ほぼ日カルチャん

下田昌克「トゲとキバ」展

ミュージアム

0172

深い海、夜の闇、恐竜の骨。

あやこ

0172

渋谷と原宿の間にある
「JINNAN HOUSE」で開催中の
下田昌克「トゲとキバ」展へ
行ってきました。

ギャラリーに並ぶのは、
何色もの色彩が塗り重なって描かれる
平面の絵本原画と、
白のキャンパス生地を縫いあげて造形される
立体の恐竜の骨たちです。
下田昌克(しもだまさかつ)さんがつくりだす
異なるふたつの世界が、
ひとつの場に集まっています。

壁に展示されている2作の絵本は
『死んだかいぞく』と
最新作『よるがやってくる』でした。
『死んだかいぞく』は
南青山にあったTOBICHI2で
去年を原画展を開催したものの、
会期半ばで終了してしまったので
ふたたび会えた気がしてうれしくなりました。

それぞれ描かれているのは
深い海と、夜の闇。
海は、一色の青ではなく
夜は、一色の黒ではないのが
下田さんの絵の魅力です。
近づいてみると
さまざまな色があることに気づき、
塗り重ねられているはずなのに
内側から光るような透明感すら感じます。

うつくしさと恐れが共存しているような
下田さんならではの色彩は
原画だからこそ伝わってきます。
TOBICHIでの機会を逃してしまった、という方も
もしかしたらいらっしゃるかもしれません。
書籍としての絵本もすばらしいですが、
叶うならば、この機会に
原画をご覧いただきたいです。

▲『よるがやってくる』の原画の一部です。

そして、奥の部屋に
迫力いっぱいに展示されていたのが
恐竜たちです。

わたしは、下田さんがつくる恐竜のファンです。
作品を前にすると
ダイナミックな気持ちが
むくむくと湧いてきます。
下田さんが骨に注ぎ込んだパワーが
こちらにぶつかってくるような気分です。

すこし個人的な昔がたりになりますが、
わたしは幼いころから恐竜が好きでした。
図鑑もよく眺めていましたし、
あの頃はカタカナの名前もそらんじていました。

いちばんひかれていたのは
「骨」だったように思います。
博物館で大きい恐竜の骨を見上げて
ぞくぞくとするような子どもでした。

ほんとうにこの生き物がいたんだ
という証でもありながら、
いまわたしたちが本物として見られるのは
この「骨」だけなんだ、という事実に
自分ではどうしてもたどりつくことのできない
憧れのような気持ちを抱いていました。

「骨」があるから、
わたしたちは恐竜の姿を想像します。
いっぽんいっぽんの骨を
ひとつの生き物のかたちに組み立てて、
ようやく恐竜は立ち上がります。
どんな色をしていたんだろう?
どんな風に走ったんだろう?
文字どおり、骨に肉付けがされて
どんどん恐竜があらわれていくんです。

下田さんがつくる恐竜を見ながら、
今回もそんなことを考えていました。
わたしは、やはり
「恐竜の骨をつくる」という
下田さんの創作活動自体に
つよく掻き立てられるものがあるのだと思います。

作品の魅力に戻ります。

骨に近づいていくと、
綿をぎゅうぎゅうに詰めて
糸でがしがしと縫われている様子がわかります。
豪快な作品群が
布と、針と、糸の
地道な作業の積み重ねによって
うまれているのです。
糸が何色も交じっているところに
下田さんらしさを感じつつ、
その道のりを考えると
出来上がった恐竜にまた迫力を感じます。

また、あらたな作品群として
キャップと恐竜の頭が合体したような
「かぶれる」シリーズも
壁にずらっと展示されていました。
片面はキャップで、片面は恐竜。
下田さんの童心のような衝動を感じて
しびれました。

そんな作品がこのギャラリーには
何体もぎゅっと集まっているのです。
展示スペースに満ちるエネルギーを
みなさまも感じてください。

基本情報

下田昌克「トゲとキバ」展

会期:2021年6月11日(金)~6月27日(日)
時間:11:30〜20:00(日曜日は〜19:00)
会場:JINNAN HOUSE内
HAUS STUDIO

入場無料(1オーダー制)

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