HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN

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ポンコツなりに
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最近のこと35
文:福田利之

いきなり悩み相談のような話ですが、
緊張をコントロールすることが昔から苦手で、
人に何か伝えたいことがあっても、
うまく話ができず、気持ちばかりが先に出てしまい
言葉がうわずり気味になるのがずっと悩みです。
たまに講師や審査員のお仕事がくると、
よし、苦手意識を克服するぞとばかり、
できるだけ引き受けるようにしていますが、
終わると心も体もぐったりぐんにゃりします。
そもそもそんな動機では相手に失礼じゃないか。
いった何歳になれば、無理をしてまで
なれないことをしなくてもいいのでしょうか。

先日、雑誌の対談で、鹿児島睦さんと
お話をさせていただく機会がありました。
ご存知の通り鹿児島さんは国内外でご活躍の陶芸家で、
ジャンルは違えど、普段の生活が少し楽しくなるような
すんばらしい作品をたくさん作られています。
自分が考える作家としての理想的なスタイルを
実現されている方の一人です。

そんな対談の中でやや冗談ぽく、終活についてと、
わりとまじめに学校教育の話をされて
おもわずハッとさせられる場面がありました。
最近アトリエをコンパクトにし、これからは量産ではなく、
作りたい作品を一つずつ丁寧に作っていくという姿勢や、
これから美術の世界で生きていく若い人たちに
社会にもたらすものづくりの意義、大切さを
正しい教育でつないでいくことなどを語ってくださり、
今だに目の前の仕事、己のことで精一杯な自分は、
ドキドキしながら鹿児島さんの言葉に耳を傾けたのでした。

そしてもう一人、同世代の作家さんで、大好きな
皆川明さんも最近、東京都現代美術館で
「つなぐ」というタイトルの展示をされています。
若い頃からしっかりビジョンをもって、努力と才能で
少しずつ形にし、次の世代へも受け継いでもらう、
積み上げてきたものの質と量が圧倒的で、
今後の期待への継続感もあるからこその「つなぐ」が
ほんとにかっこいい。展示も見応えがすごかったー。

あらためて絵を描く以外はポンコツの自分をかえりみて、
先をいく同世代の作家の在り方にワクワクするんだけど
前向きに落ち込みながら、がんばるしかないのですが、
一晩寝たら忘れて、開き直れる才能は多少あるようなので、
とりあえず、なれないことはもうやらない。そうする。
おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。
思春期。

2020-02-25-TUE

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