになったので、
ちょっと考えたりしているんです。
石井桃子さんの遺志を引き継ぐようなことが
できたらいいなあ、と。
本屋さんとか図書館をすぐにつくるのは難しいけど、
それに近いことを計画したりしています。
すこしずつ、
子どものころの夢に近づいているのかもしれませんね。

 

パリと東京を拠点に世界中を旅し、
子どもたちの日常の撮影から、
ファッションブランドのカタログ写真、
コーネリアス、ハナレグミのPV監督まで手がけている
写真家のMIKA POSA(ミカポサ)さん。
「ほぼ日」では「ユラールのTシャツ」の予告編や、
永久紙ぶくろ「OHTO」のCMソング使い方レシピ。
「パリのちいさなバレリーナ」のコンテンツでも、
すてきな写真を見せてくださいました。

そんなMIKA POSAさんから、
いくつかのおしらせがあります。

まずは最新刊のご案内から。
MIKA POSAさんが、初のエッセイを出版されました。




MIKA POSA
同友館/1680円(税込)

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写真家のMIKA POSAさんが、エッセイを?
しかもこの本を出された「同友館」さんは、
主にビジネス書を刊行している出版社なのだそうです。
どんな内容の本なのでしょう?
MIKA POSAさんにお話していただきました。

「なぜ私がフォトグラファーになったか、
 そのきっかけを紹介している本なんです。
 もともとは私、大手の金融機関にいたんですね。
 それが、ある朝、普通に出社したら破綻してたんですよ、
 なんの前触れもなく。
 この先どうしよう? って考えますよね。
 私はA型なのでけっこう手堅いほうなんですけど、
 そのときはどういうわけか、
 これを機会に今までとはちがうこと、
 クリエイティブなことができるかもって思ったんです。
 で、旅先で撮りためていた写真を持って、
 紹介していただいた出版社の方に会いに行きました。
 だめでもともと、という気持ちでお会いして、
 パリの風景などの写真をお見せしました。
 そしたら編集の方が、
 2枚くらい混ざっていた子どもの写真を手にとって
 『こういう写真、もっとないの?』と。
 私はべつにそういうテーマで撮ってなかったので、
 『ないと思いますけど、一応さがしてみます』
 そう言って帰ってきました。
 ところが家に帰ってみたら、100枚くらいあるんですよ、
 パリの子どもたちの写真が。
 自然と無意識に撮ってたんですね。
 出版社の方に再度みていただいて、
 『これだけあるなら本になるじゃない』となり、
 あれよあれよという間に出版が決まりました。

 本が出たときに思ったのは、
 こんな私の作品で本を出してもらったんだから
 もっと頑張らなきゃいけない、ということでした。
 でも、さてどうしたものかと。
 そこから、悩みがはじまるわけです。
 私には、写真家としての土台がない‥‥。
 悩んでいるうちに、
 本を見てくださった方からお仕事がきて、
 どんどんつながってはいくんですけど‥‥。
 いいのかな? これでいいのかな?
 と悩みながら仕事に取り組む日々が続きました。

 この本には、その悩みをどうやって乗り越えたかとか、
 そういうことが書かれています。
 文章を書くのは好きなんですけど、
 自分のことを書くのはなかなか難しくて‥‥。
 いたらない部分もあるかと思うのですが、
 これからクリエイターになりたい人、
 とにかく何か新しいことをやりたいと思ってる人に
 読んでもらいたいです。
 『こんな人でも、こんなことができるようになるんだ。
  じゃあ私にだってできるかも』
 そう思う、きっかけになったらいいなあと思っています」

続いて、3月に出版されたフォトエッセイと、
その本に連動して開催される写真展のご案内です。
こちらもMIKA POSAさんから解説をいただきましょう。


MIKA POSA
東京キララ社/1575円(税込)

Amazonで購入

「この本は、3月に出たばかりのフォトエッセイです。
 パリの子どもの1年間を、
 タイトル通り、はるなつあきふゆと、
 追いかけてつくった一冊になりました。
 春は公園、夏はバカンス、秋においしいお菓子を作って、
 冬はたのしいクリスマス、といった具合で。
 すごくたのしい撮影でした。

 それで、この本からピックアップした写真を中心に、
 6月8日から6月30日まで、
 ちょっと長めの期間で
 写真展を開催することになりました。
 気持ちのいい空間で、
 パリの子どもたちの気持ちのいい笑顔を
 楽しんでいただけるとうれしいです」

MIKA POSAさん、ありがとうございました。
写真展の詳細は下記に。
JR新宿駅西口から約3分、とっても目立つビル、
コクーンタワーの1階で開催されます。



2009年6月8日(月)~6月30日(火)

【会場】
ブルースクエアカフェ

東京モード学園コクーンタワー1階
「ブックファースト新宿店」カフェ&ギャラリースペース

【TEL】
03-5339-7613

【営業時間】
平日 8:00~22:00
土・日・祝 10:00~22:00
入場無料・会期中無休

MIKA POSAさんのHPはこちら。
ブログはこちらからどうぞ!

 

2009-06-05-FRI

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(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN