HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN

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マケルガカチ
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最近のこと28
文:福田利之

先月、青山にあります
ピンポイントギャラリーで個展をしました。
終わった展示のことを書くのもなんですが、
今回、意気込みといいますか、
モチベーションが普段と少し違っていました。
30年前に東京で初めて個展をした場所であり、
今の場所では最後の企画展ということだったので
(9月頃、近くに移転されます)
ギャラリーの方にも喜んでもらえるような
有終の美を飾るいい展示にしたいと
一人メラメラとやる気の炎をたぎらせて
1年ぐらいかけて準備をしてきました。

あともうひとつ、心に期する小さな理由がありました。
そこで昔、初めて展示をしたいきさつが、
とある雑誌の企画で、同世代の若い注目作家に
表参道にいくつかあるギャラリーで同時期に、
個展をしてもらうというものでした。

その中の一人として声をかけてもらったにもかかわらず、
他の作家さんに比べると、集客もインパクトもイマイチ。
その敗北感はずっと心のどこかに引っかかていて
少し大袈裟ですが・・・それをひとつの糧として、
若い頃は頑張ってきたということもありました。

おかげさまで今回の機会で、
そんな引っかかりはなくなるような、
いい展示ができたと思います。
来てくださった皆さん、心に刺さった細ーい棘を
抜いてくださってありがとうございました。

現在に至るまで、仕事における敗けは数知れず。
中学生のときに、漫画家になりたいのに、
自分に才能がないと理解したときの敗北から
その代わりというのも変ですが、
イラストレーションの仕事を意識しはじめ、
プロになり、なんとか今日までやってこれたので、
負けるが勝ち、負けてよかったなと
そう都合よく考えることもあります。
もっというと、自分は大阪に負けて、
東京に来たというのもあるかもなー。
安っぽいブルースのような、
酒の肴にもならないお話ですが、
またそんな話はおいおい・・・しないけど、
東京に来てほんとによかったと思っています。

そもそも人生の価値観なんてそれぞれですから、
勝ちも負けもありませんし、
今だって勝ってるんだか負けてるんだか
さっぱりわかりませんが、
「マケルガカチ」は公私において、
ストレス少なく生きるための、
自分のおまじないのような言葉になっています。
いい加減な自分を肯定しているようなお話でごめんなさい。

2019-07-25-THU

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